企業内容等の開示に関する内閣府令の改正案の概要

コーポレート・M&A

目次

  1. 改正の経緯
  2. 改正案の全体像
    1. 財務情報及び記述情報の充実
    2. 建設的な対話の促進に向けた情報の提供
    3. 情報の信頼性・適時性の確保に向けた取組
  3. 改正案の具体的な内容
    1. 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
    2. コーポレート・ガバナンスの概要に記載する事項
    3. 監査の状況
    4. 役員の報酬等
    5. 株式の保有状況
  4. 適用時期(予定)

※本記事は、三菱UFJ信託銀行が発行している「証券代行ニュース No.158」の「特集」の内容を元に編集したものです。


 金融庁は、11月2日に「企業内容等の開示に関する内閣府令」(以下、開示府令といいます)の改正案を公表しました。12月3日を期日としてパブリックコメント手続が行われました。本記事では、改正案の概要をご紹介します。
 なお本記事は、有価証券報告書のうち、内国上場会社に適用される第3号様式を前提として記載しています。

改正の経緯

 本年6月に公表された金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告(以下、WG報告といいます)において、「財務情報及び記述情報の充実」、「建設的な対話の促進に向けた情報の提供」、「情報の信頼性・適時性の確保に向けた取組」に向けて、適切な制度整備を行うべきとの提言がなされました。当該提言を踏まえ、有価証券報告書等の記載事項について改正が実施されることになりました。

改正案の全体像

財務情報及び記述情報の充実

  • 経営方針・経営戦略等について、市場の状況、競争優位性、主要製品・サービス、顧客基盤等に関する経営者の認識の説明を含めた記載を求める。
  • 事業等のリスクについて、顕在化する可能性の程度や時期、リスクの事業へ与える影響の内容、リスクへの対応策の説明を求める。
  • 会計上の見積りや見積りに用いた仮定について、不確実性の内容やその変動により経営成績に生じる影響等に関する経営者の認識の記載を求める。

建設的な対話の促進に向けた情報の提供

  • 役員の報酬について、報酬プログラムの説明(業績連動報酬に関する情報や役職ごとの方針等)、プログラムに基づく報酬実績等の記載を求める。
  • 政策保有株式について、保有の合理性の検証方法等について開示を求めるとともに、個別開示の対象となる銘柄数を現状の30銘柄から60銘柄に拡大。

情報の信頼性・適時性の確保に向けた取組

  • 監査役会等の活動状況、監査法人による継続監査期間、ネットワークファームに対する監査報酬等の開示を求める。

改正案の具体的な内容

経営方針、経営環境及び対処すべき課題等

記載が求められる主な事項 WG 報告の内容
経営方針、経営戦略等の内容の記載に際して、経営環境(※)についての経営者の認識の説明を事業の内容と関連付けて記載
  • 企業の目的と経営戦略、ビジネスモデルについて、取締役・経営陣が積極的に自らコミットしてその見解を示すことが必要
  • 投資家が適切に理解できるよう、経営戦略の実施状況や今後の課題も示しながら、MD&AやKPI、リスク情報とも関連付けて、具体的で充実した説明がなされるべき
優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題についての内容、対処方針等を経営方針・経営戦略等と関連付けて具体的に記載

(※)企業構造、事業を行う市場の状況、競合他社との競争優位性、主要製品・サービスの内容、顧客基盤、販売網等を例示

コーポレート・ガバナンスの概要に記載する事項

記載が求められる主な事項 WG 報告の内容
コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方
  • 企業統治の体制の「概要」については、ガバナンス情報の充実を図る観点から、提出企業の機関設計に応じ、取締役会や委員会等の構成(名称、人数、メンバー、社内・社外役員の別、委員長の属性等)、委員会等の設置目的、権限等を記載すべき
企業統治の体制の概要に、設置する機関の名称、目的、権限及び構成員の氏名(機関の長に該当する者は役職名の記載、社外取締役または社外監査役に該当する者についてはその旨の記載を含む。)が含まれることを追加

監査の状況

記載が求められる主な事項 WG 報告の内容
監査役会(※1)の活動状況(開催頻度、主な検討事項、個々の監査役の出席状況及び常勤の監査役の活動等)
  • 監査役会等については、監査役会等の活動の実効性を判断する観点から、有価証券報告書においてその活動状況の記載を求める
会計監査の状況について、連続して監査関連業務を行っている場合における期間(継続監査期間)、監査人を選定するに当たって考慮するものとしている方針
  • 監査法人におけるローテーション制度が導入されていない中、継続監査期間は、監査人の独立性を判断する観点から重要な情報
  • ネットワークベースの報酬額・業務内容は、監査人の独立性を判断する観点から重要な情報
  • 監査人の継続監査期間、監査業務と非監査業務に区分したネットワークベースの報酬額・業務内容が、我が国でも開示されるべき
監査報酬の内容等:提出会社とその連結子会社がそれぞれ監査人と同一のネットワーク(※2)に属する者に支払った報酬について、監査業務・非監査業務に区分して記載(非監査業務に基づく報酬があるときは、当該非監査業務の内容)

