若手法務部員が語る本音 修正できない契約書、マンネリ、上司・弁護士との関係も それでも法務はやりがいある仕事?

法務部

国内外の規制強化、グローバル化・IT化の進展による経営環境の変化に伴い、企業のリーガルリスクは、これまで以上に多様化・複雑化しています。今年4月には経済産業省から「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書」がまとめられ、戦略的な法務機能の必要性が提唱されました。

法務部門に変化が求められている今、現場で働く方々は日々どのような仕事に取り組み、何に悩み、やりがいを感じているのでしょうか。現役法務部員である5名の若手社員に本音を語っていただきました。

プロフィール

Aさん
IT企業へ転職したばかり。1社目から法務に従事し、現在3社目。大手企業からベンチャー企業まで幅広く経験。仕事の大半が契約書審査。ロースクールを卒業。

Bさん
メーカーの法務として働き始めて1年。契約書審査や社内の法務相談以外に、社内報の作成も行っている。ロースクールを卒業。

Cさん
メーカで働く入社5年目。もともとは営業志望だったが、新卒面接で法務を勧められたことをきっかけに配属後は一貫して法務担当として勤務。

Dさん
ICTや各種エンジニアリングなど様々な事業を展開する企業で働く入社6年目。主に契約書審査や許認可の更新対応を担当。現在、弁護士になるために勉強中。

Eさん
グローバル企業へ転職し、現在3社目。契約書審査を中心に、下請法の対応やワークフローの整備を行っている。ロースクール卒業後に入社した1社目では事業部の仕事を経験。

法務を志望して入社したものの、「飽きてしまった」「決められない」 若手の悩みは尽きない

皆さんは法務の仕事を志望して入社されたのでしょうか。

座談会の様子

Aさん
そうですね。ロースクールでも学んでいたので。

Bさん
私もロースクールで勉強していたので、法務を志望していました。

Cさん
就職活動をしている時は営業を志望していましたが、最終面接で法務を勧められ、「それならやります!」と応じて法務部に配属されました。それまで法務という選択肢を考えたことはありませんでしたが、文系出身の自分の将来を考えた時に、真っ先に浮かんだのがなんとなく営業だっただけなので、他に道があるならそちらへ行こうとすんなり受け入れました(笑)。

Dさん
入社面接では人事部を勧められましたが、「法務部に配属してもらえないなら、他の会社へ行きます」と強気に出ました(笑)。大学で法律を勉強していたので、どうしても法務部で働きたかったです。

Eさん
ロースクール出身ですが、1社目は総合職採用だったので特に法務を志望していませんでした。転職を機会に、法務へとジョブチェンジしています。

実際に法務の仕事に就いて、ギャップはありましたか。

Cさん
1〜2年業務をこなすと、仕事が定型化してしまい、物足りなく感じてしまいました。

Aさん
わかります。新卒の会社ではグループ間の業務委託契約が多かったので、完全に定型化してしまい、次第に飽きてきて転職しました。

Eさん
契約書のチェックを法務がやるのに、決められないことが多いんだなと思いました。

Cさん
法務で勝手に決めてしまうとビジネスが動かなくなってしまうことがあると思うので、ビジネスサイドと話し合って決めていくことが重要ですね。結果、当初の想定とはだいぶ違った形で契約を結ぶことが多々あります(笑)。

Eさん
「これが良いだろう」と思った内容の契約書を営業に渡しても、まず採用されない…。

一同
あるある!

Bさん
営業から契約書をチェックしてほしいと言われ、修正した内容を渡すと、「これは先方のひな形だから修正できないんです」と言われることって、けっこうありますよね。

Aさん
そうなると法務としてはリスクを伝えるくらいしかできませんよね。そのうえで、「進めたいならそうしてください」と、最終的には突き放してしまいます。エビデンスは残すようにしていますが。

Eさん
逆に、「ビジネスに関わることなのに、これを法務で決めていいの?」っていう依頼をされたりもしませんか?たとえば、販売条件とか支払いサイトとか。

Aさん
瑕疵担保や損害賠償額の上限って法務で決めてよいのかいつも疑問です。何かあった時に金額に影響する部分だから法務で決めるよりもビジネスサイドで考えた方が良いのではないかと思っています。そう考えると、法務で決めるべきことはあまりないのかもしれません。究極、営業の人が法的なリスクをわかっていたら法務はいらない。

