コーポレートガバナンス・コード(改訂案)について

コーポレート・M&A

※本記事は、三菱UFJ信託銀行が発行している「証券代行ニュース No.150」の「特集」の内容を元に編集したものです。

 

 平成30年3月26日、金融庁のフォローアップ会議が「コーポレートガバナンス・コードの改訂と投資家と企業の対話ガイドラインの策定について」と題する提言を取りまとめ、公表しています。

 以下では、コーポレートガバナンス・コード(以下「コード」という)の改訂案(以下「コード改訂案」という)を新旧対照表形式でご紹介するとともに、「投資家と企業の対話ガイドライン(案)」(以下「ガイドライン案」という)との関係等について若干のコメントを添えることとします。

原則1-4の改訂

(太字は主な改訂部分。以下も同じ)

現行コード コード改訂案
【原則1-4. いわゆる政策保有株式】
 上場会社がいわゆる政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有に関する方針を開示すべきである。また、毎年、取締役会で主要な政策保有についてそのリターンとリスクなどを踏まえた中長期的な経済合理性や将来の見通しを検証し、これを反映した保有のねらい・合理性について具体的な説明を行うべきである。


 上場会社は、政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するための基準を策定・開示すべきである。
【原則1-4. 政策保有株式】
 上場会社が政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有株式の縮減に関する方針・考え方など、政策保有に関する方針を開示すべきである。また、毎年、取締役会で、個別の政策保有株式について、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証するとともに、そうした検証の内容について開示すべきである。
 上場会社は、政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するための具体的な基準を策定・開示し、その基準に沿った対応を行うべきである。

<コメント>
 ガイドライン案4-1、4-2を踏まえ、「政策保有に関する方針」に「政策保有株式の縮減に関する方針・考え方など」が含まれることや、取締役会での検証は個別銘柄ごとに行うべきであることが示されています。また、取締役会での検証内容について開示すべきとしています。

補充原則1-4①、1-4②の新設

1-4① 上場会社は、自社の株式を政策保有株式として保有している会社(政策保有株主)からその株式の売却等の意向が示された場合には、取引の縮減を示唆することなどにより、売却等を妨げるべきではない。


1-4② 上場会社は、政策保有株主との間で、取引の経済合理性を十分に検証しないまま取引を継続するなど、会社や株主共同の利益を害するような取引を行うべきではない。

<コメント>
 ガイドライン案4-3、4-4の内容をコードに反映するものです。

原則2-6の新設

【原則2-6 企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮】
 上場会社は、企業年金の積立金の運用が、従業員の安定的な資産形成に加えて自らの財政状態にも影響を与えることを踏まえ、企業年金が運用(運用機関に対するモニタリングなどのスチュワードシップ活動を含む)の専門性を高めてアセットオーナーとして期待される機能を発揮できるよう、運用に当たる適切な資質を持った人材の計画的な登用・配置などの人事面や運営面における取組みを行うとともに、そうした取組みの内容を開示すべきである。その際、上場会社は、企業年金の受益者と会社との間に生じ得る利益相反が適切に管理されるようにすべきである。

<コメント>
 ガイドライン案5-1の内容をコードに反映するものです。

原則3-1の改訂

現行コード コード改訂案
【原則3-1. 情報開示の充実】
(記載省略)

(iv)取締役会が経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行うに当たっての方針と手続


(v)取締役会が上記(iv)を踏まえて経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行う際の、個々の選任・指名についての説明

【原則3-1. 情報開示の充実】
(記載省略)

(iv)取締役会が経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行うに当たっての方針と手続


(v)取締役会が上記(iv)を踏まえて経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行う際の、個々の選任・指名についての説明

<コメント>
 ガイドライン案3-4を踏まえ、経営陣幹部等の解任のプロセス等の開示を盛り込むものです。

補充原則3-1①の改訂

現行コード コード改訂案

3-1① 上記の情報の開示に当たっても、取締役会は、ひな型的な記述や具体性を欠く記述を避け、利用者にとって付加価値の高い記載となるようにすべきである。

3-1① 上記の情報の開示(法令に基づく開示を含む)に当たって、取締役会は、ひな型的な記述や具体性を欠く記述を避け、利用者にとって付加価値の高い記載となるようにすべきである。

<コメント>
 法令に基づく開示も、利用者にとって付加価値の高い記載とすべきことを明示するものです。

補充原則4-1③の改訂

現行コード コード改訂案

4-1③ 取締役会は、会社の目指すところ(経営理念等)や具体的な経営戦略を踏まえ、 最高経営責任者等の後継者の計画(プランニング)について適切に監督を行うべきである。

4-1③ 取締役会は、会社の目指すところ(経営理念等)や具体的な経営戦略を踏まえ、 最高経営責任(CEO)等の後継者計画(プランニング)の策定・運用に主体的に関与するとともに、後継者候補の育成が十分な時間と資源をかけて計画的に行われていくよう、適切に監督を行うべきである。

<コメント>
 ガイドライン案3-3の内容をコードに反映するものです。

補充原則4-2①の改訂

現行コード コード改訂案

4-2① 経営陣の報酬、持続的な成長に向けた健全なインセンティブの一つとして機 能するよう、中長期的な業績と連動する報酬の割合や、現金報酬と自社株報酬との割合を適切に設定すべきである。

