「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案の概要について 有価証券報告書等の記載事項が改正予定
コーポレート・M&A
目次
※本記事は、三菱UFJ信託銀行が発行している「証券代行ニュース No.146」の「特集」の内容を元に編集したものです。
昨年4月に公表された金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告では、企業と投資家との建設的な対話を促進していく観点から、1.開示内容の共通化・合理化、2.非財務情報の開示充実に向けた提言がなされていました。
また、本年6月に公表された『未来投資戦略2017』でも「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示については、引き続き、関係省庁等が共同し、異なる制度間で類似・関連する記載内容の共通化が可能な項目について必要な制度的な手当て、法令解釈や共通化の方法の明確化・周知等について検討を加速し、本年中に成案を得る」とされています。これらを踏まえ、今般有価証券報告書等の記載事項について、以下の改正が予定されていますのでご紹介します。
開示内容の共通化・合理化
有価証券報告書及び事業報告における大株主の状況に係る記載の共通化
有価証券報告書等の「大株主の状況」における株式所有割合の算定の基礎となる発行済株式について、議決権に着目している事業報告と同様に自己株式を控除することとし、両者の記載内容を共通化します。
有価証券報告書【大株主の状況】の記載
【現行】
【改正案】
新株予約権等の記載の合理化
有価証券報告書等の記載項目である「新株予約権等の状況」、「ライツプランの内容」および「ストックオプション制度の内容」の項目を「新株予約権等の状況」に統合します。この際、現行様式の表を撤廃し、企業の判断により過去発行分を一覧表形式で記載することを可能とします。
また、ストックオプションについては、財務諸表注記(日本基準の場合)で記載されている場合、当該記載の参照を可能とします。
さらに、「新株予約権等の状況」については、事業年度末および有価証券報告書提出日の前月末現在の記載を求めているところ、事業年度末の情報から変更がなければ、後者については変更ない旨の記載のみでよいこととします。
有価証券報告書【新株予約権等の状況】の記載
【現行】
【改正案】
- 「新株予約権等の状況」、「ライツプランの内容」及び「ストックオプション制度の内容」を「新株予約権等の状況」に統合
- 財務諸表注記にストックオプションについて記載している場合、当該記載の参照を可能とする
- 提出日の前月末現在の状況については、事業年度末から変更がなければ変更ない旨の記載のみでよい
株主総会日程の柔軟化のための開示の見直し
有価証券報告書における「大株主の状況」の記載時点を、事業年度末から、原則として議決権行使基準日へ変更します。
現在、有価証券報告書には決算日における「大株主の状況」を記載することが求められています。
この場合、議決権行使基準日と決算日が異なる上場会社1が、それぞれのために2回株主確定を行わなければならず、企業の事務負担増加のおそれがあるとし、変更が提言されていたものです。
例)決算日:3月末 議決権行使基準日:5月末の会社の場合
なお、議決権行使基準日のみを決算日と異なる日に変更し、配当基準日は決算日のまま変更しない場合は、議決権行使基準日での株主確定に加えて、別途配当基準日(=決算日)にも株主確定を行う必要があります。議決権行使基準日を決算日と異なる日に変更する会社が今回の開示府令改正の恩恵を受け、株主確定を1回で済ませるためには、配当基準日も議決権行使基準日と同じ日とする定款変更を行う必要があります。
配当基準日と議決権行使基準日が異なる例
非財務情報の開示充実
「財務状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に係る記載の統合と対話に資する内容の充実を図る観点で記載内容の改正が予定されています。
「業績等の概要」および「生産、受注及び販売の状況」を「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に統合した上で、記載内容の整理を行います。
あわせて、経営成績等の状況の分析・検討の記載を充実させる観点から、以下の2点についての記載を求めることとします。
ア) 事業全体およびセグメント別の経営成績等に重要な影響を与えた要因について経営者の視点による認識および分析
イ) 経営者が経営方針・経営戦略等の中長期的な目標に照らして経営成績等をどのように分析・評価しているか
施行予定等
改正後の規定は公布の日から施行する予定です。また、有価証券報告書等の記載内容に係る改正については、平成30年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等から適用する予定です。
三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部 会社法務コンサルティング室
03-3212-1211(代表)
-
株主等が議案の検討や対話の時間的余裕を確保するために、株主総会の開催の後ろ倒しを求めていることに対応するもの。 ↩︎