Eさん
でも、結局営業は契約書になると自分ごとじゃなくなるんですよね。

法務でわかっていることでも、社内の説得のために弁護士へ相談する

弁護士とはどのように関わっていますか。顧問弁護士にお願いすることが多いでしょうか。

Bさん
基本的には顧問弁護士にお願いしています。上司の判断で相談するかどうかを決めるので、顧問料の中で対応してもらっていますが、訴訟対応をお願いする際などは、プラスで金額が発生することもあります。案件によって、相談する弁護士を変えた方がコスト面でメリットがあるのではないかという話もしますが、今のところ他の事務所には依頼していません。

Dさん
当社は案件ごとに、いろいろな事務所にお願いしています。事業の専門性を持つ企業法務系の事務所出身の方にお願いすることが多いです。

Cさん
どうやって弁護士を探しているんですか?

Dさん
インターネットで調べたりしていますが、ニッチな分野になるとなかなか難しいですね…。結局個人で開業されている先生にお願いすることが多いですが、企業法務系の事務所出身の方だと私たちの立場もわかってくれるので、そこが選定のポイントでしょうか。

Eさん
当社では基本的に弁護士に依頼はしていません。上司がそんなに弁護士のことを好きではないからだと思いますが、「自分で考えろ」と言われます。わからないことがあれば、省庁など政府機関に確認します。

どういう時に弁護士に相談するのでしょう。

Aさん
法務でわからないことは当然相談しますし、法務でわかっていることでも、社内の説得材料がほしい時は弁護士へ聞きます。ビジネスにストップをかけたい時も、進めたい時のどちらも意見を聞きますね。

Dさん
「こういう対応をしたら後々裁判官からどう思われるのか?」という印象を聞くことが多いです。

Aさん
以前、ちょっと聞きたいことがあって弁護士に相談したら、一般的な話を述べられただけで数十万円請求されたことがあります。

Cさん
ありますね!少し確認したいだけなのに、他の弁護士にも相談をされたようで、弁護士3〜4名分の費用を請求されたり。でも、提出された内容はこれ知っているのになぁ、みたいな。

転職を考えるきっかけはマンネリ、新しい事業は楽しいがグレーな案件の判断には迷いも

転職経験があるのはAさん、Eさんのお二人だけですよね。他の方は転職を考えたことはありませんか。

座談会の様子

Bさん
私はまだ入社したばかりなので、転職は考えていません。

Dさん
予備試験の勉強をしているところなので、私も転職は考えていません。いつか弁護士になって、少年事件を担当したいと思っています。

Cさん
ちょっと転職したいなと思っています。仕事がマンネリ化してきたので、何か新しいことにチャレンジしたいです。

Aさん
新しいこととは?

Cさん
たとえばAIとか。

Dさん
当社はAIも扱っていますし、新規事業が多いので、ドラフトから作る新規の契約書が3割ほどあります。

Aさん
それって楽しいですか?

Dさん
すっごく楽しいです!

一同
はぁ…(うらやましい)

Eさん
新規事業をどんどんやっている会社だと法務の仕事も新しいことが多くなりそうですね。 今の会社に転職して思ったんですが、既存事業で利益を稼いでいる成熟企業は挑戦がなかなかありません。そうすると、法務もマンネリ化してきて、事業に提供する価値もあまりないなと思っています。

Aさん
新規事業は2社目に経験したベンチャー企業でいくつか立ち上げていました。規模の小さい会社だったので、法的にグレーな案件も「どんどんいけ」という方針で、個人的にはそれでいいのか悩ましいところはありました。

Eさん
当社は規模が大きいから法的にグレーな案件は「やめろ」ですね。

Aさん
そうですよね。でも、そこの判断ってよくわかりません。どれくらいの企業規模ならグレーな状態でも攻めていくべきなのか。

Eさん
正直、法務に相談しに来なければよかったのにと思う案件もあります。相談されていなければ、進められたんじゃないかなと(笑)。

Bさん
それはありますね。相談されたら答えないといけない。事業部に折れてもらうのも心苦しくて、「なんで相談しにきちゃったんだろう」と内心思うことはあります(笑)。

