2018年コーポレートガバナンスの展望

コーポレート・M&A

 コーポレートガバナンス改革元年と言われた2015年から3年が経った。4年目を迎える2018年におけるコーポレートガバナンスの展望について、2017年の状況を簡単に振り返りながら述べることとしたい。

2017年の振り返り

 2015年のコーポレートガバナンス改革元年を象徴するコーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」という)の上場会社への適用が同年6月に開始され、それから2年半以上が経った。

 この間の状況として、まず、6月総会の会社でいえば、2017年6月の株主総会がCGコード適用開始後3回目の株主総会であった。この株主総会を経て、2名以上の独立社外取締役を置く東京証券取引所市場第一部上場会社は、2017年7月14日時点で1,178社、同市場上場会社全2,021社の約88.0%に及んでおり、2015年の48.4%からわずか2年で約40%も上昇している(同取引所「東証上場会社における独立社外取締役の選任状況及び委員会の設置状況」(2017年7月26日)2頁および5頁)。

 同じく2015年のコーポレートガバナンス改革元年を象徴する改正会社法(同年5月施行)により監査等委員会設置会社制度が導入されたが、当該機関設計に移行した東京証券取引所市場第一部上場会社は、2017年7月14日時点で440社(同市場上場会社全2,021社の約21.8%)である(同取引所の上記資料13頁)。監査等委員会設置会社は、社外取締役を導入しやすい機関設計として設けられたものであり(会社法331条6項参照)、その移行の流れは、上記の複数名の独立社外取締役を導入する上場会社の増加の大きな要因の一つとなっている。

 また、2017年5月にスチュワードシップ・コードが改定され、機関投資家は、株主総会における議決権行使の結果について、個別の投資先企業および議案ごとに公表することが求められることとなった。当該改定を踏まえ、個別の議決権行使結果を公表する機関投資家が現れ、同じ投資先企業の取締役の選任議案や買収防衛策の継続議案、さらには株主提案に係る議案であっても、機関投資家によって賛否が異なることや、信託銀行がグループ会社の取締役の選任議案に対して反対の議決権行使をしたことなどが注目された。

 その一方で、2016年までに引き続き2017年も、大企業による品質偽装・データ改ざんの事例をはじめとして、上場会社またはその子会社による不祥事が、相次いで発覚した。

 これらの動きに見られるとおり、複数名の独立社外取締役を置くなどして、業務執行者に対する監督(ガバナンス)を強化し、効率性・収益性を向上させるための取り組みが進められる一方で、世間の耳目を集めるような不正行為も後を絶たず、コンプライアンス体制の構築その他適法性を確保するための取り組みの不十分さが窺われる状況にある。

2018年の展望

CGコードの見直しとそれに関連して企業に求められる取り組み

 2017年12月8日に閣議決定された「新しい経済政策パッケージ」では、「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(以下「フォローアップ会議」という)での検討を踏まえ、2018年6月の株主総会シーズンまでに、投資家と企業の対話の深化を通じ、企業による一定の取り組みを促すための「ガイダンス」を策定するとともに、必要なCGコードの見直しを行うとされている(3-4頁~3-5頁)。

 2018年6月までにCGコードを見直すことが予定されていること自体、注目されるが、さらに、その見直しによって促すことが図られる取り組みの1つとして、「独立した指名・報酬委員会の活用を含め、CEOの選解任・育成及び経営陣の報酬決定に係る実効的なプロセスの確立、並びに、経営陣に対する独立社外取締役による実効的な監督・助言」が掲げられていることも重要である。

 CGコードに関しては、金融庁に設置されたフォローアップ会議における議論が、2017年10月(第11回会議)から再開されている。そこでは、上記の取り組みに関連し、「コーポレートガバナンス改革の深化に向けた論点」として、「取締役会、特に社外取締役は、現経営者が機能不全である場合における解任、後継経営者の指名及び候補者の選抜・育成について、その客観性、透明性、的確性を持続的に担保するために積極的、主体的に関与すべき。」とされ(2017年11月15日開催の第12回会議資料2の2頁)、また、当該論点に関する海外機関投資家の意見の概要として、「CEOの選任は、企業の戦略を踏まえ、将来を見据え、透明性あるプロセスに基づくべき。また、独立した指名委員会がCEOの選解任や後継者計画を主導することが重要」とされている(2017年12月21日開催の第13回会議資料3の5頁~6頁)。

 このように、会社が経営計画どおりに運営されておらず、経営目標を達成することができないような場合には、CEO等の経営トップを「解任」し、それによって、会社をより適切に運営し、その業績を向上させることができる後継者に引き継ぐ仕組みをきちんと設け、かつ、適切に運用することがますます求められるといえる。

 そのような観点からは、単に独立社外取締役が複数名いるというだけでは足りず、取締役総数または任意に設置される指名・報酬諮問委員会の委員総数に占める割合を十分なものとするよう引き上げる(取締役総数に占める割合については差し当たって3分の1以上とし、任意の委員会の委員総数に占める割合については過半数とする)ことも併せて求められると予想される。

 もっとも、これらの仕組み作りは、あくまでも業務執行者に対する監督機能が果たされるための「形式」にすぎない。何よりも重要なのは、独立社外取締役による監督の「実質」が備わっていることである