4-2① 取締役会は、経営陣の報酬が持続的な成長に向けた健全なインセンティブとして機能するよう、客観性・透明性ある手続に従い、報酬制度を設計し、具体的な報酬額を決定すべきである。その際、中長期的な業績と連動する報酬の割合や、現金報酬と自社株報酬との割合を適切に設定すべきである。

<コメント>
 ガイドライン案3-5で言及する客観性・透明性ある報酬決定プロセスについて、これをコードに反映するとともに、本補充原則を実践する主体が取締役会であることを明示するものです。

補充原則4-3②、4-3③の新設

4-3② 取締役会は、CEOの選解任は、会社における最も重要な戦略的意思決定であることを踏まえ、客観性・適時性・透明性ある手続に従い、十分な時間と資源をかけて、資質を備えたCEOを選任すべきである。


4-3③ 取締役会は、会社の業績等の適切な評価を踏まえ、CEOがその機能を十分発揮していないと認められる場合に、CEOを解任するための客観性・適時性・透明性ある手続を確立すべきである。

※現行の補充原則4-3②は補充原則4-3④に繰り下げ。

<コメント>
 ガイドライン案3-2、3-4の内容をコードに反映するものです。

原則4-8の改訂

現行コード コード改訂案
【原則4-8. 独立社外取締役の有効な活用】
(記載省略)
 また、業種・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境等を総合的に勘案して、自主的な判断により、少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社は、上記にかかわらず、そのための取組み方針を開示すべきである。
【原則4-8. 独立社外取締役の有効な活用】
(記載省略)
 また、業種・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境等を総合的に勘案して、少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社は、上記にかかわらず、十分な人数の独立社外取締役を選任すべきである。

<コメント>
 ガイドライン案3-8で言及する十分な人数の独立社外取締役の選任について、これをコードに反映するものです。

補充原則4-10①の改訂

現行コード コード改訂案

4-10① 上場会社が監査役会設置会社または監査等委員会設置会社であって、独立社外取締役が取締役会の過半数に達していない場合には、経営陣幹部・取締役の指名・報酬などに係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化するため、例えば、取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする任意の諮問委員会 を設置することなどにより、指名・報酬などの特に重要な事項に関する検討に当たり独立社外取締役の適切な関与・助言を得るべきである。

4-10① 上場会社が監査役会設置会社または監査等委員会設置会社であって、独立社外取締役が取締役会の過半数に達していない場合には、経営陣幹部・取締役の指名・報酬などに係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化するため、取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする任意の指名委員会・報酬委員会など、独立した諮問委員会を設置することにより、指名・報酬などの特に重要な事項に関する検討に当たり独立社外取締役の適切な関与・助言を得るべきである。

<コメント>
 ガイドライン案3-2、3-5で言及する指名委員会・報酬委員会の活用について、これをコードに反映するものです。
なお、「例えば」と「など」が削除され、より直接的に独立した諮問委員会の設置が要請されることになります。

原則4-11の改訂

現行コード コード改訂案
【原則4-11. 取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件】
 取締役会は、その役割・責務を実効的に果たすための知識・経験・能力を全体としてバランス良く備え、多様性と適正規模を両立させる形で構成されるべきである。また、監査役には、財務・会計に関する適切な知見を有している者が1名以上 選任されるべきである。
(以下省略)
【原則4-11. 取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件】
 取締役会は、その役割・責務を実効的に果たすための知識・経験・能力を全体としてバランス良く備え、ジェンダーや国際性の面を含む多様性と適正規模を両立させる形で構成されるべきである。また、監査役には、適切な経験・能力及び必要な財務・会計・法務に関する知識を有する者が選任されるべきであり、特に、財務・会計に関する十分な知見を有している者が1名以上選任されるべきである。
(以下省略)

<コメント>
 ガイドライン案3-6、3-10で言及する取締役のジェンダーや国際性の面を含む多様性、財務・ 会計・法務に関する知識を有する監査役の選任について、これをコードに反映するものです。

原則5-2の改訂

現行コード コード改訂案
【原則5-2. 経営戦略や経営計画の策定・公表】
 経営戦略や経営計画の策定・公表に当たっては、収益計画や資本政策の基本的な方針を示すとともに、収益力・資本効率等に関する目標を提示し、その実現のために、経営資源の配分等に関し具体的に何を実行するのかについて、株主に分かりやすい言葉・論理で明確に説明を行うべきである。
【原則5-2. 経営戦略や経営計画の策定・公表】
 経営戦略や経営計画の策定・公表に当たっては、自社の資本コストを的確に把握した上で、収益計画や資本政策の基本的な方針を示すとともに、収益力・資本効率等に関する目標を提示し、その実現のために、事業ポートフォリオの見直しや、設備投資・研究開発投資・人材投資等を含む経営資源の配分等に関し具体的に何を実行するのかについて、株主に分かりやすい言葉・論理で明確に説明を行うべきである。

<コメント>
 資本コストの的確な把握(ガイドライン案1-2)、事業ポートフォリオの見直し(ガイドライン案1-3)、 設備投資・研究開発投資・人材投資等の戦略的・計画的な実行(ガイドライン案2-1)について、これをコードに反映するものです。

東京証券取引所は、平成30年3月30日にコーポレートガバナンス・コードの改訂に係るパブリック・コメントを開始しました。
問い合わせ先

三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部 会社法務コンサルティング室
03-3212-1211(代表)
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