(※1)監査等委員会設置会社にあっては監査等委員会、指名委員会等設置会社にあっては監査委員会を指す
(※2)共通の名称を用いるなどして2以上の国においてその業務を行う監査法人等を含めて構成される組織をいう

役員の報酬等

記載が求められる主な事項 WG 報告の内容
役員報酬等に業績連動報酬が含まれる場合、業績連動報酬とそれ以外の報酬の支給割合の決定方針を定めているときは、当該方針の内容。業績連動報酬に係る指標、当該指標を選択した理由、当該業績連動報酬の額の決定方法
  • 経営陣の報酬内容・報酬体系と経営戦略や中長期的な企業価値向上との結び付きを検証できるよう、役員の報酬プログラムの開示において、固定報酬、短期の業績連動報酬(賞与)、中長期の業績連動報酬(ストックオプション等)それぞれの算定方法や固定報酬と短期・中長期の業績連動報酬の支給割合、役職ごとの支給額についての考え方を定めている場合にはその内容など、報酬の決定・支給の方法やこれらに関する考え方を具体的に分かりやすく記載することを求めるべき
役員報酬等の額・算定方法の決定に関する役職ごとの方針を定めている場合は、当該方針の内容
役員報酬等に関する株主総会の決議があるときは、当該株主総会の決議年月日
役員報酬等に業績連動報酬が含まれる場合、当事業年度における業績連動報酬に係る指標の目標・実績
役員報酬等の額・算定方法の決定に関する方針の決定権限者の氏名・名称、その権限の内容・裁量の範囲
  • 役員報酬の算定方法にKPI等の指標が関連付けられている場合には、その指標と指標の選定理由、業績連動報酬への反映方法や、報酬総額等を決議した株主総会の年月日等についても記載されるべき
  • 報酬決定プロセスの客観性・透明性のチェックを可能とするため、算定方法の決定権者、その権限や裁量の範囲、報酬委員会がある場合にはその位置付け・構成メンバー等の情報とともに、その実効性を確認できるよう、取締役会・報酬委員会の具体的活動内容などについても開示を求めるべき
役員報酬等の額・算定方法の決定に関する方針の決定に関与する委員会(任意の委員会等)が存在する場合、その手続の概要
役員報酬等の額の決定過程における取締役会、委員会(任意の委員会等)の活動内容

株式の保有状況

記載が求められる主な事項 WG 報告の内容
保有目的が純投資目的である投資株式と純投資目的以外の投資株式の区分の基準や考え方
  • 政策保有目的と思われる株式保有が純投資に区分されているケースがあるとの指摘があることから、純投資と政策投資の区分の基準や考え方の明確な説明を求める
  • 個別の政策保有株式の保有目的・効果について、提出会社の戦略、事業内容及びセグメントと関連付け、定量的な効果(記載できない場合には、その旨と保有の合理性の検証方法)も含めてより具体的に記載することを求めるべき
  • 開示対象となる銘柄数を増やすべきであるとの意見を踏まえ、開示対象を拡大する
純投資目的以外の投資株式について、保有方針・保有の合理性を検証する方法、保有の適否に関する取締役会等の検証内容
純投資目的以外の投資株式について、非上場株式とそれ以外に区分し、各区分ごとに銘柄数・貸借対照表計上額の合計額、株式数が増減した銘柄数、増減に係る取得価額・売却価額の合計額(増加の場合はその理由も含む)
個別開示の対象となる銘柄(※)について、経営方針・経営戦略等、事業の内容及びセグメント情報と関連付けた定量的な保有効果、株式数が増加した理由、当該株式の発行者による提出会社の株式の保有に関する情報

(※)個別開示の対象となる銘柄数は、貸借対照表計上額の大きい順に、現状の30銘柄から最大60銘柄に拡大

適用時期(予定)

 具体的な適用時期(予定)の概要は以下のとおりですが、「附則(案)」に詳細が定められています。

項目 適用時期(予定)
2-2に記載する事項(建設的な対話の促進に向けた情報の提供)等 平成31年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等から適用
上記以外 平成32年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等から適用(※)

(※)平成31年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等からの適用可

問い合わせ先

三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部 会社法務コンサルティング室
03-3212-1211(代表)

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