個人株主を「ファン化」する仕組みづくり - 秘訣はネットの活用とコンテンツによる働きかけPR オンラインでの議決権行使株主数を、2年で3倍に

コーポレート・M&A

目次

  1. 投資家との対話促進による、ガバナンスを取り巻く環境の変化
  2. 議案の賛否の動向
  3. 経営参加意識はあるが自社への関心が薄い個人株主の「ファン化」が重要に
  4. インターネットを活用した「ネットで招集」による個人株主への利便性の提供
  5. 株主総会後もコンテンツによる働きかけで、株主の企業理解を促進
  6. オンラインでの議決権行使人数が2年前に比べ約3倍に

投資家との対話促進による、ガバナンスを取り巻く環境の変化

近年、ガバナンスへの関心が高まっている。特に2014年以降、経済産業省が定めた伊藤レポート1 、金融庁が定めた日本版スチュワードシップ・コード2 、東京証券取引所が定めたコーポレートガバナンス・コードにより、機関投資家と企業の建設的な対話を通じた中長期的な企業価値向上が促され、企業のガバナンスを取り巻く環境は大きく変化してきている。

議案の賛否の動向

スチュワードシップ・コードが改訂され、機関投資家は議決権の行使結果を個別の投資先企業および議案ごとに公表すべきだとされたこともあり、機関投資家による株主総会の議案に対する賛否の判断基準が厳格化している。株主提案議案についても、合理的な内容の議案に賛成票が集まるようになってきている。一方で、企業側の情報発信不足もあり、賛成率が低下する例も見られる。議案への賛成率に注目が集まるなか、重要性が高まっているのが個人株主による議決権行使だ。

議決権行使助言会社の意見に影響を受けやすい機関投資家は、いつ企業の反対派に回るかわからない。会社提案議案の否決リスクが高まる中、企業の味方となりうるのが個人株主なのである。

経営参加意識はあるが自社への関心が薄い個人株主の「ファン化」が重要に

ディスクロージャー&IRのパイオニアとして、上場企業に数多くの招集通知を提供してきた宝印刷は、個人株主の動向を探るため、自社の株主を対象に議決権行使についてアンケートを実施した。

「保有銘柄の議決権行使について、行使しようと思う動機は」という質問には、「経営に参画するという株主の義務を果たしたいから」(59.9%)という回答が突出して多く、約6割の株主が経営参加に対する意識を高く持っていることがうかがえた。

一方、「基本的に議決権行使はしない」と回答した株主も8.8%と少数ではあるが存在した。そうした株主が通常、議決権を行使しないのは、「配当金・優待取得目的の銘柄だから」(46.7%)など実益重視のための株式の保有であったり、「手間がかかって面倒だから」(36.7%)「その銘柄に思い入れがないから」(8.9%)と保有銘柄への関心が低かったりするためだった。

企業が個人株主との関係性を築き、議案への賛成率を向上させるためには、こうした株主を「ファン化」し、議決権行使を促すことが肝要だ。そのためには、株主の企業理解を深めるべく対話姿勢を強化することが必要だといえるだろう。

宝印刷による、議決権行使についてのアンケート結果

宝印刷による、議決権行使についてのアンケート結果

インターネットを活用した「ネットで招集」による個人株主への利便性の提供

こうした課題意識を受け、個人株主による自社への理解を深め、議決権行使につなげるために、宝印刷はサービス提供者でありながら自ら「自社の株主との対話の質」の向上へ挑戦。招集通知を大幅に刷新するとともに、招集通知をインターネットで閲覧できる「ネットで招集」を開発、株主総会への株主の招集時に利用している。

「ネットで招集」は、スマートフォンやパソコン、タブレットでいつでもどこでも招集通知を閲覧することができるサービスで、横メニューと縦スクロールを活用したスムーズな画面遷移を実現し、少ないスクロール数でストレスなく閲覧できるよう操作性を向上させている。

トップページには、議決権行使ウェブサイトへのリンクボタンを配置し、議決権行使を促したり、「Googleカレンダー」を活用して株主総会日時のスケジュール管理をできるようにしたりと、株主総会へ出席する個人株主数の増加にも取り組んでいる。

加えて、株主とのタイムリーなコミュニケーションを行うためアンケートが実施できるようになっており、回答者へはスマートフォンで使用できる「電子チケット」を抽選で贈呈する。

