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アマゾンが求めた「協力金」は優越的地位の濫用にあたるのか

競争法・独占禁止法

(写真:M-SUR / Shutterstock.com)


アマゾンジャパンが、同社の通販サイトで販売した金額の1~5%を「協力金」として支払うようメーカーなどに求めていると報じられ話題となった。

ECの巨大プラットフォーマーによる要求は独占禁止法上の「優越的地位の濫用」にあたるのではないか、という声もインターネット上には見られるが、法的にどのような問題があるのだろうか。

企業間の商取引に詳しい牛島総合法律事務所の川村 宜志弁護士に聞いた。

アマゾンが求めた「協力金」、優越的地位の濫用に抵触するおそれも

アマゾンの協力金にはどのような問題があるでしょうか。

本件では、アマゾンジャバンがその直販事業で販売する食品や日用品のメーカーに対し、新たに2018年から、通販サイトで販売した金額の1~5%の「協力金」の支払を求めているとされています。このような協力金の負担要請は、取引上の地位が相手方に優越していることを利用して行われることが少なくなく、独占禁止法上の優越的地位の濫用への抵触がしばしば問題となります(独占禁止法2条9項5号)。

アマゾンジャパンは、日本のEC市場における最大手の1社であり、その直販事業での流通額も巨大なものとなっています。また、報道においては「中小はアマゾンとの取引がなくなれば死活問題だ」ともされており、その直販事業で、アマゾンジャパンに代わる取引先を見つけることが容易とはいえない事業者が少なからずいるものと推測されます。こういった事情などからすれば、特にアマゾンジャパンとの取引が事業上重要なものとなっているメーカーなどの関係において、アマゾンジャパンの取引上の地位が優越している場合があると推測されます。

負担の合理性の有無にもよりますが、アマゾンジャパンが、応じなければ取引を停止するなどとして、取引先に対し、これまで課していなかった協力金の支払いを強要すれば、応じざるを得ない取引先が少なからず存在するものと思われ、独占禁止法における優越的地位の濫用に抵触するおそれがあります。

なお、事案は異なりますが、あるオンラインモールの運営事業者が、新たに出店事業者に対する従量制の手数料を導入するにあたっては、1年かけて制度の変更について出店事業者への案内をしたうえで、その導入への同意を得たという例もあるとされています。アマゾンジャパンとしては、協力金について十分な説明を行い、取引先からの自主的な判断による同意を得るよう注意する必要があります。

優越的地位の濫用とは

優越的地位の濫用とはどのような制度でしょうか。

優越的地位の濫用は、取引の相手方に対して優越的な地位にある事業者がその地位を利用して、取引の相手方に不当な不利益を課すことで取引上利益を得るといったものです。典型的なものとしては量販店等の大規模小売業者が納入業者に対して商品を購入させたり、協賛金の提供や従業員の派遣をさせたりすることがあげられます。

優越的地位の濫用は、このような行為によって、取引の相手方がその競争者との関係において競争上不利となり、また、優越的地位を濫用した事業者がその競争者との関係で競争上有利となるおそれがあることから、公正な競争を阻害するおそれがあるとして独占禁止法上規制されています。

優越的地位の濫用に対しては、公正取引委員会から、違反行為の取りやめ(またはすでに取りやめている旨の確認)等を内容とする排除措置命令がくだされます。また、違反行為が継続してなされていた場合には、課徴金納付命令もくだされます。

なお、課徴金の金額は、違反行為期間(最大3年)における相手方との間の売上額(または購入額)の合計額に対する1%に相当する金額となっています。もっとも、優越的地位の濫用は、特定の相手方だけでなく、同様の立場にある取引先一般に対してなされることが多いことから、その課徴金の金額は、極めて高額となることが少なくありません。

協賛金が違反となったケースも

過去に同様のケースはありますか。

協賛金を提供させることに関していえば、食品スーパー等の小売業者に対するものですが、株式会社エコスによるものや(平成20年6月23日付け公正取引委員会「株式会社エコスに対する排除措置命令について」)、株式会社ラルズによるものがあげられます(平成25年7月3日付け公正取引委員会「株式会社ラルズに対する排除措置命令及び課徴金納付命令について」)。これらは、いずれも店舗の開店に際して、納入業者に対し、事前に算出根拠、目的等について明確な説明をすることもなく、「協賛金」と称して、金銭を負担させていたというものです。

なお、優越的地位の濫用に関するものではありませんが、アマゾンジャパンについては、アマゾンマーケットプレイスの出品者との間の出品関連契約において価格等についての同等性条件1などを課していたことが、拘束条件付取引(独占禁止法2条9項、不公正な取引方法(昭和57年6月18日公正取引委員会告示第15号)12項)に違反する疑いがあるとして、公正取引委員会による審査がなされたというものがあります。

もっとも、最終的には、アマゾンジャパンが、この同等性条件に係る同社の権利を放棄して行使しないこと、今後、出品関連契約において価格等の同等性条件などを定めないことを誓約するとともに、その旨を出品者に周知する措置などをとるものとしたことを理由として、当該審査は、公正取引委員会による処分がくだされることなく終了しています。

巨大化するプラットフォーマーによる独占への対応策は

リアル店舗と比べ、プラットフォーム化するIT企業による独占はより影響が大きいと感じます。経済産業省もGAFAの影響力を懸念し、報告書をまとめているかと思いますが、今後、どのような対策が求められるでしょうか。

デジタル経済においては、いわゆるプラットフォーマーの登場により、競争環境に以下のような変化がもたらされたとされています(経済産業省「第四次産業革命に向けた横断的制度研究会 報告書」)。

  • オンラインの双方向性市場においては、ネットワーク効果により独占化が進みやすい。
  • デジタル経済におけるプラットフォームは拡大が容易であるため、急速な市場の独占化が達成されやすい。
  • プラットフォームにおける個人情報の蓄積等が、プラットフォーマーの交渉力の源泉として機能している。
  • 先行するプラットフォーマーが大きな力を持ちやすく、新規参入あるいは中小規模事業者にとって不利な環境となりやすい。

プラットフォーム化したIT企業は、独占禁止法上の問題を生じさせやすい性質を持っているとも言われており、特にGAFA(G=Google、A=Apple、F=Facebook、A=Amazon)のような巨大なオンラインのプラットフォーム事業者については、すでにその競争上の優位性を確立し、支配的地位を有しているとも言われています。そのため、これらプラットフォーム事業者は、比肩する競争業者が現れにくくなるとともに、これと取引する事業者の取引上の地位も弱くなっている可能性があります。

このような問題の解決には、最終的には欧州のようなオンラインプラットフォームに関する政策が必要になるのかもしれませんが、まずは問題が生じた際に、独占禁止法を的確かつ迅速に執行することで、競争上の問題を解決し、競争環境を改善することが必要と思われます。


  1. アマゾンマーケットプレイスに出品する商品の販売価格等について、出品者が他の販売経路で販売する同じ商品の販売価格等のうち購入者にとって最も有利なものと同等、またはより有利なものとするといった条件をいいます。 ↩︎

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