DMMが合同会社へ組織変更 経営の効率化を図る戦略とは

コーポレート・M&A
小川 直樹弁護士

株式会社DMM.comが、2018年5月25日付で「合同会社DMM.com」に社名を変更することが発表された(「 DMM.com、合同会社化及び吸収合併に関するお知らせ」(2018年4月24日))。
合同会社への組織変更によるメリットはどこにあるのか。企業が経営の効率化や運営の合理化を図る目的で、合同会社を選択するという手段をとるのはどうなのか。日比谷パーク法律事務所の小川直樹弁護士に聞いた。

合同会社とは

合同会社とは何ですか。

合同会社とは、2005年制定の会社法により創設された会社形態であり、その社員(持分保有者)の全部が有限責任社員である会社をいいます(会社法576条4項)。

株式会社との違いを教えてください。

いずれも構成員(株主・持分保有者)の有限責任性が確保された会社ですが、合同会社は、民法上の組合に近い特徴を有する会社です。株式会社との会社法上の違いは、主に以下のとおりです。

  • 合同会社は強行法規で規律される部分が少なく、定款自治の範囲が広い。
  • 合同会社には、株主総会という必要的常置機関がなく、取締役の選任も不要。
  • 合同会社の業務執行権・代表権は社員(法人も可)により行使される(会社法590条、599条)。
  • 合同会社は、出資比率にかかわらずに損益分配の割合を決することができる(会社法622条)。
  • 合同会社には、会計監査人設置義務・決算公告義務・現物出資に関する検査役選任義務がない。
  • 合同会社の定款の変更には社員全員の同意が必要(会社法637条)。
  • 合同会社の持分譲渡には原則として社員全員の同意が必要(会社法585条1項)。
合同会社 株式会社
構成員の責任 有限責任 有限責任
所有と経営の関係 所有と経営の原則的一致
  • 原則、社員(法人も可)自らが経営
所有と経営の分離
  • 株主総会・取締役の設置強制
  • 取締役・執行役が業務執行
定款自治の範囲 広い (比較すると)狭い
利益分配 出資比率にかかわらずに分配可能 原則として出資比率による
会計監査人 不要 (会社の種類により)必要
決算公告 不要 必要
現物出資に関する検査役選任 不要 必要
定款変更 原則として社員全員の一致が必要 原則として出席した株主の議決権の3分の2以上
持分譲渡 原則として社員全員の同意が必要 原則として自由(譲渡制限可)

この他、合同会社は、株式会社と比較して設立に要する費用が安いことや、米国税制上事業損益等のパススルーが認められる点等も、相違点としてあげられます1

合同会社化によるメリットは、どこにあるのでしょうか。

主に以下のメリットがあります2

  1. 柔軟・迅速な意思決定が可能になること
  2. 大会社規制が及ばないこと
  3. 設立・維持コストが安価であること
  4. 米国税制上事業損益等のパススルーがあること
  5. 会社更生法が適用されないこと
  6. 出資比率によらない利益分配が可能であること

今回のテーマとの関係では、①~③が重要かと思われます。要するに、会社の意思決定にあたり、逐一株主総会や取締役会を開催する手間が省け、また、決算公告・会計監査に要する費用をカットすることができるということです。会計監査を要しないことから、財務諸表の自由度が高まるなどという指摘もあるようです。

逆に、合同会社にすることによって、デメリットはありますか。

デメリットは、以下の点等があげられます3

  1. 金融商品取引所への上場ができないために資金調達手法が限られること
  2. 役員・従業員等に対する効果的なインセンティブ・プランの設計が難しいこと
  3. 事業上必要な許認可の取得との関係で、株式会社(場合によって取締役会設置会社)であることが要件となる場合もあること
  4. 自治体等の公共団体との取引に際して株式会社であることが要求される場合もあること
  5. 取引相手方の信頼を得られやすいという点も含めて事業展開がしやすい、耳慣れた株式会社が好ましいと考える人が多いこと

特に③および④は、合同会社を選ぶ余地がなくなる、という意味で致命的なデメリットとなり得ます。

合同会社への組織変更をするためには、どのような手続きをすることになりますか。

株式会社が合同会社に組織変更するためには、まず、組織変更計画の作成が必要です(会社法743条)。その上で、組織変更計画備置開始日から効力発生日までの間、組織変更計画の内容等を記載した書面を本店に備え置き、株主や債権者から当該書面の閲覧等の請求があった際に、それに応じる必要があります(会社法775条1項、3項)。そして、効力発生日の前日までに、総株主の同意を得なければなりません(会社法776条1項)。また、債権者保護の観点から、債権者異議手続を経る必要もあります(会社法779条)。以上の手続きを経て、株式会社は、効力発生日に合同会社となります(会社法745条1項)。

株式会社から合同会社への組織変更手続

具体的にどんな企業で、合同会社が用いられていますか。

多くは「法人成り」の設立費用等を節約したい小規模企業により利用されているようですが、有名どころとしては、Apple Japan合同会社、アマゾンジャパン合同会社、合同会社西友などの外資系企業の日本子会社があげられます。そのほか、IHG・ANA・ホテルズグループジャパン合同会社など、合弁事業に合同会社が使われる例もあります。

