機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果

コーポレート・M&A

※本記事は、三菱UFJ信託銀行が発行している「証券代行ニュース No.151」の「特集」の内容を元に編集したものです。


 平成30年4月4日、年金積立金管理運用独立行政法人(以下、GPIF)は、「第3回機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」(以下、アンケート結果)を公表しました。これは、GPIFの運用受託機関のスチュワードシップ活動に関する評価と「目的を持った建設的な対話」(エンゲージメント)の実態および昨年5月のスチュワードシップ・コード改訂以降の変化の把握を目的として上場企業向けに実施されたものです(対象:東証1部上場企業2,052社、回答社数619社)。
 GPIFの運用受託機関等によるエンゲージメント活動がどのように事業会社側に受け止められているかが明らかになっていますので、アンケート結果の概要をご紹介します。

機関投資家の現状・変化について

<質問内容1>
 機関投資家全般について、昨年5月のスチュワードシップ・コード改訂以降のIRミーティング等において変化はありましたか?
<回答結果>
 40.4%が「好ましい変化がある」と回答しています(「全体または多数の機関投資家の好ましい変化を感じる」と「一部の機関投資家についてではあるが、好ましい変化がある」の合算)。
 一方で、「大きな変化は感じられない」との回答も45.6%ありました。

 アンケートの対象企業が異なるため単純な比較はできませんが、昨年5月公表の第2回アンケート結果(注)の同趣旨の質問では、「好ましい変化がある」が43.4%、「変化無し」が42.3%でしたので、大きな相違は見られません。
(注)JPX日経インデックス400構成銘柄企業を対象に実施。回答社数272社

<質問内容2>
 IRミーティングに向けた機関投資家の事前準備
<回答結果>

IRミーティングに向けた機関投資家の事前準備に関する回答結果


<①を選択した企業の主なコメント>
  • 面談前に、直近決算資料に加えて統合レポート(アニュアルレポート)などを読んできている投資家が多くなった。
  • CEO、CFOとの面談に際し、機関投資家が事前に質問状を準備し、質問だけでなく、事業戦略への提言も多くなった。
  • 非財務情報(ESG)に特化したミーティングではしっかりした事前準備が窺える。
  • 当社の競業他社(海外企業を含む)の状況も把握されていて、相当調査をされている事例が多い。

 第2回と第3回のアンケート結果を比較すると大きな差異は見られませんが、「以前より事前準備に時間をかけて(おり、ミーティングのレベルが上がって)いる」という回答がわずかながら増加しています。コメントからも機関投資家がミーティングを行うに際して対象企業の調査、分析を丁寧に行っていることが伺えます。

<質問内容3>
 コーポレート・ガバナンス報告書の機関投資家による活用は進んでいますか?
<回答結果>

コーポレート・ガバナンス報告書の機関投資家による活用は進んでいますか?の回答結果


<①を選択した企業の主なコメント>
  • 機関投資家側で、報告書をプリントアウトし準備した上で、記載内容についての質問を受ける機会が多くなったように感じる。
  • 機関投資家によって、関心度や既読状況の差が激しい。
  • ESG担当のアナリスト・議決権行使担当者は、同報告書の内容を勉強されていると思うが、そのような方々は事業計画・経営計画・業績への理解が浅く、コミュニケーションの内容が分断されてしまっている。
  • 取締役会の実効性評価等、コーポレート・ガバナンス報告書の記載をもとに、より深いディスカッションができた。

 機関投資家によるコーポレート・ガバナンス報告書の活用が、「進んでいる」という回答は昨年に比べ減少しています。コメントからは、企業が機関投資家にコーポレート・ガバナンス報告書を更に活用することを求めていることが推測できます。

<質問内容4>
  • GPIFは運用受託機関に対して、議決権行使結果の個別投資先企業及び議案ごとの公表を求めていますが、自社の行使結果の確認をされましたか?
  • 議決権行使結果の個別投資先企業及び議案ごとの公表により、株主総会後の対応について何か変化がありましたか?
<回答結果>
  • 80.9%が「機関投資家の行使結果を確認した」と回答しています(「大半の機関投資家の行使結果を確認した」と「主要(大株主)機関投資家の行使結果を確認した」の合算)。
  • 株主総会後の企業側の対応について、72.2%が「変化はなかった」と回答した一方、「自社内で変化があった」とする回答も 18.9%ありました。具体的な自社内での変化に関する主なコメントは以下のとおりです。

<主なコメント>
  • 反対票の要因が明確になることで、改善に向けた社内の意識を高めることができた。
  • 反対行使した投資家のうち、議決権行使基準を参照しても理由が不明な投資家と対話した。
  • 機関投資家に直接訪問して今回の行使結果について内容を伺うなどの能動的な動きが生じた。
  • 各機関投資家毎のスタンスの違いを検証した。
  • エンゲージメント活動へのトップの理解が増した。

企業のIRおよびESG活動について

<質問内容5>
 IRにおいて、自社から情報発信をする際、以下の非財務情報に関する用語の使用状況をお教えください。
<回答結果>

IRにおいて、自社から情報発信をする際、以下の非財務情報に関する用語の使用状況の回答結果

 「よく使う」、「時々使う」の合算で見ると、「CSR」、「ESG」、「サステナビリティ」の順で多く使用されています。一方で、「CSV」(Creating Shared Value:共通価値の創造)は、「よく使う」、「時々使う」の合算でも2割未満にとどまっています。

<質問内容6>
 貴社のESG/CSR活動の目的をお聞かせください。
<回答結果>

貴社のESG/CSR活動の目的の回答結果

 全体の回答結果では、ESGやCSRの目的としては「①企業価値向上+リスク低減効果」を挙げる企業が半数強ですが、企業規模によって回答は大きく異なります。GPIFは、大企業が比較的「企業価値向上」を重視(ESG寄り)する一方、小型株に分類される企業は「社会貢献」(CSR寄り)を挙げる企業も多いと分析しています。


 上記の他にも、アンケート結果では多くの質問とその回答結果が紹介されています。GPIFが昨年7月に選定した日本株の3つのESG指数(FTSE Blossom Japan Index、MSCI ジャパン ESG セレクト・リーダーズ指数、MSCI日本株女性活躍指数)やGPIFのスチュワードシップ活動全般に対する評価やその理由を問うもの等が取り上げられています。詳細は以下をご覧ください。

 参照:「第3回 機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」の公表について

問い合わせ先

三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部 会社法務コンサルティング室
03-3212-1211(代表)

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