事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組について

コーポレート・M&A

※本記事は、三菱UFJ信託銀行が発行している「証券代行ニュース No.149」の「特集」の内容を元に編集したものです。


 平成29年12月28日、内閣官房、金融庁、法務省、経済産業省は連名で「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組について」を公表しました(※)。
 「未来投資戦略 2017」に掲げられた「2019年前半を目途とした、国際的にみて最も効果的かつ効率的な開示の実現」に向け、事業報告等と有価証券報告書の一体的開示をより容易とするため、関係省庁は共同して制度・省庁横断的な検討を行い、当面、二つの書類の類似・関連する項目について、可能な範囲で共通化を図ることで成案を得たものです。

 以下では、事業報告と有価証券報告書の記載の共通化について、企業から指摘された事項への対応を抜粋してご紹介しつつ、事業報告の作成に当たって考えられる共通化の要領をご説明することとします(記載を共通化するかどうかは任意であり、義務付けられるものではありません)。

※あわせて、金融庁・法務省の連名で「一体的開示をより行いやすくするための環境整備に向けた対応について」が添付されており、平成29年度中を目途として金融庁・法務省が行う対応が示されています。公表資料の内容については以下のウェブサイトをご参照ください。

事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組について
事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組について(参考資料)

(1)「直前三事業年度の財産及び損益の状況」(会社法施行規則(以下、「施規」という)120条1項6号)

対応

①「1株当たり当期純利益金額」と「1株当たり当期純利益」の項目名の記載については、後者に共通化して記載することが可能であること、また、「純資産額」と「純資産」及び「総資産額」と「総資産」の項目名の記載については、それぞれいずれの表現にも共通化して記載することが可能であることを、制度所管官庁が妥当性を確認したひな型において明確化する。この他、有価証券報告書の記載を基礎として、共通の記載が可能であることも明確化する。

 有価証券報告書の連結経営指標等の一覧表を事業報告に掲載することが考えられます(「1株当たり 当期純利益金額」は「1株当たり当期純利益」に修正します)。なお、経団連ひな型(事業報告)は「総資産」、「純資産」、公益財団法人財務会計基準機構(以下、「FASF」という)ひな型(有価証券報告書)では「総資産額」、「純資産額」と表記していますが、いずれの表現にも共通化できますので、事業報告で「総資産額」、「純資産額」の表現を用いることができます。

(2)「主要な事業内容」(施規120条1項1号)

対応

①有価証券報告書にあっては、例えば「事業の内容」について、投資家の理解が容易になる観点から、記載内容が同様である又は重複する他の箇所にまとめて記載した上で、当該他の箇所を参照する旨の記載を行うことが可能であることを明確化した開示ガイドライン5-14及び24-10の内容を分かりやすく周知する。

②有価証券報告書にあっては、系統図以外の図や表等の形式により、企業の実態に応じて投資家に対してより分かりやすく示すことが可能であることを明確化する法令解釈の公表を行う。

 有価証券報告書の「事業の内容」を事業報告の「主要な事業内容」とすることが考えられます。また、有価証券報告書に掲載する事業系統図などを事業報告にも掲載することが考えられます。

(3)「重要な親会社及び子会社の状況」(施規120条1項7号)

対応

①有価証券報告書のひな型に従った記載により共通の記載が可能であることを、制度所管官庁が妥当性を確認したひな型において明確化する。

 事業報告もFASFひな型をベースとして記載を共通化することが考えられます。

(4)「使用人の状況」(施規120条1項2号)

対応

①「従業員の状況」と「使用人の状況」について、実務上、「従業員」という用語を用いた共通の記載が可能であることを明確化する法令解釈の公表を行う。

②対象会社の範囲について、実務上、連結会社について記載した、共通の記載をすることが可能であることを明確化する法令解釈の公表を行う。

 事業報告も「従業員」という用語で記載することが考えられます。また、FASF ひな型をベースとして記載を共通化することが考えられます(「提出会社」の表記は「当社」等に変更)。

(5)「事業の譲渡」等(施規120条1項5号ハからヘまで)

対応

①事業の譲渡等について業務執行を決定する機関における決定があったときは、有価証券報告書の組織再編成契約に関する開示の場合と同様に、当該事業の譲渡等について事業報告の内容に含めなければならず、有価証券報告書の記載と事業報告の内容との間で開示の要否について相違はないことを明確化する法令解釈の公表を行う。

※なお、有価証券報告書における組織再編成契約以外の契約の開示については、従来と同様、記載することが求められる。

 有価証券報告書の記載と事業報告の内容との間で開示の要否に相違はありませんので、有価証券報告書の組織再編成契約に関する開示を事業報告の「事業の譲渡」等とすることが考えられます。

(6)「主要な営業所及び工場」(施規120条1項2号)

対応

①対象企業について、実務上、提出会社+国内子会社+在外子会社に共通化することが可能であることを明確化する法令解釈の公表を行う。この他、有価証券報告書における「主要な設備」と事業報告における「主要な営業所及び工場」が重なる範囲で共通の記載が可能であることを、制度所管官庁が妥当性を確認したひな型において明確化する。

②有価証券報告書について、製造業以外の業種にあっては、開示府令第三号様式記載上の注意(1)bに基づき、開示府令に規定された様式に準じて記載することとされており、業種の特性に応じた記載が可能であることを、制度所管官庁が妥当性を確認したひな型において明確化する。

 提出会社、国内子会社、在外子会社の区分で記載した有価証券報告書の「主要な設備」を事業報告の「主要な営業所及び工場」とすることが考えられます(「提出会社」の表記は「当社」等に変更)。