DMMが合同会社化を選んだワケ

DMMの今回の事例では、なぜ合同会社を選んだのでしょうか。

DMM.comグループ会長の亀山敬司氏は、組織変更に関し、「上場しないなら、合同会社のほうが自由でカッコいいらしいので、これでいきますw」とツイートしています。この説明は、まさに前述の合同会社のメリット①「柔軟・迅速な意思決定が可能になること」を踏まえたものといえます。


また、少なくともDMM.com社(「DMM社」)については、事業上も、資金調達の観点からも、株式会社である必然性がなかったという点も指摘できます。

ちなみに、DMM.comグループが合同会社を利用するのは、今回が初めてではありません。2017年12月13日に、会社分割によるゲーム事業の承継先として、合同会社DMM GAMESを設立していました4。合同会社を利用するメリットは確認済みであったともいえるでしょう。

もっとも、下記の点には、留意が必要でしょう。

①登記情報によれば、DMM社は取締役会も監査役も設置しない一人株主の会社であり、元々意思決定に時間がかかる会社ではなかったともいえること
②DMM.comグループが近時設立した法人の中には株式会社もあること(2017年12月26日には、成人向け事業の承継先として株式会社デジタルコマースを設立5、同月27日には、株式会社DMM GAMESホールディングスを設立)
③合同会社は上場が認められないとしても、DMM社の親会社である株式会社DGホールディングス(「DGホールディングス」)はなお株式会社であること

DMM社に限った話ではありませんが、非上場会社の情報開示には限界があり、その真意は必ずしも明らかではありません。

今回の組織変更における企業行動は、どう評価できるでしょうか。

DMM.comグループ全体の経営の効率化の一貫であるように思われます。今後は、DMM社の親会社であるDGホールディングスがよりダイレクトに経営参加することにより、DMM社、ひいてはDMM.comグループ全体の経営が迅速かつ効率的に行われていくのではないでしょうか。

DMM社ウェブサイトの求人ページでも、2018年5月6日時点で、「DMM.comグループ全体の財務、法務、総務等、統括管理をおこなう“株式会社DGホールディングス”にてグループ全体の法務担当を募集致します」と説明されているところです。さらに、DMM.comグループは、2017年5月1日付でグループ各社の管理部門業務をDGホールディングスに移管したようであり、その企業行動は、経営の効率化という視点でみれば、概ね整合的であるといえるように思われます6

企業が合同会社化を検討する際の留意点

今後、会社の設立時に合同会社を選択する、または、既存の会社が合同会社に変更する際に、どのような点に気をつけたらよいでしょうか。

合同会社を選択肢として検討する際には、その会社の位置づけ・目的等に照らして、前述のメリット・デメリットを検討することが必要であることは言うまでもありません(特に、デメリットの③「事業上必要な許認可の取得との関係で、株式会社(場合によって取締役会設置会社)であることが要件となる場合もあること」、④「自治体等の公共団体との取引に際して株式会社であることが要求される場合もあること」については法律上の問題のみならず、実務上の問題が生じないかを十分に調査検討する必要があるでしょう)。

そのほか、親会社(本件の場合はDGホールディングス)が子会社(本件の場合はDMM社)を合同会社とする際には、その有限責任性に事実上の限界がある点に留意すべきです。すなわち、親会社が子会社の経営をコントロールするためには、親会社が自ら法人として社員または業務執行社員となり業務執行権を確保する必要がありますが(会社法590条、591条1項)、それゆえに親会社は、子会社の債権者からその業務執行に関する善管注意義務違反を理由とする損害賠償責任を追及され得ることになるわけです。このリスクを考慮して、一定規模の日本企業が子会社を設立する場合、合同会社を選択することはほとんどないのではないかとの指摘もなされていたところでした7

異論もあるようですが、この問題は、親会社である株式会社と合同会社との間に株式会社を挟み、中間の株式会社が業務執行社員となることで解決できるとする見解があります。

上述の合同会社DMM GAMESの業務執行社員は、設立後まもなく、DGホールディングスから株式会社DMM GAMESホールディングスに変更されていますが、それはこの点を意識してのことかもしれません。DMM社についても、将来的に、DGホールディングスではない株式会社が業務執行社員に就任することもあり得るところです。


  1. 関口智弘ほか「合同会社や有限責任事業組合の実務上の利用例と問題点」法律時報80巻11号19頁参照 ↩︎

  2. 新家寛・桑田智昭「合同会社の活用に際しての留意点」資料版商事法務344号・30~32頁参照 ↩︎

  3. 江頭憲治郎ほか「<座談会>合同会社等の実態と課題〔上〕」商事法務1944号8~9頁、前掲注2参照 ↩︎

  4. ゲーム事業の分社化に伴い、合同会社DMM GAMESを設立」(2018年2月1日) ↩︎

  5. 成人向け事業を分社化 株式会社デジタルコマースを設立」(2018年2月21日) ↩︎

  6. DMM.com Base お知らせ」(2018年5月6日閲覧) ↩︎

  7. 前掲注1参照 ↩︎

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