2018年株主総会に向けた想定問答例

コーポレート・M&A

 近時、コーポレートガバナンス改革の流れを受け、投資家と企業との対話は重要性を増しています。株主総会の場では形式的な対応に終始することなく、自社にとっての「気づき」の場として活用する姿勢が望まれます。

 2018年の株主総会では、話題となっている相談役・顧問制度の廃止、フェア・ディスクロージャー・ルール、コーポレートガバナンス・コードの改訂、SDGs(持続可能な開発目標)、GDPR等に関する質問が予測されるため、これらのテーマに関して三菱UFJ信託銀行が提供する想定問答例をご紹介します。

 以下の想定質問に対する回答例は、あくまで一例です。各社の状況に応じて適宜修正のうえ、ご利用ください。


Q1.当社にとってのライバル企業はどこか。また、ライバル企業と比べた場合の当社の優位性はどのあたりにあると考えるか。

A:当社の◯◯事業についてはA社が、◯◯事業についてはB社がそれぞれ競合する会社と考えております。当社の優位性は、顧客の課題を把握し営業部門と開発部門が一体となってスピーディーにソリューションをご提案できる点にあると考えております。また、当社はおよそ◯◯年前から他社に先駆けて海外展開を行っており、海外拠点は現在◯◯か国にございます。海外での豊富な受託実績とネットワークは他の追随を許さないものと自負しております。

【ポイント】
 回答例ではライバル企業として具体的な会社名をあげていますが、会社名をあげない場合は、当社が業界内で比較優位にある点を丁寧に説明することが考えられます。


Q2.昨今、新聞紙上等で日本企業のROEの低さが取り沙汰されているが、当社のROEは何%か。また、ROEの他に当社が重視している経営指標は何か。

A:当期における当社のROEは◯%であります。当社が中期経営計画において、目標として掲げている◯%には届いておりませんが、中期経営計画の各種施策を全力で遂行することにより目標達成に努めてまいります。

【ポイント】
 いわゆる「伊藤レポート」は、「グローバルな投資家との対話では、8%を上回るROEを最低ラインとし、より高い水準を目指すべき」旨を提言しています。ISSの議決権行使基準等でROEの基準が明記され、各種媒体でも報道がされておりますので、ROEに関連した質問が予想されます。また、「未来投資戦略2017」では、そのKPIとして「大企業(TOPIX500)のROAについて、2025年までに欧米企業に遜色のない水準を目指す」ことが示されていますので、ROAに関連した質問も予想されるところです。
 なお、設問における回答として、ROE以外に重視している指標があれば、当該指標について回答することも考えられます。


Q3.当社には相談役・顧問はいるのか。該当がある場合、それぞれ何人いて、どのような役割を担っているのか教えてほしい。

A:当社には相談役が1名おりますが、顧問はおりません。相談役は当社の社長経験者であります。主に、社長経験者の立場から現経営陣への助言や業界団体等での活動を行っていただいております。

【ポイント】
 本年1月より、コーポレートガバナンス報告書での相談役・顧問に関する開示(「代表取締役社長等を退任した者の状況」欄での開示)がスタートしています。徐々に開示件数も増えてきていますので、他社の開示事例を見た株主からの質問が予想されます。「株主総会終了後にコーポレートガバナンス報告書で開示する」といった回答も考えられますが、開示予定の内容を簡潔に回答するのが望ましいと思われます。


Q4.本年4月より、いわゆるフェア・ディスクロージャー・ルールが導入される。ルール違反をおそれて企業の情報開示姿勢が後退することを懸念する声もあるようだが、当社としてはどのように対応していくつもりか。

A:フェア・ディスクロージャー・ルールとは、企業が未公表の決算情報などの重要情報を一部の機関投資家などに伝えた場合、他の投資家にも速やかに開示するよう求めるものであります。
このルールが導入されることにより、発行会社側の情報開示ルールが整備・明確化されることで、発行会社による早期の情報開示、ひいては投資家との対話が促進されるという積極的意義があるとされております。当社といたしましても、現在、情報開示ルールの整備に取り組んでおりまして、従来以上に早期の情報開示ができるよう努めてまいりたいと考えております。

【ポイント】
 平成30年2月6日に公表されたフェア・ディスクロージャー・ルールガイドラインでは、(問1)の回答において次のような記載があります。

 法第27 条の36 の規定(いわゆるフェア・ディスクロージャー・ルール。以下「本ルール」といいます。)は、投資者に対する公平な情報開示を確保するために導入されたものです。また、本ルールの導入により、発行者側の情報開示ルールが整備・明確化されることで、発行者による早期の情報開示、ひいては投資家との対話が促進されるといった積極的意義があるとされています。
本ルールの適用を受ける上場会社等におかれましては、本ルールの趣旨・意義を踏まえ、積極的に情報開示を行うことが期待されています。

