営業現場で使える!英文契約書のポイント

第15回 信用状付荷為替決済(L/C決済)の為替手形と開設依頼書

取引・契約・債権回収
宮田 正樹

 本稿では、「荷為替手形決済」の応用編である信用状付荷為替手形決済(L/C決済)の仕組みとそれに用いられる為替手形と開設依頼書について解説します。「荷為替手形決済」の仕組みについては、「第14回 荷為替手形決済の仕組みと為替手形の形式」を参照ください。

信用状付荷為替決済(L/C決済)

信用状付荷為替決済(L/C決済)の流れ

  1. 輸出者と輸入者のあいだでL/C決済条件で売買契約を締結することからスタートする

  2. 輸入者はL/C開設銀行(普通は輸入者の取引銀行)に輸出者宛てのL/Cの発行(開設)を依頼する
    信用状開設依頼書によります。

  3. 開設銀行は開設依頼人(輸入者)から依頼された内容のL/Cを発行し、輸出地の銀行(通知銀行)に送る
    通知銀行は、輸入者から指定が無ければ、輸出国にある開設銀行の支店かコルレス銀行とされます。輸出者が、自己の取引銀行を通知銀行にするよう指定することも多いです。

  4. 通知銀行は、L/Cが届いたことを輸出者に通知する。

  5. 輸出者は、契約書およびL/Cの内容通りに商品を船積みし、商品を受け取った船は、輸出者にB/Lを交付する。

  6. 輸出者は商品代金の金額に相当する為替手形を発行する。

  7. 輸出者は、発行した為替手形とB/Lその他L/Cで要求されている船積書類とをセットして輸出者の取引銀行(「買取銀行」)に渡し、買い取ってもらう
    上記は一般に「ネゴ」と呼ばれます。「ネゴ」とはネゴシエーション(negotiation)を略した呼び方で、荷為替手形を銀行が買い取ることにより、輸出業者の代金回収を早める方法のことです。
    D/Pとして取立に回していた場合には、輸出業者(売り手)が銀行にB/Lと為替手形を持ち込んでから、お金を受け取るまでに2週間以上かかってしまいます。しかし、L/C決済であれば、開設銀行の支払保証が付いているので、買取銀行はD/PやD/Aと比べると安心して買取に応じるのです。
  8.  
  9. 船積書類と為替手形は、買取銀行から輸入地の開設銀行へと送られる

  10. 開設銀行は、船積書類と為替手形を輸入者に呈示して、引受または決済を求める
    輸入者は、為替手形の引受または決済を行うことにより、B/Lなど船積書類を入手し、船会社にB/Lを提示して商品を受け取ります。

  11. 輸入者が開設銀行に支払った現金は開設銀行から買取銀行に送金される
    買取銀行が輸出者からの買取に応じていた場合には、その弁済として充当されます。ディスクレ(L/C条件と船積書類の記載内容が不一致であること。ディスクレパンシー(discrepancy)の略)その他何らかの理由で買取に応じず「取立」としていた場合には、輸出者の口座に入金されます。

L/Cの「為替手形(Bill of Exchange)」の見本

L/Cの「為替手形(Bill of Exchange)」の記入見本

  1. 手形番号
    手形を振り出す輸出者の整理番号です。

  2. 手形金額
    数字で記入します。

  3. 手形の振出地と振出日(必須記載事項)

  4. 手形期限
    期限付きの場合には「sixty (60) days after 〔sight〕」(一覧後60日払い)のように、ユーザンス期間を入れます。見本は「At sight」(一覧払い:手形を呈示されたらただちに支払わないといけない)なので、xxxxxとスペースを埋めて消しています。

  5. 「SECOND of the same tenor and date being unpaid」
    この文言は、「第1券で支払がなされたら、第2券は無効となる」という表示です。詳細は「第14回 荷為替手形決済の仕組みと為替手形の形式」2-3の⑥の解説を参照ください。

