株主総会議事録に株主からの質問はどれだけ記載するべきか

コーポレート・M&A

 株主総会議事録を作成するに当たり、株主からの質問およびそれに対する回答はどの程度記載すればよいでしょうか。また、以下の点を教えて下さい。

① 株主から、議事に関係のない質問や発言がなされた場合の記載方法

② 複数の株主から同じような質問が繰り返された場合の記載方法

③ 株主から、議場での発言後、「この発言はきちんと議事録に残しておいてほしい」と求められた場合の対応

④ 質問をした株主や回答をした役員の名前についての記載の要否

 株主からの質問およびそれに対する回答は、議事の経過が明らかになる程度に適宜要約して記載することができます。①~④については以下のとおりです。

① 議事に関係のない質問や発言については記載する必要はありません。

② 同じような質問については、1つにまとめるなど、適宜要約して記載することができます。

③ 必ずしも株主の要求に従う必要はなく、その発言内容が法定記載事項に該当するか否かで、議事録の記載の要否を判断すれば足ります。

④ 発言者の名前は必ずしも記載する必要はありませんが、議事経過の明確化や、説明義務の履行を証拠化するという観点から、あえて記載するという考え方もあります。

解説

株主総会議事録の記載事項

 会社法上、株主総会議事録に必ず記載しなければならない「法定記載事項」は、以下のとおりと定められています(会社法318条1項、会社法施行規則72条3項各号)。

  1. 株主総会が開催された日時および場所
  2. 株主総会の議事の経過の要領およびその結果
  3. 監査役等による意見または発言の内容の概要
  4. 出席役員等の氏名または名称
  5. 議長が存するときは、議長の氏名
  6. 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

 株主からの質問や発言は、一般的に、上記の法定記載事項のうち、2の「株主総会の議事の経過」に該当することが考えられますので、議事録には、その「要領」を記載する必要があります
 もっとも、株主からの質問や発言にも様々なものがあり、それが「株主総会の議事」に全く関係しないものであれば、そもそも「議事の経過」には当たらず、必ずしも議事録への記載は要しないことになります。
 また、「議事の経過」に当たる場合であっても、法律上は、議事の経過の「要領」を記載すればよいとされていますので、議事録には株主の発言内容を一言一句そのまま記載する必要はなく、議事の経過が明らかになる程度に適宜要約して記載することが認められています

議事に関係のない質問や発言がなされた場合(質問①)

 上記のとおり、株主からの質問や発言については、「議事の経過」に当たる場合についてのみ議事録に記載する必要があり、また、記載する場合も、その「要領」の記載で足ります。そのため、株主の発言内容のすべてを記載する必要はありません。したがって、 株主から議事に関係のない質問や発言があった場合には、そもそも「議事の経過」には当たらないので、そのやり取りを含めて一切記載しないということで構いません

 なお、株主による不規則発言についても同様であり、議事に関係しない内容であれば、逐一議事録に記載する必要はありません。ただし、不規則発言を繰り返した株主に対し、議長が退場を命じた場合には、「議事の経過」としてその旨を議事録に記載する必要があると考えます。

同じような質問が繰り返された場合(質問②)

 「議事の経過」については、必ずしもすべての発言内容をそのまま再現して記載する必要はなく、その「要領」を記載すれば足ります。したがって、複数の株主から同じような質問が何度も繰り返されたような場合には、まとめて1つの質問とするなど、適宜要約して記載すれば足ります

株主から議事録に記載するように要求があった場合(質問③)

 株主から「この発言については議事録に残しておいてほしい」との要求があった場合でも、必ずしもそれに従う必要はなく、原則として、その発言内容が法定記載事項(「議事の経過」)に該当するか否かで、議事録への記載の要否を判断すれば足ります

 すなわち、株主の発言内容が「議事の経過」に当たる場合には、株主からの要求があろうとなかろうと、その「要領」を議事録に記載する必要があります。

 これに対し、株主の発言内容が議事に関係のない内容であった場合には、たとえ株主が議事録への記載を要求したとしても、その要求に従う法的な義務はなく、議事録に記載する必要はありません。
 もっとも、こうした株主の発言に関連して、たとえば説明義務をめぐる決議取消訴訟が提起されるなどの問題に発展する可能性がある場合には、紛争防止の観点から、あえて議事録に記載しておくという対応も考えられるでしょう。

発言した株主や役員の名前について(質問④)

 法律上、議事録への記載が求められる事項は、あくまで「議事の経過の要領」ですので、議事の経過が分かる程度の記載がなされればよく、必ずしも発言者の名前まで記載することは必要でないと解されます。もっとも、各社の任意の判断として、議事経過の記録の必要性から、質問者を特定するためにあえて株主の名前を記載する場合もありますし、名前の代わりに出席票番号を記載する場合もあります。
 また、質問に対して回答を行った役員については、株主総会における説明義務や善管注意義務の履行を証拠化するという観点から、あえて名前を明記しておくという考え方もあります。

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