中小企業の事業承継・M&Aにおけるスクイーズ・アウトの最新動向

コーポレート・M&A

はじめに

 中小企業の事業承継やM&Aにおいては、分散した株式を集約させたり、少数株主から株式を取得したりする必要がある場合が少なくありません。少数株主からの株式の強制取得手続(スクイーズ・アウト)については、昨年5月に施行された平成26年改正会社法において新たな制度の導入や既存の制度の見直しがなされており、これに伴い、実務の取扱いにも変化がみられます。

 そこで、本稿においては、会社法改正を踏まえた中小企業における分散株式の集約や少数株主からの株式取得の進め方のポイントを概説します。

分散株式、少数株主対策の必要性

 中小企業においては、様々な理由により株式が分散してしまっているケースが珍しくありません。
 株式が分散する(分散している)原因としては、①創業者の相続により相続人に株式が移転する、②旧商法下で発起人が7名必要であった時期に設立された会社において、経営者以外に株式(名義株を含む)を保有する株主が残っている、③従業員や取引先に株式を持たせている、などがあります。

 このような分散株式の集約、少数株主からの株式取得が必要とされる理由としては、以下のようなものが考えられます。

  • 事業承継、M&Aにより会社の100%支配権を移転したい
  • 支配権を強化して会社の意思決定を迅速化したい
  • 安定的経営の支障となる対立的な株主を排除したい
  • 連結納税、グループ法人課税などのタックス・メリットを享受したい

分散株式、少数株主対策の手順

 分散株式の集約、少数株主からの株式取得の方法としては、大きく分けると、①任意の買取りと②スクイーズ・アウトキャッシュ・アウト)の2つの方法があります。
 スクイーズ・アウトキャッシュ・アウト)とは、会社の支配株主が、他の少数株主の有する株式の全部を、その少数株主の個別の承諾を得ることなく、現金を対価として強制的に取得し、少数株主を会社から締め出すことをいいます。

 実務上は、いきなりスクイーズ・アウトを行うのではなく、まずは①任意買取りの交渉を行い、それでも買い取ることができない場合に②スクイーズ・アウトを行う、という手順で手続を進めていくのが一般的です。

株式の任意買取りの進め方

 株式の任意買取りを進めるにあたっての主な検討事項は、以下のとおりです。

株式の任意買取りの進め方

スクイーズ・アウトの進め方

スクイーズ・アウトの手法

 平成26年の会社法改正(施行は平成27年5月1日)後のスクイーズ・アウトの手法としては、実務上は、基本的に「特別支配株主の株式等売渡請求制度」および「株式併合スキーム」が利用されています。

特別支配株主の株式等売渡請求制度

 「特別支配株主の株式等売渡請求制度」は、会社法改正により新たに導入されたもので、自ら単独でまたは自らの100%子会社等と併せて対象会社の総株主の議決権の90%以上を有する株主(特別支配株主)が対象会社の承認を得ることにより対象会社の他の株主全員に対し保有株式全部の売渡しを請求できるという制度です(【図1】参照)。

 この制度の最大の特徴は、対象会社の承認手続として株主総会決議が不要であるという点にあります。対象会社の承認は、取締役会設置会社の場合には取締役会決議、取締役会非設置会社の場合には取締役の過半数による決定で足ります。このため、「特別支配株主の株式等売渡請求制度」を利用できる場合には、短期間(最短20日間程度)でのスクイーズ・アウトが可能となります。

【図1】特別支配株主の株式等売渡請求の手順

特別支配株主の株式等売渡請求の手順

① 特別支配株主は、対象会社に対して一定の事項(株式等売渡請求をする旨、売渡株主に対する対価の内容、取得日等)を通知する。
② 対象会社の承認(取締役会設置会社の場合は取締役会の承認)を受ける。
③ 対象会社は、②の承認をした場合、取得日の20日前までに、売渡株主等に対し、一定の事項(承認をした旨、特別支配株主の氏名・名称・住所、売渡株主に対する対価の内容、取得日等)を通知または公告する(これにより、特別支配株主から売渡株主に対し株式等売渡請求がされたものとみなされる)。
④ 対象会社は、③の通知または公告のいずれか早い日から取得日後6か月(非公開会社の場合は1年)を経過する日まで、事前開示書面を本店に備え置く。
⑤ 特別支配株主は、取得日に売渡株式の全部を取得する。
⑥ 対象会社は、取得日後遅滞なく、取得日後6か月(非公開会社の場合は1年)を経過する日まで、事後開示書面を本店に備え置く。