  6. 受取人(必須記載事項)
    輸出地銀行(買取銀行)のことです。

  7. 手形金額(必須記載事項)
    見本のように英字でスペルアウトするか、チェックライターで印字します。

  8. L/C発行依頼人(必須記載事項)

  9. 輸入者(名宛人が請求するべき先)です。

  10. L/C発行銀行(必須記載事項)

  11. L/C番号(必須記載事項)

  12. L/C発行日(必須記載事項)

  13. 名宛人(必須記載事項)
    輸入者の支払保証をしているため、L/C発行銀行となります。

  14. 振出人(必須記載事項)
    輸出者となります。

L/Cの開設依頼書の見本

L/Cの開設依頼書の記載見本

  1. 依頼日
    L/Cの発行希望日が依頼日と異なる場合は、下段に発行希望日を記入します。

  2. 信用状の通知方法
    郵送(MAIL)での通知も受け付ける銀行もありますが、現在は「FULL CABLE」(電信)のみの取扱とする銀行が多いです。

  3. 無確認
    日本の一流銀行が発行するL/Cは、海外からの信用度が高く、「確認」を要求されることはほとんど無いことから、原則としては無確認信用状で発行しています。確認信用状(Confirmed L/C)については、「第13回 貿易決済の種類と条項」の2(L/C at sightによる場合の決済条項)を参照ください。

  4. 譲渡可能
    譲渡可能信用状(Transferable L/C)を発行する場合は、「TRANSFERABLE」にチェックします。
    通常の信用状では、受益者は信用状に表示されている者にかぎられます。しかし、信用状に「譲渡可能(Transferable)の文言がある場合、第三者に信用状を譲渡することが可能となります。
    譲渡には次のような条件があります。
    1. 信用状の中に、Transferableの記載があり、受益者が信用状の譲渡を認めていること。
    2. 譲渡は第一受益者から第二受益者への一度かぎりであること(第二受益者からさらに次から次へと譲渡することはできない)。
    3. 譲渡先(第二受益者)は特定する場合と特定しない場合がある。特定しない場合、第三国への譲渡は禁じられる場合がある。
    4. L/Cの金額すべてを譲渡する全部譲渡(Total Transfer)と、金額の一部を譲渡する一部譲渡(Partial Transfer)がある。
    5. L/Cが分割船積みを禁止している場合には、分割譲渡はできない。
    6. 譲渡可能信用状は一般的ではないため、開設に際して、銀行に譲渡の必要性などの説明が求められる。

  5. 通知銀行
    通知銀行(Advising Bank)については、前記2の③を参照ください。

  6. 受益者名・住所
    受益者(Beneficiary)は通常は「輸出者」です。輸出者の名称と住所(可能なら電話番号等の連絡先)を正確に記入します。

  7. 依頼人名・住所
    L/C発行依頼人(輸入者)の名称および住所を記入します。

  8. L/C発行金額
    信用状金額を、通貨も表示して正確に記入します。 金額に「about」を付けると、10%以内の範囲で増減が許容されます。また「〜% MORE OR LESS ALLOWED」の欄に具体的な数字を記入して、増減額に対応することもできます。

  9. 有効期限
    L/Cの有効期限(Expiry Date)を記入します。有効期限は、船積期限(⑩)に船積書類の呈示期間(⑪)を加算した日付にします。

  10. 船積期限
    積出日の最終日を明確に日付で記入します。

  11. 呈示期間
    船積書類の銀行への呈示期間を記入します。取引の性質等によって異なりますが、通常は10日程度、長くても21日以内とします。

  12. 船積地/陸揚地
    特定の地点(港など)または特定の国・地域など、必要に応じて明確に記入します。

  13. 分割船積
    分割船積(PARTIAL SHIPMENTS)を許容する場合は「ALLOWED」、禁止する場合は「PROHIBITED」にチェックします。

  14. 積替
    積替(TRANSHIPMENT)を許容する場合は「ALLOWED」に、禁止する場合は「PROHIBITED」にチェックします。
    積替とは、積荷港から荷卸港まで、同一船舶で運送されずに、貨物が途中の港で積み替えされることをいいます。つまり、B/L記載の目的地に到着するまでに、B/L記載の船舶から他の船舶、または他の運送手段に積み替えられることです。

