会社と株主の理想的な関係を探るサイボウズの新しい株主総会

コーポレート・M&A

サイボウズ株式会社は3月30日、第21回定時株主総会を開催した。今年の同社の株主総会では、総会前にシンポジウムを開催し、会社のあり方について株主を含めた来場者と語り合う機会が設けられた。このシンポジウム開催の意図について、同社の取締役副社長 兼 グローバル事業本部長を務める山田 理氏は次のように語った。

「これまで、コストがかかる割に雰囲気が悪く、盛り上がらない株主総会が嫌いだった。僕らには理想があり、その理想に向けてご協力いただいている中に株主の皆さまがいるのに、株主総会では配当がいくらかという話に尽きて、決める側と要求する側にわかれた労使交渉のような場になってしまっていた。それならば、僕らのあるべき理想に共感いただいて、それに対して意見をいただいた方が、僕らの理想とする会社に一歩でも近づけるのではないか。僕らだけが思う理想の会社が正しいわけではないので、シンポジウムに有識者も招いて色々意見を出した上で、株主総会で議論し、その上で役員を選任してもらいたいと思い、今回このような会を企画した」(山田氏)

サイボウズ 取締役副社長 兼 グローバル事業本部長 山田 理氏(写真右)

サイボウズ 取締役副社長 兼 グローバル事業本部長 山田 理氏(写真右)、写真はシンポジウムの様子

今回の株主総会では、取締役3名の任期満了にあたり、選任が議案事項としてあげられていた。シンポジウムだけでなく、株主総会には株主以外も傍聴することができ、同社らしいオープンな総会が開催された。

キャンプファイヤーのような経営

シンポジウムは2部構成となっており、第1部ではサイボウズ 代表取締役社長の青野 慶久氏と堀江 貴文氏をパネラーに、BUSINESS INSIDER JAPAN 統括編集長の浜田 敬子氏がモデレーターとしてディスカッションが行われた。第2部では引き続き浜田氏をモデレーターに、サイボウズの山田氏、株式会社ほぼ日 最高財務責任者(CFO)の篠田 真貴子氏、株式会社サイバーエージェント 取締役 人事統括の曽山 哲人氏がパネラーとして登場。各パネラーの目線による会社に対する考えが披露された。

企業の中には明文化の有無に関わらず、様々な制度や決まりごとがあるだろう。近年は長時間労働の是正のために「ノー残業デー」を設定する企業や、政府が提唱した「プレミアムフライデー」も記憶に新しい。しかし、浜田氏は企業の中における制度や決まりごとは「少ない方がいいのでは」と疑問を投じた。これに対し曽山氏は、「制度ではなく風土が重要」とし、次のように説明した。

「制度を入れれば何とかなるわけではない。他社がうまくいっているからといって、自社がうまくいくわけでもない。これから企業間では従業員の「才能開花競争」が生まれるだろう。「うちの会社に入ると、あんなに普通だった大学生がすごくなる」といったように、従業員の才能をどれくらい開花させられるのかが企業の採用力につながり、業績につながっていくようになるのではないか。またもう1つ、「信頼構築競争」も生まれるだろう。現代は、リーダーのマネジメント力がバレる時代。何かあればすぐにネットで拡散されてしまう。逆を返せば、真っ当なリーダーには光が当たり、信頼関係をつくれる人材同士が集まってより良い環境をつくっていくことができる。これらの競争をしていく中で、ほとんどの会社はついてこられなくなるだろう」(曽山氏)

風土の重要性について篠田氏も賛同し、ほぼ日の風土について次のように語った。

「ほぼ日では、「事実が先、ルールが後」をポリシーにしている。ベースにある考え方は、人を操作的に動かすのではなく、フラットな関係でお互いをリスペクトし、手をつなげられるところからつないで一緒に歩みを進めていくということ。チームのメンバーには得意・不得意があって、役割分担はあるけれど、意味のないヒエラルキーは存在しない。リーダーも偉いのではなく、そういう役割だということ」(篠田氏)

