組織づくりとテクノロジー活用の観点から、これからの法務に求められる機能を考えるPR 「Legal Innovation Conference 〜これからの法務組織のつくり方〜」講演レポート

法務部

目次

  1. グローバル経営をサポートする法務部門が解消すべき課題
  2. 法務部門へのテクノロジー導入のハードルとなるもの
  3. 法務人材の多様化に対応するには、「対話」を重視し、人材育成プランを明確に
  4. 法務メンバーのうちフルタイムは半数のみ、働き方改革の肝は情報共有
  5. まとめ

グローバル化が進み、テクノロジーも発展を遂げるなか、法務・コンプライアンス機能の担うべき役割や責任に大きな変化が生じつつあります。BUSINESS LAWYERSが昨年12月に行ったアンケートでは、セミナーで聞きたい内容として「法務部の組織づくり・働き方」に最も回答が集まるなど 1、多くの方がこれからの法務組織のあり方や具体的な解決策に関心を寄せています。

そこでBUSINESS LAWYERSは7月12日、「Legal Innovation Conference 〜これからの法務組織のつくり方〜」を東京・ベルサール御成門タワーにて開催しました。本イベントでは、これからの法務組織に求められる機能の実現に向けた「組織・体制づくり」、またそれを支える「テクノロジーの活用」の2点をテーマに据え、強い法務組織のつくり方について具体例を交えながら考えていきました。本稿では、下記4名の登壇者による講演を中心に、当日の模様を紹介します。

登壇者
  • 名取法律事務所 代表 名取 勝也弁護士
  • 株式会社LegalForce 代表取締役CEO 角田 望氏
  • 三井物産株式会社 法務部長 高野 雄市氏
  • サイボウズ株式会社 執行役員 人事本部長 兼 法務統制本部長 中根 弓佳氏

グローバル経営をサポートする法務部門が解消すべき課題

経営がグローバルに統合されていくと企業のガバナンス・コンプライアンスのあり方にも変化が生じます。グローバル化によって法務部門の業務にはどんな変化が生じるでしょうか。また、そこで出てくる課題をどのように解決すべきなのでしょうか。冒頭の講演では、米系グローバル企業の日本法人において長年ジェネラル・カウンセルを務めた経験をもつ名取法律事務所 代表 名取 勝也弁護士が解説しました。

経営のグローバル化によってまず求められることは、契約条件の統一化です。名取弁護士は「主要条件、責任制限、知的財産権、秘密保持などの条件についてはグローバルなテンプレートを作成し、基本的には例外なしでの締結を目指す」と説明します。また「欧米は弁護士資格を持ったインハウスロイヤーが契約交渉・紛争処理の交渉の場に出てくる。最近では日本でも増えてきているが、100%ではない」と、特に国外ではロイヤーtoロイヤーの交渉が求められることも挙げました。

ここで日本の法務部門の課題となってくるのが、海外法務部門の有資格者のマネジメントといった、法務部門内のグローバル・マネジメントです。「法曹の資格を持っていないことで海外の弁護士に主導権を握られてしまい、悩む人は多い。また言葉の壁も大きいでしょう。英語で相手を説得することは非常に難しい」と名取弁護士は話します。

こうした課題を解決するためのポイントとして、名取弁護士は「自分たちのやりたいことを押し通す気概を持つことが海外法務部門とやり取りする際のキーポイントとなる」と心構えについて語り、「日本の法務人材を海外拠点へアサインしたり、逆に本社から弁護士を呼んで日本で働いてもらったりなど、主体的に行動することがマネジメントのあり方の根底にある」と説明しました。

名取法律事務所 代表 名取 勝也弁護士

名取法律事務所 代表 名取 勝也弁護士

法務部門へのテクノロジー導入のハードルとなるもの

次世代の法務組織を設計するにあたっては、近年注目されているリーガルテックが有力な武器となり得ます。株式会社LegalForce 代表取締役CEO 角田 望氏は、同社が提供するAI契約書レビュー支援サービス「LegalForce」での事例を踏まえて、企業がリーガルテックを導入する際に法務部門が直面する課題について解説しました。

LegalForceは、昨年夏にベータ版を公開し、250社がトライアルで運用。そのうち92社が今年4月に発表された正式版の導入に至ったといいます。角田氏は「製品をつくっていたときには見えていなかった課題が浮き彫りになってきた。導入・浸透には大きなハードルがある」と現状を説明します。

ハードルのひとつは、慣れ親しんだ業務フローが変わってしまうこと。リーガルテックを導入すると右肩上がりに業務効率が改善されていくと思われがちですが、慣れて浸透するまでには一時的に効率が落ちるフェーズがあります。

また角田氏がもうひとつ乗り越えなければならないハードルだと指摘するのは、法務担当者のキャリアの理想形が変わってきているということです。現状の法務業務はリーガルテックがない前提で成り立っており、個人の専門知識を積み重ねて職人的な仕事をすることが理想とされていますが、これからはテクノロジーをうまく使うことで、自分の能力や知識を共有し、パフォーマンスを出していくことが求められます。

既存の価値観を変えて変化に適応していくには大変な労力が必要ですが、角田氏は「テクノロジーはあくまで手段。その先にある世界観が重要。リーガルテックによって実現したい法務組織を考えていかなければならない。法務部門が自社に最適なテクノロジーを選定し、導入・運用していけるスキルも今後は求められるようになる」と提唱しました。