若手が抱く上司への不満、理想の上司の姿は

若手の皆さんならではの意見を伺いたいのですが、上司に対しての不満はありますか。

Eさん
あります(笑)。上司から「俺が役員に説明するために何て言えばいいんだ」と求められることもあるのですが、こういう人は自分で責任を取るつもりがないんだなと感じます。
ただ、自分も後輩に同じようなことを言ってしまった経験もあって、今では絶対に言ってはいけないことだと思っています。 言われた方は当然責任を取れないし、立場が下の人間に責任を求めてはいけないですよね。

Aさん
どういう説明をしたいのか、上司が部下に対して噛み砕いて伝える必要はあるかもしれません。

Eさん
それなら「自分でやれば」と思ってしまう。

Aさん
確かに、上司に対してそう思うことはよくある(笑)。

Eさん
上司に直してほしいところはありませんか?

Cさん
私の上司は他部署の人からお願いをされるとなんでも受けてしまうので、仕事がいっぱいいっぱいになってしまうことがあります。中には法務マターとは思えない内容のものもあり、他部署の人に強い姿勢でいてほしいです。

Aさん
部下の法務部員には事業部に対して否定的なことを言っていたのに、事業部との打ち合わせになったら急に言うことが変わる人とかいますね。

Eさん
法務は売上を上げる部署ではないから、「自分たちは間接部門」という意識が強い人が多い。立場が上の人ほど他部署との交渉で折れやすい気がしています。

Dさん
当社の場合は、管理部門のキャリアパスの一環で、法律を知らない人が法務のポジションへ入ってくることがあります。これはやめてほしいですね。実務を知らないので、私の意見でもするっと通ってしまい、不安を感じます。

Bさん
私の直属の上司は法務出身者ですが、その上の部門長は法務の経験はないようです。しかし、部署全体として、うまくフォローしていこうという雰囲気があります。ささいなことも部門長から質問してきてくれるので、良い雰囲気です。

Cさん
私が入社した時の上司は営業出身だったんですが、「営業はこれをやるべき」と法務への相談を返してくれていて助かりました。

Eさん
営業出身で法務部門の役職についた人は、営業に対して適切なコミュニケーションが取れるのに対して、キャリアパスの一環で役職についた人はリスクなしに過ごしていこうとするから、なんでも受ける印象があります。

それでも法務は面白い。よかったこと、やりがいは

最後に、法務の仕事をやっていてよかったことを教えてください。

Aさん
法務の仕事はマンネリ化するという話をしましたが、まったく同じ案件はないので、やろうと思ったらいくらでも詰めて考えることができます。自分の裁量で判断できるところが魅力ですね。頭を使って仕事をするのが好きな人にとっては、適職だと思います。

Bさん
「ありがとう」と言われる時はすごくうれしいです。あと、最終的な決定が自分にかかっているのかもしれないと感じる時があります。法的にブラックな時はストップしますが、グレーの時はどうすれば会社のためになるのかを考えてよい方向にするように工夫できるので、事業そのものを未来へとつなぐ仕事のように感じています。

Cさん
入社当初は裏方として働くイメージでしたが、仕事をしているうちに、裏方というよりも一緒に事業を作り上げていく感覚に近いと感じています。管理部門の中では事業部に近いと思いますし、そういうサポートができるのは法務くらいではないでしょうか。

Dさん
社歴に関係なく、固有名詞で仕事の依頼がくることにやりがいを感じます。法律にも様々な分野がありますが、得意な分野を極めていくと、会社の中で名指しで仕事を頼まれるようになり、それがうれしいです。

Eさん
契約書を法務に投げればいいや、という考えは、ビジネスサイドの甘えだと思うんですよ。本当はビジネスサイドだって法的に把握すべきことはたくさんあるから、私が法律を説明して理解してもらい、そのうえで「もっとこうしたい」という意見を言ってきてくれると、うれしいですね。営業をはじめとした事業部門の方々と信頼関係を構築して、お互いにポジティブに取り組んでいける時にやりがいを感じます。

(取材、構成:BUSINESS LAWYERS編集部)

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