株式併合スキーム

 「株式併合スキーム」は、株式併合後の少数株主の保有株式数が1株未満となるような併合割合での株式併合を用いて少数株主の保有株式を強制取得する(結果的に少数株主は現金を受け取って保有株式を失う)というスキームです(【図2】参照)。
 この「株式併合スキーム」においては、前述の「特別支配株主の株式等売渡請求制度」とは異なり、株式併合に際して株主総会の特別決議が必要となります。

 会社法改正前においては、「株式併合スキーム」は、少数株主の保護制度(情報開示制度、株式買取請求制度等)が不十分で、株主総会決議の取消リスクがあることからほとんど利用されていませんでした。しかし、会社法改正により新たに情報開示制度、反対株主の株式買取請求制度、差止請求制度等が整備され、法的安定性が担保されたため、法改正後は、従前広く用いられていた「全部取得条項付種類株式スキーム」に代わって「株式併合スキーム」が用いられるようになっています。

 なお、会社法改正後も「全部取得条項付種類株式スキーム」は引き続き利用可能ですが、通常の株主総会のほか種類株主総会の決議も必要となるなど手続が複雑で技巧的なスキームであり、現実に利用されるケースはかなり限られると考えられますので、本稿では「全部取得条項付種類株式スキーム」についての説明は割愛します。

【図2】株式併合スキームの手順(下記の図は4株を1株とする株式併合の例)

株式併合スキームの手順

① 株主総会特別決議により、株式併合後も株主として残存させる予定の株主以外の株主(少数株主)の保有株式数が1株未満の端数となるような併合割合での株式併合を行う。
② 対象会社は端数株式については裁判所の許可を得て(通常は対象会社または大株主に)売却することができるため、少数株主に対しては、裁判所の許可を得た上で、現金(端数株式の売却代金)を交付する。これにより、少数株主は対象会社から締め出される。

両制度をどのように使い分けるか

 上記の「特別支配株主の株式等売渡請求制度」と「株式併合スキーム」をどのように使い分けるかですが、基本的には以下のとおりとなります。

 これらのスクイーズ・アウトの手続を実行するには、最低でも議決権割合3分の2以上が必要となりますので、支配株主と支配株主に同調する株主の議決権割合の合計が3分の2未満の場合には、株式の任意買取り、支配株主に対する第三者割当増資、または対象会社による特定の株主からの自己株式取得により、議決権割合を3分の2以上に増やす必要があります。
 もっとも、大部分の中小企業が該当すると思われる非公開会社(株式譲渡制限会社)においては、第三者割当増資や特定の株主からの自己株式取得を行うには株主総会の特別決議が必要となるため、議決権割合3分の2以上を確保するには、これらの方法をとることはできず、株式の任意買取りによることになります。

スクイーズ・アウトを進めるにあたっての留意点

 スクイーズ・アウトに対しては、会社法上、少数株主に以下のような対抗手段が与えられています。

少数株主への対抗手段

※1 ①株式売渡請求の法令違反、②対象会社の通知・事前開示違反、③対価が著しく不当の場合
※2 法令・定款違反の場合(対価不当は含まれないと解されている)
※3 ①招集手続・決議方法の法令・定款違反または著しい不公正、②決議内容の定款違反、③特別利害関係人の議決権行使による著しく不当な決議(対価が著しく不当な場合等)の場合



 したがって、 スクイーズ・アウトを進めるにあたっては、当然ながら、会社法上の各手続(株主総会決議、取締役会決議、株主宛通知・公告、事前・事後開示書面備置等)を適法に行うことが大前提となります。
 また、対価が不相当な場合には、反対株主から価格決定請求、差止請求、無効の訴え、株主総会決議取消の訴えがなされる可能性がありますので、独立した第三者算定機関から株価算定書を取得する等、買取価額の適正性を確保することが非常に重要となります。

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