(7)上位10名の株主に関する事項(施規122条1号)

対応

①株式の所有割合について、有価証券報告書でも、発行済株式総数から自己株式数を控除して算定することとする開示府令の改正を行う。

②事業年度末日に代えて、議決権行使基準日において有する株式の数の割合が高い株主に関する事項を記載することを可能とする開示府令及び施規の改正を行う。

 議決権基準日を事業年度末日以外の日に設定している場合(例えば 3月決算会社が 4月末日を議決権基準日としている場合など)には、大株主の状況を議決権基準日現在で記載することが考えられます。
 なお、会社法施行規則の改正は平成30年3月31日以後に終了する事業年度に係る事業報告について適用されます(開示府令についても同様の経過措置が設けられています)。

(8)「新株予約権等に関する事項」(施規123条1号および2号)

対応

①有価証券報告書について、「新株予約権等の状況」、「ライツプランの内容」及び「ストックオプション制度の内容」の項目を統合し、かつ、ストックオプションについては、財務諸表注記への集約を可能とする開示府令の改正を行う。

②有価証券報告書における記載時点について、事業年度末から変更がない場合には、その旨を記載することにより提出日の前月末の記載を省略可能とする開示府令の改正を行う。

③開示府令の様式の表を撤廃し、一覧表形式で記載することを可能とする開示府令の改正を行う。

④ストックオプションを保有している役員の区分について、事業報告における区分に基づいて記載することで共通の記載が可能であることを、制度所管官庁が妥当性を確認したひな型において明確化する。

 改正後の開示府令に従って、また、事業報告の区分に基づいて記載する有価証券報告書の「ストックオプション制度の内容」等を、事業報告の「新株予約権等に関する事項」とすることが考えられます。
 なお、開示府令の改正は、平成30年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書から適用されます。

(9)会社役員の「地位及び担当」ならびに「重要な兼職の状況」(施規121条2号および8号)

対応

①事業報告の「地位」と有価証券報告書の「役名」については、共通の記載が可能であること、事業報告の「担当」に記載すべき内容については、有価証券報告書の「職名」又は「略歴」の欄に記載することが可能であること及び事業報告の「重要な兼職の状況」に記載すべき内容については、有価証券報告書の「略歴」の欄に記載することが可能であることを明確化する法令解釈の公表を行う。
※「略歴」の欄に記載する場合には、過去の主要略歴と併せて記載することとなる。

②兼職の範囲について、有価証券報告書においても特段の限定はなく、事業報告と共通の記載が可能であることを明確化する法令解釈の公表を行う。

 ①、②の対応を踏まえて記載した有価証券報告書の「役員の状況」を事業報告の役員一覧表とすることが考えられます。

(10)社外役員の重要な兼職に関する事項(施規124条1項1号および2号)

対応

①事業報告における提出会社と「当該他の法人等」との「関係」と、有価証券報告書における 「人的関係、資本的関係又は取引関係その他の利害関係」について、実務上、共通の記載が可能であることを明確化する法令解釈の公表を行う。

※なお、有価証券報告書では、社外役員(個人)と提出会社の関係も記載の対象となる点については従来と同様である。

 有価証券報告書の「人的関係、資本的関係又は取引関係その他の利害関係」を事業報告の社外役員の重要な兼職に関する事項とすることが考えられます。

(11)「社外取締役を置くことが相当でない理由」(施規124条2項)

対応

①「社外取締役を置くことが相当でない理由」と「社外取締役(中略)を選任していない場合には、その旨及びそれに代わる社内体制及び当該社内体制を採用する理由」について、共通の記載が可能であることを明確化する法令解釈の公表を行う。

 有価証券報告書と事業報告で同じ「理由」を記載することが考えられます。

(12)「会社役員の報酬等」(施規121条4号から6号までならびに124条1項5号および6号)

対応

①取締役及び監査役の報酬総額について、有価証券報告書の記載を基礎として、社外役員の報酬総額を社外取締役の報酬総額と社外監査役の報酬総額とに区分して記載することで、共通の記載が可能であることを明確化する法令解釈の公表を行う。

※事業報告及び有価証券報告書において共通の記載を行う場合は、社外取締役を除く取締役、社外取締役、社外監査役を除く監査役、社外監査役それぞれの報酬総額に区分して記載することが想定されている。

※「報酬等の額又はその算定方法の決定に関する方針」を定めていない場合に、有価証券報告書では、その旨を記載することが求められる。

 有価証券報告書の「役員の報酬等」を事業報告の「会社役員の報酬等」とすることが考えられます。 また、指名委員会等設置会社でない会社において、有価証券報告書に記載する「報酬等の額又はその算定方法の決定に関する方針」を事業報告にも任意に記載することが考えられます。

(13)「各会計監査人の報酬等の額」および「株式会社及びその子会社が支払うべき金銭その他の財産 上の利益の合計額」(施規126条2号および8号イ)

対応

①事業報告についても、有価証券報告書の様式に従って、株式会社及び連結子会社の別に、監査証明業務及び非監査業務それぞれに区分して報酬額を記載することで、共通の記載が可能であることを明確化する法令解釈の公表を行う。

 有価証券報告書の「監査公認会計士等に対する報酬の内容」を事業報告の当事業年度に係る会計監査人の報酬等の額の内容とすることが考えられます(「提出会社」の表記は「当社」等に変更)。なお、事業報告では会計監査人の報酬等について監査役会等が同意した理由(施規126条2号)を記載しなくてはなりませんので、この点には留意を要します。

問い合わせ先

三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部 会社法務コンサルティング室
03-3212-1211(代表)
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