ダイバーシティ推進は成長戦略

コーポレート・M&A
大津 克彦

 本年5月11日より世界女性サミット「第28回 2017GSW(Global Summit of Women)東京大会」90ケ国約1,000人の女性エグゼクティブが参加し3日間にわたり開催される。日本社会において課題となっている長時間労働の是正、柔軟な働き方を実現する「働き方改革」の重要性も高まり、これらのダイバーシティ推進は、もはや経済の成長戦略と言える。

 平成11年(1999年)、男女が互いに人権を尊重しつつ責任も分かち合い、性別に関わりなくその個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会の実現が重要な課題となり「男女共同参画社会基本法」が施行された。その後、時を経て平成28年に「女性活躍推進法」が完全施行され、同年3月に内閣府より「ESG投資における女性活躍情報の活用状況」について調査報告があった。なお、当該調査対象国は日本のほか欧米の諸外国も含まれるが、ここでは日本の状況を中心にお伝えする。

 この調査では、企業における女性の活躍に関する情報が投資プロセスにおいてどのように評価され、活用されているかが報告されている。これは企業情報開示の非財務情報に含まれ、長期的な価値創造に寄与されると考えられる。日本企業に対する調査では、ESG情報全般に関する開示について英語による情報開示が劣ること、環境に比べて社会やガバナンスの開示が遅れていることなどが主に指摘されている。中でも女性の活躍情報に関する開示については、情報開示自体が不十分であることと、更には取り組みの成果などの定量的な情報開示が不足している等々が指摘されている。

 英語での開示の問題は、英文による開示に対する企業の認識不足やマンパワーの問題など主に体制の問題であるので改善は比較的早いと思われるため、他の課題となる情報の不足をみることとする。欧米各国のESG投資における女性の活躍情報の活用状況についてみると、各国の機関投資家は、意思決定機関におけるダイバーシティの推進は取締役会の機能をよりよいものとし、企業経営や投資パフォーマンスにプラスの影響を与えるとの認識から、コーポレート・ガバナンスにおける取締役会のジェンダー・ダイバーシティに注目している。投資家は、ガバナンスにおける重要な指標として、ダイバーシティを指摘しているほか、社会の観点からも企業が将来のダイバーシティ達成のために、女性リーダーの育成や女性リーダー候補者の拡大に向けた取り組みを重視しており、特に取締役構成のダイバーシティが重要であることを強調している。

 安倍内閣も、女性の活躍推進は多様な価値観が企業経営に反映されることにより、イノベーションが促進され、ひいては企業価値の向上につながると指摘し、平成25年より経済界に「役員に一人は女性を登用していただきたい」との要請を行ってきた。結果、女性役員比率は平成24年の1.4%から3.4%と2倍以上の成果になった。しかし諸外国では平均28%と拡大しており、平成27年の閣議で第4次男女共同参画基本計画において「早期に5%、更に平成32年までに10%を目指す」との目標を掲げた。企業はダイバーシティの推進が世界のスタンダードとなっている状況を認識する必要がある。

本記事は、株式会社ディスクロージャー&IR総合研究所が発行している「研究員コラム」の内容を転載したものです。
コンテンツの更新情報、法改正、重要判例をもう見逃さない!メールマガジン配信中!無料会員登録はこちらから
  • facebook
  • Twitter

関連する特集

コーポレート・M&Aの人気特集

  1. 平成29年6月総会の概況について
  2. 東芝の半導体メモリ事業売却で採用された、入札による事業売却の特色と注意点
  3. 裁判例から見る従業員株主による株主総会の運営支援等
  4. 「価値協創ガイダンス」が日本経済の流れを変える