また、各信託銀行が、株主が議決権行使の際に使用する議決権行使書面にQRコード3を載せ、それを読み取ることで議決権行使サイトへ容易にアクセスできるようにする取り組みをはじめていることを踏まえ、トップページにQRコードを読み取るカメラ機能を構築するなど、個人株主の利便性に配慮している。

宝印刷では「ネットで招集」をすでに顧客向けサービスとして展開しており、着実に採用企業数を伸ばしている。

宝印刷の「ネットで招集」採用企業

宝印刷の「ネットで招集」採用企業(テキストクリックで紹介ページへ遷移)

招集通知には、株主が同社に対する理解を深めるためのコンテンツが充実していることも特徴的だ。株主からのアンケート結果によれば、マンガ「議決権行使のご案内」がコンテンツのなかでも突出した評価を得たという。「議決権の行使はしたことがありませんでしたが、マンガを読んで初めてやってみようと思いました」「マンガでの説明がわかりやすく、何よりとっつきやすくて良い」と、読む人の年齢を選ばないマンガという表現方法に、親しみやすさを感じた人が多いようだ。

マンガ 「議決権行使のご案内」

マンガ 「議決権行使のご案内」

近年の統合思考への関心の高さもあり、社会とともに持続的成長を果たすための考え方を示す「価値創造ストーリー」も高い評価を得ている。また、「社長メッセージ」にも「経営目標や実績が簡潔に示されていてわかりやすい」、「カラー写真で人物像が想像でき好感が持てる」といったポジティブな意見が寄せられた。

株主総会後もコンテンツによる働きかけで、株主の企業理解を促進

また宝印刷は株主総会後に株主全員へ送付する株主通信でも、株主とのコミュニケーション強化を図っている。

同社の取り組みをマンガ化し紹介する「知ってください宝印刷」を作成し、コーポレートサイト内にも掲載。マンガでは伝えきれない内容を動画で補完し、理解が深まるという仕掛けになっている。

これらのコンテンツは、2016年8月に宝印刷が開設して以来、株主との対話の場として積極的に情報を発信してきた株主情報ウェブサイト「SRコミュニティ」内に掲載されている。SRとは「シェアホルダーリレーションズ(Shareholder Relations)」の略で、同社の登録商標だ。

「SRコミュニティ」には株主アンケートの結果に対して役員がそれぞれコメントする、経営陣の顔が見えるコンテンツ「株主アンケート 結果のご報告」などを掲載。招集通知や株主総会後の結果もチェックできる。「定時株主総会のご報告」として、株主総会の決議結果や上映されたスライド等も公開しており、株主総会への参加、不参加にかかわらず、公平に情報開示するよう努めている。

宝印刷による株主との対話イメージ

宝印刷が運営する株主情報ウェブサイト「SRコミュニティ」(テキストクリックでサイトへ遷移)

オンラインでの議決権行使人数が2年前に比べ約3倍に

このように宝印刷では、株主の理解を深めるために印刷物、ウェブサイトの両面でさまざまな工夫をしており、結果として、株主との良好な関係を築くことができているという。

一連の取り組みが功を奏し、宝印刷では株主総会前のインターネットによる議決権行使人数は前年の約1.4倍、2年前に比べ約3倍となった。さらに、同社の取り組みをブログで紹介する個人投資家も多数おり、積極的な情報配信や招集通知への先進的な取り組みを評価するコメントが目立ったという。

こうした反応からも、株主の中で着実に「ファン株主」が構成されていることがうかがえる。アンケートなどを通じて対話が促進。同社はその意見に真摯に耳を傾けて経営を前に進め、株主は経営に参加するための議決権行使を行うことで絆が深まっていくというサイクルが出来上がりつつある。

株主との対話強化へ向けた取り組みは、同社に限らず上場企業でも少しずつ進んでおり、株主からの理解や共感、賛同の獲得を見据えた、株主との対話の質の向上は、今後ますます注目されることになるだろう。企業の対話姿勢が、株主による銘柄選択の基準となる日も近い。

【お問い合わせ先】
本稿で紹介しました「ネットで招集」の活用をはじめ、宝印刷では株主との関係性向上をサポートするサービスを提供しております。詳細につきましては、以下のボタンをクリックのうえ、お問い合わせください。

  1. 「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクト「最終報告書」 ↩︎

  2. 「責任ある機関投資家」の諸原則≪日本版スチュワードシップ・コード≫ ↩︎

  3. QRコードは、株式会社デンソーウェーブの登録商標です ↩︎

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