日本のサステナブル投資の行方

コーポレート・M&A
片桐 さつき

 3月27日に、世界のサステナブル投資額の統計を集計している国際団体であるGSIA(Global Sustainable Investment Alliance)がサステナブル投資の統計報告書「Global Sustainable Investment Review」を発表した。この統計は2年に一度行われており、世界のサステナブル投資の規模を把握できる貴重なデータだ。これによると、世界のサステナブル投資総額は22兆8,900億米ドル(約2,755兆円)となり、2014年から2016年までの2年間で、世界全体のサステナブル投資額は25.2%増加している。この統計報告書の中で特筆すべきは日本の急成長である。日本のサステナブル投資総額は約57兆円となり、これまで「Asia」の中のひとつの国として表記されていた所から、別途「JAPAN」と表記されるまでに至った。しかし、世界のサステナブル投資比率で見れば、欧州では投資総額の53%を占めるのに対し、我が国は僅か3%である。急成長を遂げているとは言え、欧州・米国と肩を並べるのにはまだまだ程遠いといったところだ。

 一方、サステナブル投資の潮流に揺り動かされる日本の企業動向はどうか。4月19日には日本IR協議会から「2017年度 IR活動の実態調査」の結果が報告されている。この報告の中では、招集通知の電子開示への積極的な対応や、図版等を使用し分かりやすい招集通知を作成する等、株主総会を建設的な対話の場にしようとする意識の高まりが見られる。また、企業のESG情報開示に対する重要性認識の高まりも見える。スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードの導入により、1年前と比較して機関投資家との対話に変化が見られると回答した企業は7.1%増加し44.1%となっており、変化がないと回答した企業は6.2%減少し29.1%となっている。また、非財務情報の開示に対しては「結合性」に関する課題が多く、機関投資家への説明に苦慮している企業の様子が伺える。

 日本のサステナブル投資は、両コードの運用とGPIFのPRI署名に端を発し、いよいよ本格的に運用されるステージに入ろうとしている。ここで危惧するのは、惰性でサステナブル投資が本格化されないことだ。「ESG情報を開示すれば投資家は投資してくれるのか」という質問を企業担当者から受ける事がある。その答えはノーだ。ESG情報は、それだけでは投資判断に成り得ない。変化が激しい外部環境に柔軟に対応しながら稼ぐ力を保持・増加させ、持続的に成長できる企業であることを伝えるための情報がESG情報なのではないか。財務情報だけでは持続性や外部環境への対応力、つまりレジリエントな組織であることを伝えることは不可能だ。だからこそ、財務情報と非財務情報は結合性をもって発信されなければ本来の目的を達成することはできない

 しかし、こうした企業側の情報開示の改革だけではサステナブル投資を本格化させることはできない。機関投資家側がESG情報を投資判断に加味する手法の向上も必要だろう。企業が多くの労力を割いて作成した統合報告書を読まずに対話に臨むどころか、「ESG情報を教えてください」といった稚拙な対話をしようとする機関投資家もいるようだ。これでは日本のサステナブル投資は形式だけで終焉を迎えてしまうだろう。

 欧州・米国並みの潮流を生み出すためには、企業・機関投資家双方で価値を「協創」する必要があるし、そのための質の高い「対話・エンゲージメント」を促進しなければならないのではないか。まさに今、日本はそのステージに入っていると感じる。これから日本のサステナブル投資が本格化し、2年後の「Global Sustainable Investment Review」をJAPANの文字が賑わすことを期待してやまない。

本記事は、株式会社ディスクロージャー&IR総合研究所が発行している「研究員コラム」の内容を転載したものです。
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