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法務部に配属されたあなたへ

第1回 法務の仕事を長く楽しむために大切なこと

法務部

新しく法務部門へ配属された皆様に向けて、企業法務の第一線で活躍される先輩たちからメッセージをいただきました。新しい環境への期待を抱く方や、突然の異動で不安な方にとっても、これから法務パーソンとして活躍するための指針となるはずです。

第1回はユニリーバ・ジャパンの代表取締役、北島 敬之氏からのメッセージをお届けします。北島氏は、ラックスやリプトンなど、世界中で400以上のブランドを製造・販売するユニリーバの日本法人、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社の代表取締役を務めています。北島氏は、外資系企業の中で弁護士資格を持たずにジェネラル・カウンセルとしての役割を担う、異色のキャリアの持ち主です。

北島氏のご経歴についてはこちらもご参照ください。

法務畑を歩み続けたユニリーバ北島氏が考える、法務の役割と今後の課題

法務部員に求められるマインドとスキル

新しく法務部員となった方にはどのような姿勢が求められますか。

会社の法務組織は、ビジネスを守り、成長を牽引する立場になる必要があります。そのため、まずは自社のビジネス(製品やサービス、製品が製造されて市場に出るまでのプロセス、競合事業者、マーケット、マーケットに影響を及ぼす可能性のある要素)について興味を持ち、積極的に情報を集めることです。業務内容についての理解が深まり、仕事が楽しくなります。

契約書の作成・検討や、取引の構造をビジネスの現場の人たちと考えていくために、こうしたビジネス的な感覚(Business Acumen)が、企業の法務部員には必要です。

スキルについてはいかがでしょうか。

語学、デジタル技術の活用、個人情報の取り扱い、表現・プレゼンテーションに関する4つのスキルが今まで以上に求められるでしょう。

どの程度の語学力が求められるでしょうか。

英語でビジネスの話ができるレベルになることは必須です。ただ、流暢な英語を話すことが求められるわけではありません。相手の言っていることを理解し、自分の考えを相手に理解してもらうための語学力が求められるのです。

そのためには、問題を正確に理解し、伝えるべき内容をはっきりと意識していることが必要です。要するに、「中身」が大切で、「話し方」だけ達者になってもダメなのです。

ただし、効果的なスピーチをしなければならない場合もあるので、「上手に話すためのスタイル」を学ぶ必要は出てくるでしょう。

技術や個人情報に関するスキルはどのように役立つのでしょうか。

デジタル技術の発達により従来のビジネスモデルが劇的に変化しているので、法務部員もビジネスに影響を与える技術を理解する必要があります。

技術の進歩が日々ビジネスの有様を変えていて、それに伴う法的な問題や解決の方法も変化しています。また、RPA (Robotic Process Automation、ロボットによる業務の自動化)が、様々な産業で活用され始めています。新しい技術における法的問題を理解するだけでなく、新しい技術を法務部の業務に活かすことも必要だと考えています。

個人情報などに関する規制への対応は企業にとっても負担が大きく、漏えい・流出した場合は企業の信頼を損ねかねません。一方で、「ビッグデータ」を安全に活用することが、今後、大きなビジネスチャンスを生むきっかけになるので、個人情報の取り扱いに関する能力を高めることは、企業価値向上に繋がります。

プレゼンテーションスキルを磨く秘訣はありますか。

「自分の言いたいこと」より、「相手が理解しなければならないこと」に優先順位を置いて、シンプルで明確な説明を心がけましょう。

プレゼンテーションを受けた人からどうすれば質問、意見、提案を喚起できるのか考えて、内容を組み立てるべきです。

びっしりと文字が書かれたスライドは自分の頭の整理のためには良いですが、人に見せるのは、聞き手のことを考えているとは思えません(あとで資料として渡すのであれば別ですが)。

北島 敬之氏氏

スピーチをする北島氏

ビジネスサイドから意見を求められた時はどのように対応するべきでしょうか。

常にポジティブな表現を心がけましょう。たとえば会議で、あるサプライヤーと契約すべきかどうか意見を聞かれたとします。あなたは、そのサプライヤーについて詳しく知りません。そんな時は、「サプライヤーについての情報が必要です。信用状態はどうか、本当に期待している品質なのか、反社会的勢力との付き合いがないか等色々調べないと、なんとも言えません」と答えたくなるところでしょう。

しかし、そこで「そのサプライヤーと契約することをサポートします。ただし、信用状態、品質が十分に当社の要求を満たしており、適切な内容の契約が締結できることが条件です」と答えれば、法務部はビジネスのサポートを拒んではおらず、自分たちが確認すべきポイントを理解できるように話してくれたと思うでしょう。

マインド、スキルを支える最も大切なものについて教えてください。

法務部員として求められるマインドは、極言すれば以下イメージの左図のとおりです。また、求められる仕事のスタイルも合わせて示します。

法務部員に求められるマインドと仕事のスタイル

左:法務部員に求められるマインド、右:仕事のスタイル

しかし、何よりも私が大切と考えているマインドは、「ビジネスを成長させることへの情熱」です。そして、それを実現するためには一人で頑張ろうとせず、チームで取り組む姿勢が求められます。