株式会社LegalForce 代表取締役CEO 角田 望氏

株式会社LegalForce 代表取締役CEO 角田 望氏

法務人材の多様化に対応するには、「対話」を重視し、人材育成プランを明確に

高度化・グローバル化するリーガルリスクへの対応、ガバナンス・コンプライアンス体制の強化など、法務部門への期待が高まる一方で、法務人材の多様化や流動化の進行による、人材育成のあり方が問われています。三井物産株式会社 法務部長 高野 雄市氏は、法務部員によるエンゲージメントの重要性や法務人材育成のポイントなどについて語りました。

高野氏によると、三井物産の法務部では、法学部卒や法科大学院卒の人材だけでなく、他学部卒、日本人弁護士、外国人弁護士、他部門出身者など、人材の多様化が進んでいるといいます。人材が多様化すると、各部員の目指す方向と法務部の方向性を一致させるのが困難になり、結果的に法務部員のエンゲージメントが低くなってしまうという課題が生じます。高野氏は、組織力を最大化するためには、多様な人材の力をいかに引き出すかが重要と指摘します。

エンゲージメントの向上策について高野氏は、「自分がどのように会社へ貢献をしているのかを実感しにくいとエンゲージメントは低下する。重要なのは、法務機能の重要性を部員が感じ、誇りに思えることだ。経営層がいかなる期待を法務部に寄せているのかを的確に把握し、部門経営・人材育成に結び付けることが重要。また、法務部長だけではない多様なキャリアの到達点を提案するなど、部門としての将来の在り姿や人材育成プランを明確にして共有することが重要」と説明。さらに、それぞれのキャリア選択によって、人材育成の在り方や評価の仕方を変える必要があり、そのための部員との「対話」が重要とも指摘します。

そこで三井物産の法務部では、積極的に人事総務部や監査役室、事業部門、子会社など他部門への出向を進めています。法務人材のキャリア育成につながるほか、法務人材の経営目線・ビジネスセンスを養うことにも繋がると同時に、人脈も広がるといいます。また、高野氏は、法務の素養・スキルは、経営その他様々な役職で活用しうると指摘し、「法務の知見を身につけている人材が経営や他のコーポレート部門でも活躍できれば、会社全体としてのリスク耐性を強めることができる」とも語りました。

三井物産株式会社 法務部長 高野 雄市氏

三井物産株式会社 法務部長 高野 雄市氏

法務メンバーのうちフルタイムは半数のみ、働き方改革の肝は情報共有

多くの企業で働き方改革が進んでいますが、法務部門も例外ではありません。サイボウズ株式会社 執行役員 人事本部長 兼 法務統制本部長 中根 弓佳氏は、多様な働き方を推奨しているサイボウズでの実際の取り組みや考え方について紹介しました。

サイボウズは、2005年より働き方改革に取り組み、現在では「100人いれば、100通りの働き方や制度があってよい」という方針をとっています。これにより、2005年時点で28%もあった離職率は、ここ数年では4〜5%程度にまで落ち着いてきているといいます。

サイボウズでは、全社員の4人に1人以上が常に短時間勤務またはリモートワークをしており、法務メンバーも10人のうちフルタイムは5人。それ以外の社員は他部門との兼務や短時間勤務を行っています。「そうした状況で重要となるのが、個人戦ではなくチームでの総力戦に持ち込む戦略」と中根氏。そのためには、情報を極力オープンにしていく必要があると説明します。

「多様な働き方を実現するには、時間と場所の選択肢と脱属人化が必要です。そのために重要となるのが、情報共有。情報共有を行うことにより、問題点が発見され、業務改善が進むだけでなく、アイディアが生まれたり、成長が促進されたりするというメリットもあります」(中根氏)

サイボウズでは、取締役会や経営会議の議事録、営業本部内でのコミュニケーションなど、プライバシーやインサイダー情報に関わるもの以外はすべて社内で共有する方針だといいます。法務チームでも、自社のITツールを用い、チームとしてのTODOや議論・検討過程の見える化、ノウハウの共有などに取り組んでいると中根氏は語りました。

サイボウズ株式会社 執行役員 人事本部長 兼 法務統制本部長 中根 弓佳氏

サイボウズ株式会社 執行役員 人事本部長 兼 法務統制本部長 中根 弓佳氏

まとめ

当日は、多くのセッションで参加者から講演者に対して質問が寄せられるなど、法務組織のあり方に対する関心の高さがうかがえました。講演会場の外にはブースコーナーも設けられており、さまざまなリーガルテック関連製品が展示。参加者のみなさんは熱心に製品説明に耳を傾けており、リーガルテック導入を前向きに検討している様子が見られました。

当日のブースの様子

(文:周藤 瞳美、取材・構成・編集:BUSINESS LAWYERS編集部)


  1. 2018年12月5日開催『Legal Innovation Conference 〜イノベーションで切り開く法務の未来〜』参加者アンケート(n=190)。「今後イベントやセミナーで聞いてみたいテーマをご選択ください。(複数回答可)」へ108名が「法務部の組織づくり・働き方」と回答。 ↩︎

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