  15. 信用状の指定銀行と使用方法
    〔ANY BANK / THE ADVISING BANK〕は、L/Cを使用できる銀行を、通知銀行に限定する(“restrict”という)か、どの銀行(ANY BANK)でも良いことにするかを明示します。
    〔BY NEGOTIATION / BY ACCEPTANCE〕は、L/Cの資金化条件(Availability:現金化の方法)について、「買取(BY NEGOTIATION)」か「引受(BY ACCEPTANCE)」のいずれかを選びます。日本の企業が開設する、あるいは開設してもらうL/Cは、通常は「買取」です。

    「買取」は、輸入者が実際に当該為替手形を決済する日に関わりなく、輸出者が船積書類等を買取銀行に提出後ただちに(実際には、書類の審査期間を考慮して、最長で5営業日以内)、書類にL/Cとの不一致がないかぎり、手形金額満額を輸出者へ支払う方法をいいます。
    「引受」は、「第13回 貿易決済の種類と条項」の2−3で「外銀ユーザンス」として説明した方法とほぼ同じものです。

    信用状統一規則(UPC600)ではこの資金化条件(Availability)として、1. Sight payment、2. Deferred payment、3. Acceptance、4. Negotiationの4種類を定めています。

  16. 満期の表示
    輸出者が振り出す為替手形の期限を表示します。一覧払(AT SIGHT)とするか期限付(AT 〜 DAYS SIGHT)とするかは輸出者との契約によります。
    「買取」は一種の「手形割引」であり「立替払い」ですが、輸出代金を早急に現金化出来るという資金繰り上の利点が輸出者にはあります。しかし、「一覧払い」の場合でも、輸入者が最終的に決済し、決済金が買取銀行に入金されるまでの期間、買取銀行に立替えをさせているわけですから、その間の立替え金利が生じ、後日その金利の請求を買取銀行から受けます。「期限付」の場合でも、ただちに現金化できますが、ユーザンス期間に見合う金利については、輸入者負担とするか輸出者負担とするかで異なります。

  17. 手形の振出限度額
    インボイス(商業送り状:COMMERCIAL INVOICE(⑲))の金額に対する手形限度額の割合を明示します。インボイス金額全額を手形金額とする場合は、「FULL INVOICE VALUE」にチェックします。

  18. 手形支払銀行
    「DRAWN ON YOU OR YOUR CORRESPONDENTS」(貴行〔開設銀行〕または貴行のコルレス銀行)となっていますので、特殊な条件(特定の銀行や企業・個人宛にする必要があるなど)がなければ、特別な指示はせず、そのままにしておきます。

  19. 商業送り状
    必要とする通数を記入します。作成方法や記載事項について特別の指定をする場合は、その内容を記入します。

  20. 船荷証券
    船荷証券(B/L)は通常、同等の効力をもった正本が3通発行されますが、原則として全通(3通とも)の提出となります。

    船足が速いため銀行経由のB/Lの到着を待っていると超過保管料(demurrage)がかかるなどの理由により、輸入者がB/L1通を輸入者へ直送するよう要請することがあります。これに応えるときには、銀行へ2通のみ提出することになるため、「FULL」ではなく「2/3」(3分の2)SETに書き換えます。また、このとき「BENEFICIARY’S CERTIFICATE」(㉒)として、B/L等直送の指示のような書面を必要書類に加えることになります。

    取引条件(㉕)が、CIFやCFRのように運賃売主負担の場合はFREIGHT PREPAID(運賃支払済)、FOBのように運賃買主負担場合はFREIGHT COLLECT(運賃要支払)を表示します。

  21. 航空貨物運送状
    航空便による輸送の場合は、船荷証券に代わって航空貨物運送状が必要となります。船荷証券の場合と同様に、FREIGHT PREPAIDまたはFREIGHT PREPAIDを表示します。なお、航空貨物運送状(Air Waybill:AWB)上の荷受人(Beneficiary)は開設銀行とします。

