「価値協創ガイダンスロゴマーク」の正しい使い方

コーポレート・M&A
片桐 さつき

 3月決算企業の多くが株主総会の準備で慌ただしくなる6月。経済産業省が「価値協創ガイダンス」を2017年5月に公開してから、早1年が経過することになる。「伊藤レポート2.0」が2017年10月に、「価値協創ガイダンス解説資料」が2018年3月に続々と公開されているものの、残念ながら広く普及しているとは言い難い。

 その中で、経済産業省はこのガイダンスを投資家との共通言語としてより多くの企業に使ってもらおうと、ロゴマークを2018年5月に公表した。ロゴマークの使用によって、ガイダンスを用いた対話や企業評価・投資判断等が行いやすくなる、としている。このロゴマークが公開されてすぐに「当社はこのマークを統合報告書に掲載できますか?」という企業からの問い合わせが当研究室にいくつも入った。答えは決まっており「率先して掲載して下さい、そしてガイダンスや統合報告書を使って是非対話をして下さい」である。

 改めて記載するが、価値協創ガイダンスとは「企業と投資家を繋ぐ『共通言語』として、対話や情報開示のあり方の拠り所となる枠組み」だ。そしてこの目的は「企業と投資家による自主的・自発的な取り組みを促進すること」である。「価値協創ガイダンス解説資料」には企業側の利用方法として、自社の開示の棚卸や、自社の経営そのものの実態を含めた社内での対話で活用できる、と記載がある。企業にとっては規模の大小に関わらず、価値協創ガイダンスを活用することで、自社の企業価値を向上させる何らかの契機になるはずである。ロゴマークを掲載するという事は、こうした事を理解している、そして社内外問わず対話を促進していく、というコミットメントにもなるであろう。

 大切なのは単純にロゴマークだけが公開されたのではない、ということだ。2017年12月に発足した「統合報告・ESG対話フォーラム」のこれまでの議論を整理し、今後のアクションを記した報告資料も同時に公開している。報告資料では1.「目的を持った対話」を理解する/2.共通言語を活用する/3.社内でも対話する/4.投資家が企業評価手法を示す、と「開示と対話の促進のために必要な4つの視点」が記載され、さらに4つの視点を実現するための後押しとして、「4つのアクション」を実行していくと記載されている。このアクションの中で、積極的に開示を行う企業の支援として「価値協創ガイダンスロゴマークの利用開始」が挙げられており、また、企業と投資家の相互理解を促進するアクションとして「アクティブ・ファンドマネージャー宣言」が公開されている。それだけではない。アクションの4つ目には「中小型株における開示・対話のあり方の検討・情報発信」と記載されている。今までは大企業が率先して新たな取り組みに挑戦してきた。しかし、いつまでも大企業だけが取り組んでいるのでは、日本の資本市場は強化されない。全ての企業がこうした新たな情報開示に挑戦し、社内外との対話を促進しなければ、政府が目指す資本市場改革は実現しないだろう。

 価値協創ガイダンスのロゴマークは、こうした背景を背負い、意義を持って登場しているものだ。このロゴマークの正しい使い方は、「掲載し、その後、対話をする」事ではないだろうか。だからと言って、対話の準備が出来ない、と尻込みをしていては何も始まらない。対話の「質」を気にするのであれば、対話をしながら「質」を上げる事も可能だからだ。何よりも一歩前に踏み出すことができれば、それもロゴマークの正しい使い方となるであろう。梅雨が明けて夏本番を迎える頃、価値協創ガイダンスのロゴマークが掲載された統合報告書と多く出会える事を期待したい。

本記事は、株式会社ディスクロージャー&IR総合研究所が発行している「研究員コラム」の内容を転載したものです。
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