 上記の経済政策パッケージやフォローアップ会議での議論を踏まえると、独立社外取締役が、①現職の経営トップが会社経営を任せるに相応しい人物か、会社の業績を向上させる(経営計画・経営目標を達成する)ことができるかという観点から現職の経営トップおよび会社の業績を評価し、②その業績評価の結果として、会社の業績が不振であり、その責任が経営トップにあると判断されるなど、いざ経営トップを解任(交代)すべき事態が生じた場合に、そのための議論を始め、最終的に引導を渡すこと、③経営トップの交代の前提として、その後継者となるべき者が育成・選定されているかどうかを継続的にチェックすることが、独立社外取締役による監督の「実質」の中心を成すと考えられる。

 そして、会社側としては、そのような「実質」が期待できるような人材を独立社外取締役として選任しているかが問われ(これもあくまでも「形式」にすぎないものではある)、また、独立社外取締役としては、そのような働きをしているかどうか、すなわち、経営トップを解任すべきという有事に至ることは個社ベースではなかなかないものの、少なくとも、そのような有事にあるのかどうかを判断する前提となる業績評価を怠っていないかどうかが問われることになるであろう。

グループガバナンスのあり方等

 経済産業省では、2017年12月に、「コーポレート・ガバナンス・システム(CGS)研究会」(第2期)が設置され、筆者も委員を務めている。第2期のCGS研究会では、グループガバナンスのあり方について議論するとともに、コーポレート・ガバナンス改革を「形式から実質」へと深化させる観点から、コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)のフォローアップを行うとされている。

 グループガバナンスに関しては、子会社に対してどこまでの権限を与え、また、親会社でどのようにしてグリップをきかせるか(グループ経営の効率性の確保と適法性の確保のバランスの問題)という古くて新しい命題に唯一の正解はなく、各社が日々頭を悩ませている状況にある。とりわけ、海外展開が活発となっている中、海外子会社について、現地法人の理解を得ながら適切に管理することは容易でない。

 不祥事の発生した子会社についての調査報告書を見る限りでは、不祥事の起こりやすい子会社の特徴として、主に人員配置の余裕がないことに起因して、特定の部署・担当者に権限が集中し、部署間・担当者間の相互牽制がきかず、そのうえ、特定の個人が同じ業務を長期間担当するなどして業務がブラックボックス化し、不正の温床となるなどといった、一定の共通項といえるものも垣間見える。抽象論に陥りがちな子会社管理・グループガバナンスのあり方について、CGS研究会において、実務にとっての指針となり得る議論がされるよう、筆者も微力ながら努めたい。

 不祥事に関しては、上記のフォローアップ会議の第12回会議資料2(2頁)にも、「企業不祥事等を実効的に防止するためのガバナンスの機能を強化すべき」と記載されている。すべての不祥事を未然に防止することは残念ながら不可能と言わざるを得ない。そのため、いずれの会社でも不祥事が起こり得るものであることを前提にして、不祥事が発生・発覚した場合のいわば二次不祥事(当該不祥事が黙認されて継続されることや当該不祥事の隠蔽等)が生じないようにするための体制の確保(たとえば、内部通報制度の実効性確保)も重要である。

ガバナンスを巡るその他の動き~会社法の改正に向けた検討〜

 以上のほか、2017年2月、法務大臣から法制審議会に対し、「会社法制(企業統治等関係)の見直し」について諮問がされ、同年4月から、「会社法制(企業統治等関係)部会」において審議されている(審議状況について、法務省「法制審議会 - 会社法制(企業統治等関係)部会」参照)。当該見直しに関する中間試案が2018年2月または3月に取りまとめられ、パブリックコメントの手続に付される予定である。その改正法の施行は2019年以降であろうが、会社関係者としては改正の動向に留意しておく必要がある。改正が検討されている項目は多岐にわたるが、株主総会資料の電子提供制度の創設や株主提案権の制限が目玉とされる。

 詳細は割愛するが、改正によって株主総会資料の電子提供制度の創設が実現すれば、より早期に株主に対して株主総会資料が提供されることが見込まれる。これにより、特に機関投資家が議案を検討する時間を多く確保し得ることになる。2017年のスチュワードシップ・コードの改定に際しては、議決権行使結果の個別開示を踏まえた機関投資家による反対票の増加等ばかりが注目されたが、機関投資家がスチュワードシップ責任を全うするとともに、会社法が改正されることと相まって、会社と機関投資家との間のより建設的な対話・コミュニケーションが促進されることが期待される。

 また、株主提案権の制限については、株主が提案できる議案の数を制限したり、一定の濫用的な目的等に基づく株主提案を制限したりすることが検討されている。会社によっては、同一の株主から10個以上の株主提案を受けるものもあるが、このような改正に向けた動きを踏まえ、2018年の株主総会において、株主提案の個数や内容または会社の対応に変化が生ずるかが注目される。

おわりに

 2018年も、上場会社のガバナンスを巡っては、その強化に向けて様々な動きがあることが予想される。しかし、会社としては、制度の趣旨をよく理解し、株主・機関投資家の声に耳を傾けながらも、場当たり的な対応をすることは避け、あくまでも自社にとって最適なガバナンス体制を模索し、構築・運用することが肝要である。

 ガバナンスを強化するようCGコードの改定がされるのであれば、会社がその対応のあり方を真剣に検討した結果として、自社にとって最適なガバナンス体制を構築・運用するため、一定の原則にはコンプライせず、その理由を適切かつ説得的にエクスプレインするという対応がむしろ歓迎される土壌が醸成されることも期待したい。

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