雇用保険法等の改正のポイントは?

第1回 育児に関する諸制度はどのように改正されたのか

人事労務

目次

  1. はじめに
  2. 育児・介護休業法の改正による育児関連諸制度の改正内容
    1. 対象となる「子」の範囲の拡大
    2. 育児休業取得可能な有期雇用労働者の範囲
    3. 子の看護休暇の見直し
  3. おわりに

はじめに

 平成28年3月29日、雇用保険法等の一部を改正する法律が成立しました(以下、「本改正」といいます)。本改正は、雇用保険法のみならず、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下、「育児・介護休業法」といいます)などの複数の法律の改正を行うものです。
 本稿ではまず、本改正のうち育児・介護休業法改正による育児に関する諸制度の改正を取り上げます。本改正のその他の部分については、別稿で解説を行っていく予定です。

育児・介護休業法の改正による育児関連諸制度の改正内容

 本稿では、特にことわらない限り、平成29年1月1日に施行される改正後の条文番号を記載しています。
 改正後の育児・介護休業法の条文はこちらを参照ください。

対象となる「子」の範囲の拡大

 本改正前は、育児休業の対象となる「子」は、労働者と法律上の親子関係がある子、つまり、実子および養子に限られていました。本改正により、以下の類型が育児休業の対象として追加されました。

労働者が特別養子縁組の成立について家庭裁判所に請求し同審判手続が係属中であり、かつ、当該労働者が現に監護する者(育児・介護休業法2条1号)
児童福祉法に基づく養子縁組里親制度により労働者に委託されている児童および養子縁組を希望しているが、事情により、児童福祉法に基づく養育里親制度により労働者に委託されている児童)(育児・介護休業法2条1号、同法施行規則1条)

 この拡大は、「子」の定義自体を拡大するものですので、育児休業のみならず、育児・介護休業法による育児関連の他の諸制度、つまり、子の看護休暇、所定外労働免除制度、時間外労働制限制度、深夜業制限制度などにも適用されます。介護休業の対象となる「対象家族」の中にも「子」が含まれていますが、こちらは拡大の対象とはなっていません(育児・介護休業法2条1号参照)。
 なお、本改正により、育児休業給付金の支給対象となる子の範囲についても、同様の拡大が行われます(上記①に当たる特別養子縁組成立前の監護中の子については、本改正前からすでに支給対象とされていましたが、法所定の育児休業の対象とはなっていないという問題点が指摘されていました)。

育児休業取得可能な有期雇用労働者の範囲

 本改正前は、有期雇用労働者については、下記の2つの要件を満たす場合に限り、育児休業の申出ができることとされていました(本改正前の育児・介護休業法5条1項)

① 継続雇用期間が1年以上であること
② 当該子の1歳到達日を超えて引き続き雇用されることが見込まれること(ただし、当該子の1歳到達日から1年を経過する日までの間に、その労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことが明らかである場合を除く)

 本改正により、②の要件が改正され、以下のようになりました(育児・介護休業法5条)。①は変わりありません。

②´ 当該子が1歳6か月に達する日までに、その労働契約労働契約が更新される場合にあっては、更新後のものが満了することが明らかでないこと

 ②´は、②のうち、「見込み」の程度について判断が困難でわかりづらいという課題があったことが改正理由の一つでした。もっとも、「当該子が1歳6か月に達する日までに、その労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことが明らかでないこと」という表現とならなかった理由は判然としません(労働政策審議会の議事録では、「法制局と法制的な調整をする中で、このような書き方となりました」と説明されています)。
 本改正と同時に改正施行される「子の養育又は家族介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針」(以下、「育児介護指針」といいます)において、この②´の解釈について説明がなされており、以下がそのポイントとなります(育児介護指針第2、1(2)ロ)。

育児休業申出の時点で判明している事情に基づく判断であること
当該子が1歳6か月に達する日までに不更新が生じることが契約(口頭合意を含む)上確実である場合以外は、「満了することが明らかでない」場合になること