 参照:金融庁「フェア・ディスクロージャー・ルールガイドライン


Q5.SDGs(持続可能な開発目標)の各目標のうち、当社として優先的に取り組んでいくのはどれか。また、具体的な当社としての取組みを教えてほしい。

A:SDGsとは、「Sustainable Development Goals」の略称であり、「持続可能な開発目標」と翻訳されておりますが、2015年9月の国連サミットにおいて採択され、国連加盟193か国が2016年から2030年までの15年間で達成するために掲げた目標をいいます。SDGsは、貧困や飢餓、エネルギー、気候変動、平和的社会など17の大きな目標と、それらを達成するための具体的な169のターゲットで構成されております。
このSDGsにつきましては、当社グループが有する〇〇に関する技術をさらに磨きをかけることで、その目標達成に貢献することができるものと考えておりまして、特にSDGsの目標〇、〇、〇に注力してビジネスを進めてまいる所存です。
また、具体的な取組みとしては、〇〇を軸とした省エネソリューション事業の展開、国内をはじめ〇〇や〇〇での省エネルギー情報の提供や各種相談、研修会講師派遣等の省エネルギーの普及活動を行っております。

【ポイント】
 最近の株主総会では、略称や専門用語を用いた端的な質問が散見されますので、マスコミ報道等で目にするようになった最新の略称や専門用語について、その意味や会社の事業との関連性などは説明できるように準備しておくのが望ましいと思われます。


Q6.EU一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:GDPR)が2018年5月25日から適用開始されている。違反した場合の制裁も厳しいようだが、当社は適切な対応ができているか。

A:当社としてはEEA(European Economic Area:欧州経済領域)域内に所在する方に対して商品またはサービスを提供しておらず、EU一般データ保護規則の適用はないと考えられますので、特段の対応はいたしておりません。
また、EEA域内にある当社の子会社につきましては、EU一般データ保護規則の適用がございますので、現地の専門家の指導も仰ぎ、適切な対応を済ませたことを当社としても確認しております。

【ポイント】
 2018年5月25日より、EEA域内の個人データ保護を目的とした管理規則であるGDPRの適用が開始されました。EEA域内に支店、現地法人などがなくても、ネット取引等でEEA所在者の個人データをやり取りする場合には規制対象となりますので留意が必要です。

参照:

Q7.当社の資本コストがいくらなのか教えてほしい。

A:当社の2018年3月期の資本コストは、加重平均資本コスト(WACC)で約〇%であります。
なお、資本コストとは、企業が事業を行うために調達した資本にかかるコストをいいます。株主の皆様より出資を受ける株主資本にかかる株主資本コストと銀行など債権者より調達する負債にかかる負債コストを加重平均したものが加重平均資本コストであります。

【ポイント】
 改訂コーポレートガバナンス・コードの原則1-4において、取締役会での検証に際しては政策保有株式の「保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか」具体的に精査することが求められています。また、改訂コーポレートガバナンス・コード5-2では「経営戦略や経営計画の策定・公表にあたっては、自社の資本コストを的確に把握」することが求められています。こうしたことから、当社の資本コストが具体的にいくらかを問う質問が出ることも予想されます。
 回答にあたっては、計算方法とともに資本コストを端的に回答することでよいと考えられます。また、質問株主以外の一般株主の理解に資するよう、資本コストとは何か、具体的な説明を加えることが考えられます。

 参照:東京証券取引所「改訂コーポレートガバナンス・コードの公表


Q8.今回のコーポレートガバナンス・コードの改訂では、CEOの後継者計画についても見直しが行われている。取締役会が後継者候補の育成に、より主体的に関与し、適切に監督せよということであるが、当社の取締役会として後継者候補のリストアップはしているのか。

A:当社取締役会として後継者候補のリストアップまではしておりませんが、後継者予備軍の育成計画を取締役会として立案し、その運用状況について報告を受けるなどしております。
なお、今回のコードの改訂を踏まえ、取締役会としての後継者計画への関与のあり方をどうするかは、今後、取締役会で議論してまいる予定です。

【ポイント】
 改訂コーポレートガバナンス・コードの補充原則4-1③において、取締役会がCEO等の後継者計画に主体的に関与するとともに、後継者候補の育成が十分な時間と資源をかけて計画的に行われていくよう、適切に監督すべきことが求められています。回答にあたっては、後継者候補リストの有無を端的に回答すればよいと考えられますが、回答案のようにコード改訂への対応は今後検討する旨を言及することも考えられます。
 なお、本設問では、あくまで取締役会の主体的な関与の一例として取締役会としての後継者候補リストの有無に言及しており、必ずしも取締役会が後継者候補リストを作成するものではありません。


問い合わせ先

三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部 会社法務コンサルティング室
03-3212-1211(代表)

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