英国コーポレートガバナンス・コード改訂の概要 2018年6月に改訂された日本のコーポレートガバナンス・コードとの比較

コーポレート・M&A

※本記事は、三菱UFJ信託銀行が発行している「証券代行ニュース No.155」の「特集」の内容を元に編集したものです。


 Financial Reporting Council(英国財務報告評議会)は、7月16日に英国コーポレートガバナンス・コード(以下、英国コードといいます)の改訂版を公表しました。改訂版英国コードは、来年1月1日以降に開始する会計年度から適用されることとなります。
 本年6月1日に改訂された日本のコーポレートガバナンス・コード(以下、日本版コードといいます)との比較の観点を中心にご紹介します。

(※)本特集における英国コードに関する記述はすべて三菱UFJ信託銀行による仮訳に基づくため、詳細についてはFinancial Reporting Council「A UK Corporate Governance Code that is fit for the future」をご参照ください。

改訂の概要

 改訂前の英国コードは、5つのSectionから構成され、さらにそれぞれのSectionは「Main Principle」、「Supporting Principles」、「Code Provisions」の3段階で構成されていました。一方、改訂版英国コードは5つの章から構成されており、各章はさらにそれぞれ「Principles」、「Provisions」の2段階で構成されています。また、改訂の前後で英国コードを構成する項目数は、大幅に減少しています。

コーポレートガバナンス・コードの構成と項目数

現行英国コード 改訂版英国コード 【ご参考】日本版コード
構成 Section A:リーダーシップ

1. 取締役会のリーダーシップと会社の目的

第1章 株主の権利・平等性の確保
Section B:有効性 2. 責任の分担

第2章 株主以外のステークホルダーとの適切な協働

Section C:説明責任 3. 構成、サクセッション、評価

第3章 適切な情報開示と透明性の確保

Section D:報酬 4. 監査、リスク、内部統制 第4章 取締役会等の責務
Section E:株主との関係 5. 報酬 第5章 株主との対話
項目数
  • Section:5項目
  • Main Principle:18項目
  • Supporting Principles:12項目
  • Code Provisions:55項目
  • 章:5項目
  • Principles:18項目
  • Provisions:41項目
  • 章:5項目
  • 基本原則:5項目
  • 原則:31項目
  • 補充原則:42項目

各章の構成

各章の構成

改訂版英国コードの内容

主な改訂点

従業員とステークホルダー

  • 新しい「Provisions」を規定
  • 取締役会に従業員とのエンゲージメントを強化し、その考え方や意見の理解に努めることを求める

企業文化

  • 取締役会に戦略と企業価値を整合させる企業文化の創造を求める
  • 取締役会に、長期間にわたってどのくらい企業価値が維持できているかを評価することを求める

サクセッションと多様性

  • 取締役会が、能力、経験を有し、建設的な課題認識を持つ適切なメンバーで構成され、その多様性を推進するために、改訂版英国コードでは取締役会の刷新とサクセッション計画の着手の必要性が強調されている
  • 取締役会議長が9年以上務めている場合、取締役会は当該期間の長さを考慮すべき
  • サクセッション計画と取締役会の多様性確立に関して、指名委員会の役割を強化
  • 指名委員会は、取締役会の外部評価機関と取締役会や個々の取締役との関係を詳細にレポートすべき

報酬

  • 報酬委員会は、取締役の報酬を決定するに際して、従業員の報酬や関連するポリシーを考慮すべき

個別項目の内容

(1)株主総会議案に相当数の反対票が投じられた場合の対応

 現行英国コードでは、「株主総会議案に相当数の反対票が投じられた場合は、反対票に至った背景を理解するために企業がどのような行動をとるか、株主総会の結果を発表する際に説明すべき」とされています(Code Provisions E.2.2.)。相当数の反対票について、これまで具体的な比率は言及されていませんでしたが、改訂版英国コードでは「20%」という比率が明記されました(Provisions 4.)。

内容
現行英国コード
  • 株主総会議案に相当数の反対票が投じられた場合は、反対票に至った背景を理解するために企業がどのような行動をとるか、株主総会の結果を発表する際に説明すべき
改訂版英国コード
  • 20%以上の反対票が株主総会議案に投じられた場合は、反対票に至った背景を理解するために企業がどのような行動をとるか、株主総会の結果を発表する際に説明すべき
  • 株主総会後遅くとも6か月以内に株主から得られた見解や企業がとった行動を公表すべき
  • 取締役会は、アニュアルレポートで取締役会の意思決定や行動等にどのような影響があったかを明らかにすべき
【ご参考】日本版コード
  • 取締役会は、相当数の反対票が投じられた会社提案議案があったと認めるときは、反対の理由や反対票が多くなった原因の分析を行い、株主との対話等の要否について検討を行うべき【補充原則 1-1①】

(2)取締役会の実効性評価

 現行英国コードでは、「FTSE350 1 に該当する企業は、取締役会の実効性評価を少なくとも3年ごとに外部機関により行うべき」とされています(Code Provisions B.6.2.)。改訂版英国コードでは、「取締役会の実効性評価を毎年実施すること」に加えて、対象企業を限定せずに「定期的に外部機関による取締役会の実効性評価を実施することを検討すべき」としています(Provisions21.)。

内容
現行英国コード
  • FTSE350に該当する企業は、取締役会の実効性評価を少なくとも3年ごとに外部機関により行うべき
  • アニュアルレポートで当該外部機関を明らかにすべき(対象:FTSE350に該当する企業)
改訂版英国コード
  • 取締役会の実効性評価を毎年実施すべき(対象企業の限定なし
  • 定期的に外部機関による取締役会の実効性評価を実施することを検討すべき(対象企業の限定なし
  • FTSE350に該当する企業は、取締役会の実効性評価を少なくとも3年ごとに外部機関により行うべき
  • アニュアルレポートで当該外部機関を明らかにすべき(対象:FTSE350に該当する企業)
【ご参考】日本版コード
  • 取締役会は、毎年取締役会全体の実効性について分析・評価を行い、その結果の概要を開示すべき【補充原則4-11③】

(3)取締役会等のダイバーシティ

 現行英国コードにおいて、取締役会等のダイバーシティに言及している箇所がいくつかあります。例えば、「取締役候補者の人選や指名に際しては、ジェンダーの観点を含めた取締役会の多様性の利点を考慮して行うべき」とされています(B.2:Appointments to the Board Supporting Principles)。改訂版英国コードでは、「取締役の指名に際しては、ジェンダー、社会的・民族的バックグラウンド、個々人の能力等の観点において多様性を推進すべき」としています(Principles J.)。

内容
現行英国コード
  • 取締役候補者の人選や指名に際しては、ジェンダーの観点を含めた取締役会の多様性の利点を考慮して行うべき
改訂版英国コード
  • 取締役の指名やサクセッション計画ともに、ジェンダー、社会的・民族的バックグラウンド、個々人の能力等の観点において多様性を推進すべき
【ご参考】日本版コード
  • 取締役会は、知識・経験・能力を全体としてバランス良く備え、ジェンダーや国際性の面を含む多様性と適正規模を両立させる形で構成されるべき【原則4-11】
問い合わせ先

三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部 会社法務コンサルティング室
03-3212-1211(代表)

  1. ロンドン証券取引所に上場する主要350社で構成される株価指数 ↩︎

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