株主総会の決議取消しと再決議(追認決議)における訴えの利益 - 名古屋地裁平成28年9月30日判決

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※本記事は、三菱UFJ信託銀行が発行している「証券代行ニュース No.143」の「特集1」の内容を転載したものです。

事案の概要

 本事案は、平成26年9月29日開催の株主総会で計算書類の承認、定款変更(内容は不明)、取締役・監査役の選任、取締役・監査役の報酬総額の決定、退職慰労金の贈呈に係る株主総会の決議(原決議)が行われたところ、原告Xは、かかる決議の不存在の確認および取消しを求める訴えを提起しました。

 平成27年9月9日、原決議の取消しが確定することを停止条件に、決議の性質に反しない限り平成26年9月29日に遡って効力を有することとして、原決議と同一の事項について再決議が行われました(再決議)。再決議は取消訴訟等の提起もなく確定しました。

争点と裁判所の判断

(1)決議不存在事由の有無

 本事案は、先に新株発行の無効確認の訴えがなされており、それを前提に可決された瑕疵をもって原決議が不存在であるとするXの主張については、決議の瑕疵に当たらないと判示しています。

(2)取消訴訟の訴えの利益

 裁判所は、まず、最高裁平成4年10月29日判決(いわゆる「ブリヂストン事件」)に言及し、本件再決議に付された遡及効を認めることが原決議の性質に反しない限り、原決議が取り消されたとしても再決議により原決議と同一の効力が生じるため、取消しを求める訴えの利益は失われることになるとしています。その上で

  1. 本件各決議のうち、第2号決議(定款変更)、第3号決議(取締役の選任)および第4号決議(監査役の選任)のように、これを前提として諸般の社団的および取引的行為が行われるものについては、既に進展した法律関係を遡及的に否定したのでは、著しく法的安定性が害されるため、再決議の遡及効を否定すべきであると判示しています。

  2. 一方、計算書類の承認、役員報酬総額の決定および退職慰労金の贈呈の各決議については、再決議の遡及効を認めるべきであり、原決議の取消しを求める実益がないため、決議取消しの訴えの利益は失われると判示しました。

(3)取消事由の有無

  1. 招集通知における定款変更に係る議案の概要の記載として変更内容を了解可能な程度の記載が必要となるが、本件招集通知はそれを欠いているところ、招集手続きの法令違反があり、定款変更決議には取消事由が存在した、と判示しています。

  2. 計算書類や事業報告の提供の欠如それ自体は、ただちに取消事由を構成しないと判示しています。

本判決の意義

 本判決は、非公開会社における事例ではありますが、株主総会の決議取消しと再決議(追認決議)という上場会社においても適用される部分を多く含んでおり、参考になるものです。

(1)再決議(追認決議)と訴えの利益(ブリヂストン事件から)

 本判決で言及している最高裁平成4年10月29日判決(ブリヂストン事件)は、第1決議(退職慰労金の贈呈)の取消しを効力発生の停止条件とする遡及効のある第1決議と同内容の第2決議が確定した場合、第1決議の取消しを求める実益はなく、また訴えの利益を肯定すべき特段の事情も同事件では認められないとして、訴えの利益を否定しました。

(2)再決議(追認決議)の遡及効について

  1. これに対して本判決は、再決議に遡及効を認めることが原決議の性質に反しないか(遡及効を肯定してよいか)という観点から検討を行っています。

  2. そして、定款変更や取締役等の選任に関しては再決議に遡及効を認めてはならないとしており、それらの決議については類型的に再決議の遡及効が否定される旨を指摘したものと解されます(前記 2(2)①)。

  3. なお、先例として東京地裁平成23年1月26日判決は、第三者の法律関係を害さない等の特段の事情がない限り、追認決議の遡及効を認めることはできないとした上で、取締役の解任決議とその追認決議は取締役の地位の喪失という点では効力は同じであるが、地位の喪失時期に影響を与え、追認決議までの報酬請求権を一方的に奪うことになるため、追認決議に遡及効は認められないとしています。

 実務としては、再決議(追認決議)における訴えの利益について、最高裁平成4年10月29日判決と同様、参考となる裁判例と考えられます。

問い合わせ先

三菱UFJ信託銀行
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