また、常に状況は変化します。その変化に俊敏に対応していくためにも、変化そのものを楽しむ心を持つことが、法務という仕事を長く続けていく一つの要素になります。

法務の仕事をするうえで心がけておきたい行動

新しく法務に配属された方は、どのような仕事の仕方を心がければよいでしょうか。

企業内において法務という仕事をしていくうえで、大切なことが2つあります。
ひとつは「失敗から学ぶ」ことです。リスクはいかなる時でも存在するのであり、失敗を恐れて常にリスクを避けるような考え方、行動を取っていては成長する機会を失ってしまいます。

映画「タイタニック」や「アバター」の監督であるジェームズ・キャメロンが言っています。「失敗することは、選択肢の一つだ。恐れは、そうではない( Failure is an option, but fear is not )」。また彼は、「好奇心はあなたの持っているもっとも大きな力である( Curiosity is most powerful thing you own )」 とも言っています。

とはいえ、何も考えずに突き進めと言っているわけではありません。対象となるものをよく考えて、リスクを見極め、目的達成に向けて情熱を持ってチームで取り組む経験を積むことで、将来のためのリーダーシップが培われるはずです。

もう1つの大切なことは何でしょうか。

完璧さにこだわらず、実現のために提案すること」です。

あるビジネス上の問題について意見を求められたときには、その実現がいかに難しいか説明することはやめましょう。

実現が難しい理由よりも、実現できる方法を周囲の人は知りたいのです。 どうしたら実現できるのか、完璧な正解を出すことにこだわってはいけません。完璧さを求め、「正確な」答えを出したときには、状況はすでにはるか先の段階に進んでいることが多いからです。

あくまでも提案であり、一見非現実的な内容でも構いません。たとえば、それを実現するためには、100億円必要とか、100人追加で人員が必要といったことでも構いません。100億円必要といったときに、ではなんとか5億円で実現できないか、という将来に向かっての議論を進めることができるのです。法務の仕事をしていると、どうしても自らを規制しがちですが、限界を設ける必要はありません。

様々な制限がこの世の中には存在しますが、まずはアイディアとして、今までの先例や常識の枠を超えたところから提案することがビジネスでは求められているのです。

若手のうちは、少々的外れでも構いません。周囲の議論を喚起して、よりチャレンジングな方向に向かって議論が進めば、十分に役割を果たしているのです。”No explanation, but proposal”ということを常日頃から考えていることで、成長のチャンスを掴みやすくなるでしょう。

弁護士資格の有無よりも大切なこと

最近はインハウスロイヤーも増えていますが、法務の仕事をするうえで弁護士資格はどの程度重要でしょうか。

将来的には、諸外国と同様に、企業内法務の仕事をする人は弁護士資格を有している状況が望ましいとは思います。

しかし、企業内法務に求められる役割は、ビジネスの成長、企業価値の向上のために、法務的な観点からリードしていくとともに、企業の信用を維持し、価値を高めていくことです。つまり、高度な知識や、専門的な知識よりもビジネスにとって何が大切かを理解することが重要なのです。

ビジネスが実現しようとする目標に向かって、あらゆる可能性を考え、リスクを活用していくことが企業内法務には求められます。弁護士資格があることは、そうした資質や能力があることの証明にはなっていません(可能性は大いにありますが)。

法務部員が1人しかいない環境の方や、少人数の法務部に配属された方は何を目指すとよいでしょうか。

大きなチームでなくても、外部のリソースをうまく活用することで、大きな仕事を成し遂げることができます。むしろ、小さなチームのほうが意思決定が早く、コミュニケーションが円滑に進み、早く成果を出せる可能性もあるのです。

また、忘れてはならないのは、自分で勝手に限界を設けないということです。これは、ユニリーバのグローバール チーフリーガルオフィサーの言葉ですが「もし、あなたが、より大きなチームをマネージしたい、より大きな仕事をしてみたいと思うならば、毎日少しずつ、自分の「快適な領域」からちょっとずつ出るトレーニングをしましょう」というものがあります。

自分の快適な領域にこもっているだけでは、成長はありません。ぜひ、色々なことにチャレンジしてもらいたいと思います。

change

北島氏直筆の"change"

法務部に配属された方々へのエールをお願いします。

私は、企業内法務の仕事を30年間続けてきました。この間、1日たりとも、仕事がつまらないと思ったことはありません。これは、転職を含め、自分の領域や可能性を広げようと模索し続けたからだと思っています。

また、仕事やそれ以外の活動で得られた人的なネットワークも、飽きずに楽しく仕事を続けられたことの一つの理由だろうと思います。企業内法務に関わる人々は(弁護士を含め)、面白い人が多いのです。

皆さんといつか一緒に仕事をしたり、相手側として戦うことを楽しみにしています。

プロフィール
北島 敬之(きたじま・たかゆき)
ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社
代表取締役
1987年、日商岩井株式会社(現 双日株式会社)入社。ドイツ研修(2年)、英国駐在(4年半)。帰国後、ニチメンとの合併後の海外法務オペレーション・コンプライアンス体制の統合等に従事。その後、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社Law Department Directrorを経て、2006年ユニリーバ・ジャパン株式会社ジェネラル・カウンセル、2012年より現職。国際企業法務協会会長。

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