株主総会での質疑打ち切りのタイミング

コーポレート・M&A

 当社の総会は一般株主の出席が多く、毎年、議題とはあまり関連性のない質問が延々と続けられ、途切れることがありません。このような場合、質疑打ち切りを行ってもよいでしょうか。また、どのようなタイミングで質疑を打ち切るのがよいのでしょうか。

 一般的平均的な株主からみて、合理的に報告事項の内容が理解でき、決議事項について賛否が決定できるだけの質疑応答が行われたときには、質疑を打ち切り、採決に入ってもかまわないと解されています。
 もちろん、審議の内容によっても異なりますが、一つの目安としては、特殊な事情がある場合を除き、開始から約2時間、質問株主数にして10名程度の質問に答えていれば、一般的には審議を尽くしたと考えられる状況になるものと考えられます。

解説

説明義務と質疑打ち切り

 取締役等は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、原則として当該事項について必要な説明をしなければならないとされています(説明義務、会社法314条)。

 参考:「株主総会での取締役や監査役等の説明義務の範囲は

 しかし、多数の株主が出席する総会では、質問を希望する株主が後を絶たず、すべての株主の質問に対して説明を行うことが現実的に不可能な場合もあります。
 そこで、会社としては、適当なタイミングで質疑打ち切りを行い、議案を採決し、総会を終了させることが必要になります。

質疑打ち切りに関する裁判例

 質疑打ち切りの適法性について争われた事案は多く、議長が不当に質疑打ち切りを行ったために質問を希望した株主が質問できず、その結果、行うべき説明が役員からなされなかった場合には、説明義務違反の問題が生じる可能性があると解されています。

 また、議長の議事整理権会社法315条1項)の著しく不公正な行使の問題と考えられる可能性もあります。また、質疑打ち切りについて議場に諮り、多数の賛成を得たとしても、やはり十分な質疑を尽くしていなければ質疑を打ち切ることはできないと解されています。

 裁判例では、一般的平均的な株主からみて、合理的に報告事項の内容が理解でき、決議事項について賛否が決定できるだけの質疑応答が行われたときには、質疑を打ち切り、採決に入ってもかまわないと解されています(例えば中部電力事件(名古屋地裁平成5年9月30日判決・資料版商事116号187頁)参照)。

質疑打ち切りの判断において考慮すべき要素

 もっとも、裁判例などにいう「一般的平均的な株主」が、報告事項を合理的に理解したか、議案について賛否を決定できる状態に至ったか等について明確な基準があるわけではなく、結局、事案ごとによる判断になります。

 したがって、実際には、審議を十分に尽くしたか、質疑打ち切りができる状況に至ったかを総合的に検討していく必要があります。具体的な考慮要素としては、以下のような事項となります。

  1. その時点までの質疑応答の長さ
  2. その時点までに発言した株主の数およびその質問の数
  3. その時点での質問が、どの程度総会の目的事項に関連しているか
  4. その時点において質問を希望する株主の数

 2015年株主総会白書(商事法務第2085号93頁)によれば、総会の所要時間について、最も多いのは「60分~90分」の会社で19.6%、120分を超える長時間の会社は3.8%となっています。

 近年の株主総会においては、IR型株主総会の観点から、発言希望者がいる限り質疑応答を続けるというスタンスをとっている例も少なくありません。株主総会の質疑応答の時間が1〜2時間以内に収まっているのであれば、多少議事が長めになったとしても、質問を全て受け付けることで、株主に対する説明を果たそうとしていることを印象づけるという効果がある場合もあります。
 各社の状況に応じて、質疑打ち切りの可能性や、その目安を事前に検討しておくことが望ましいでしょう。

質疑打ち切りの方法

 質疑打ち切りの方法としては、議長が「あと○名まで質疑を受け付けることとし、その後、採決に入ります。」と議場に対して予告したうえで、議長の宣言により、質疑を打ち切る例が多く、この方法が議場の納得も得られやすいと思われます。

 質疑を受け付ける残り人数は、議場の状況次第ですが、一般的には数名(多くても3名)程度で行っているようです。
 ただし、予告によって、かえって議場の混乱が生じるおそれがあるような総会の場合には、予告なく質疑を打ち切ることも可能であり、議長の質疑打ち切りの判断が合理的である限り、この方法でも問題ないでしょう。
 質疑打ち切りを行うか否かはあくまで議長の判断に委ねられていると解されますが、念のため議場に諮っておく方が問題は少ないでしょう。

現実の対応

 特殊な事情のある場合でない限り、総会が2時間を経過して継続しているようなときには、議場においても、そろそろ議案の採決に移って欲しいという雰囲気が自ずと生じてくる場合が多いと考えられます(午前10時から開催した総会の場合、ちょうどお昼頃になり、キリがいい頃合いになります)。

 また、質疑応答が長くなれば、途中で、帰り始める株主も目立ち始めるようになります。質問株主数の観点でも、1回に何問を受け付けるかによっても異なりますが、10名(20問程度)を超えてくると、だんだんと議案に関係のない質問が続くようになりがちです。

 したがって、一つの目安としては、通常の平時の総会では、開始から約2時間が経過し、質問株主数にして10名程度の質問に答えていれば、一般的には審議を尽くしたと考えられる状況になるものと考えられます。

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