過去、離職率が28%もあったというサイボウズも、まさしく風土づくりによって現在の働き方改革を推進する企業としての立場がある。

「昔は、なかなかうちのような企業には人が来ないような状況だった。なんとか採用して会社で活躍してもらっても、その人が抜けたらまた採用して教育して信頼関係を構築して…となる。大企業だったら、誰かを異動させたり、簡単に人を採用することができるかもしれないけれど、うちは一人やめられるだけでも切実な状況だった。それなら、産休・育休で6年くらいは働けなくても、戻ってこないよりは戻ってきてくれた方がいいし、副業できないからとやめられるくらいなら、半分のリソースでもいいからいてくれた方がいいし、家で働いてくれるのであればそれでもいい」(山田氏)

「囲い込み政策だけれども、囲い込み方がめちゃゆるい」と笑いながら説明する山田氏は、サイボウズが目指すのは「キャンプファイヤー経営」だと話す。

「真ん中で楽しく歌って踊って火を大きくしていくキャンプファイヤー。おもしろそうだと思ったら人は集まってくるし、ただ見ていたい人でも、その場にはいる。飽きたら抜けていくけど、寂しくなったらまた寄ってくる。今の大企業は囲いをつくって、その中の人を「社員」、そうでない人を「社員でない人」と区別している。そうして、囲みの中では真ん中になるほど忠誠心が求められ、「そこへ近づけ、近づけ」と言ってくる。社員にはやめられないようにするために、囲みの塀は高くしようとしていく。そうすると、いつの間にか肝心の火が消えてしまっている。火がなくなると、楽しそうな火がついているところを買いに行く。そうして領地は広がっていくけれど、囲みの中の人間は何をやっているのかわからなくなってしまう。一体感もなく、輪になる火もない始末。何が言いたいかというと、距離感が違っていたって、テクノロジーやツールを使えば、塀を高くして囲い込まなくたってやっていけるということ」(山田氏)

写真左から、BUSINESS INSIDER JAPAN 浜田 敬子氏、サイバーエージェント 曽山 哲人氏、株式会社ほぼ日 篠田 真貴子氏、サイボウズ 山田 理氏、サイボウズ 青野 慶久氏

写真左から、BUSINESS INSIDER JAPAN 浜田 敬子氏、サイバーエージェント 曽山 哲人氏、
株式会社ほぼ日 篠田 真貴子氏、サイボウズ 山田 理氏、サイボウズ 青野 慶久氏

株主からも好評だったシンポジウム

シンポジウム終了後、すぐに株主総会が開催された。サイボウズは従業員数が2017年12月時点で連結586名の企業だが、社外取締役はおらず、社内取締役が3名、監査役が3名とコンパクトな経営体制となっている。社外取締役を選任しないことが相当な理由について、青野氏は「社外取締役を置く必要がないのと、置かなくても大丈夫だから」と説明した。

「サイボウズでは、できるだけスピーディーに現場を巻き込んで議論し、意思決定していくスタイルをとっている。毎週1回、本部長会議と事業戦略会議を開催しているが、この2つの会議で会社のほぼすべての意思決定を行っている。この会議には参加したい社員がいれば傍聴できるし、議事録は即日公開するようにしている。それくらい密に意思決定を行っているから、月に1回、社外取締役の方に来てもらっても、力を発揮いただくこともなく、今のところメリットがあるように感じない。また、現体制でガバナンスも効いている状態だ。サイボウズでは、議事録などはすべてデジタルで公開し、監査役も即時にアクセスできる環境となっている。3名の監査役はそれぞれ専門性もあり、いい人選ができていると思っている」(青野氏)

サイボウズ 代表取締役社長 青野 慶久氏

サイボウズ 代表取締役社長 青野 慶久氏

株主からの質疑では、質疑以外にシンポジウムの感想が述べられることもあり、好評だったことが伺えた。質疑内容については、同社が2010年に正式リリースした「サイボウズLive」のサービス終了に関するものが多く、その他には同社サービス「kintone」を利用したチームワークの作り方や障害者雇用、自治体との連携、子会社であるサイボウズアメリカでの理念の浸透具合など、同社の理念である「チームワークあふれる社会を創る」を感じさせるような内容が多くあがった。

(取材、構成:BUSINESS LAWYERS編集部)

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