 厚生労働省雇用均等・児童家庭局職業家庭両立課 改正育児・介護休業法 参考資料集を基に編集部作成
 有期雇用労働者からの育児休業の取得申出については、上記に十分留意して取り扱うことが大切です。

子の看護休暇の見直し

(1) 1日単位の取得から、半日単位の取得へ

 本改正前は、子の看護休暇は、1日単位で取得するものとされていました(ただし、企業によっては、すでに時間単位での取得を認めている例もありました)が、本改正により、使用者に、1日未満の単位(半日単位)での付与を義務付けることとなりました(育児・介護休業法16条の2第2項、同法施行規則34条1項)。ただし、一定の短時間労働者(1日の所定労働時間が4時間以下の労働者)は、この改正の対象からは除外されます(育児・介護休業法施行規則33条)。
 この「半日単位」とは、1日の所定労働時間数の2分の1とされています。また、日によって1日の所定労働時間数が異なる場合には、1年間における1日の平均所定労働時間数の2分の1となります。また、半日単位の休暇は、始業時刻または終業時刻と連続することを要するものとされています。

 また、「半日」については、労使協定で定めることにより、所定労働時間の2分の1以外の時間数とすることも可能とされます。

 厚生労働省雇用均等・児童家庭局職業家庭両立課 改正育児・介護休業法 参考資料集を基に編集部作成

(2) 取得対象外となる条件

 以下の労働者は、労使協定に定めることにより、子の看護休暇の取得対象から除くことが可能です(本改正前から同様)。

① 勤続6か月に満たない労働者(育児・介護休業法16条の3第2項において準用する同法6条1項1号)
② 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者(育児・介護休業法第16条の3第2項において準用する6条1項2号、同法施行規則30条の2、同7条2号、平成23年3月18日厚生労働省告示58号)

 本改正により、1日未満の単位での子の看護休暇の取得に限り、労使協定で対象から除外できる労働者が追加して定められました(育児・介護休業法16条の3第2項において準用する同法6条1項2号)。

業務の性質若しくは業務の実施体制に照らして、1日未満の単位で子の看護休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者

 育児介護指針においては、このような業務の例として、以下のような業務が挙げられています(育児介護指針第2、2(3))。

① 国際路線等に就航する航空機において従事する客室乗務員等の業務
② 労働者数が少ない事業所において、当該業務に従事しうる労働者数が著しく少ない業務
③ 流れ作業方式や交替制勤務による業務であって、半日単位で子の看護休暇を取得する者を勤務体制に組み込むことによって業務を遂行することが困難な業務
④ 個人ごとに担当する企業、地域等が厳密に分担されていて、他の労働者では代替が困難な営業業務

 ただし、これら以外であっても該当する業務はありえます。また、これらであればただちに困難と認められるわけでもないとされているため、労使協定の締結に当たっては慎重な検討が必要でしょう。

おわりに

 本稿で解説した育児関連の改正は、就業規則に定めを要する事項ですので、来年(平成29年)1月1日までに所要の検討の上必要な社内規程を改訂する必要があります。各社におかれましては、本改正の内容に留意しながら、改訂作業を進めていく必要があります。

<サマリー>
・ 育児休業の対象となる子の範囲が拡大
 ➢ 特別養子縁組成立前の監護中の子
 ➢ 養子縁組里親制度により委託されている児童
・ 育児休業取得可能な有期雇用労働者の範囲拡大
 ➢ 「契約更新されないことが明らかである」という要件につき、2歳から1歳6か月に短縮
・ 子の看護休暇の見直し
 ➢ 1日単位の取得から半日単位の取得へ

 2016年3月29日、雇用保険法等の一部を改正する法律が成立しました。本改正は、雇用保険法のみならず複数の法律の改正を行うものです。本稿では、育児・介護休業法改正による育児に関する諸制度の改正を取り上げていますが、施行日(2017年1月1日)までに、就業規則等社内規程の改訂が必要となりますので、ご留意ください。

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