    第13回 貿易決済の種類と条項」の2-4(2)で説明したように、船荷証券は船積書類の中で最も重要な書類の1つで、以下の基本的性質を持っています。
    1. 船積地で運送人(船会社)が貨物を引き受けたことを証する受領証
    2. 運送人と荷主との間の運送契約の証拠であり運送契約書
    3. 荷卸地で運送人へ貨物の引渡請求することができる貨物引換証であり権利証券
    4. 裏書きすることで転売することができる流通証券
    ところが、AWBは、上記1と2の性質を持っていますが、3と4の権利証券や流通証券ではないため、流通性がない点が船荷証券と大きく異なります。

    AWBは本来、荷送人から荷受人への貨物運送通知書です。また、記名式であるため譲渡可能(negotiable)ではありません。このため荷受人(Consignee)は運送人(航空会社、航空貨物代理店等)に対して荷受人であることを証明すれば、運送状原本を運送人へ提出しなくとも貨物の引取りが可能です。
    また、AWBを紛失した場合も、船荷証券のような煩雑な手続は不要なので、保証状による貨物引渡しを行う等の手続きも不要です。これは、航空貨物の場合は海上貨物と比較して運送期間が短く、貨物を迅速に処理するために流通証券性を持たせない方が合理的だからです。

    一方、AWBの短所は、船荷証券のように担保力がないので荷為替手形の担保にはなり得ません。したがって、売主と買主の十分な信頼関係を前提として、送金ベースや信用状なしの取立手形(B/C)によって決済がなされています。
    ただし、信用状で“Air Waybill Acceptable”の条項を入れれば、荷為替の取り組み(割引くこと)を利用することが可能となります。その場合、AWBの荷受人(Consignee)をL/C発行銀行宛にすると、貨物は銀行の占有下にあることとなりますから、荷受人は銀行へ代金決済をしないと貨物を受け取ることはできません。実務では、輸入業者が金融機関に「輸入担保荷物保管証(Trust Receipt:T/R)」を差し入れることにより、荷物を引き取ります。航空貨物の場合に差し入れるT/Rを日本では「丙号T/R」と呼んでいます。

  22. 保険証券
    取引条件がCIFの場合、原則として白地裏書の行われた保険証券2部を要求します。付保金額は、インボイス金額の110%以上です。また、CFRやFOBが取引条件で海上貨物保険契約を輸入者が行う場合は、「INSURANCE TO BE EFFECTED BY APPLICANT」にチェックし、保険会社名を銀行に通知します。
    「BENEFICIARY’S CERTIFICATE STATING THAT 〜」は、輸出者に特別な指図を命じ、それが実行されたことを証する書面を要求する場合に使用します。例として、下記のような「B/L等直送の指示」があります。

    BENEFICIARY’S CERTIFICATE STATING THAT 1/3 SET OF ORIGINAL B/L, 3 COPIES OF COMMERCIAL INVOICE AND 3 COPIES OF PACKING LIST HAVE BEEN SENT DIRECTLY TO THE CONSIGNEE.


  23. その他の書類
    契約上あるいは通関上、その他の書類が必要な場合は、書類名/通数/作成者等を明示します。その他の書類としては、梱包明細書(PACKING LIST)、原産地証明書(CERTIFICATE OF ORIGIN)、重量容積明細書(WEIGHT AND MEASUREMENT LIST)等があります。

  24. 商品
    荷物の名称を明確に記入します。必要に応じて品質・数量・容積・重量等を指定します。単価と数量を指定する場合は、信用状金額(⑧)と矛盾しないように注意する必要があります。

  25. 取引条件
    取引条件の明確な指図をします。CIF/CFR/FOBなどインコタームスに基づき記載します。「PLACE」はインコタームズに準じて記載します。すなわち、FOB, KOBE、CIF, NEW YORKなど「船積地」であったり「陸揚地」を記載します。

  26. 特別条件
    国外発生の手数料負担区分では、信用状発行手数料以外の国外で発生する銀行手数料(たとえば輸出地の銀行の信用状通知手数料等)の負担区分を指定します。依頼人または受益者のどちらかにマークします。
    T.T.リンバース(電信による求償)では、受益者の取引銀行に、決済代金を電信により即日請求させることを許容するかどうかを指定します。許容した場合には、書類が到着する前に受益者に対し決済代金が支払われる可能性があります。

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