株主の持株比率を大きく変える新株発行は可能か

コーポレート・M&A

 当社は、上場会社であり、過去にA社と資本業務提携を行い、A社が筆頭株主となりましたが、今では関係が悪化しています。そのような中、新たにB社との提携の話が出てきたため、B社に対して新株を発行し、筆頭株主になってもらい、A社の持株比率を下げようと考えています。その際の留意点を教えて下さい。

株主の持株比率を大きく変える新株発行

 支配権の異動を伴う株式発行等を行う場合、株主総会決議が必要となる場合がありますので、A社に反対されても可決できるか検討が必要です。
 また、株主総会決議が必要ない場合でも、支配権維持目的など不当な目的が株式発行等の主要な目的であると認定されると、株式発行等が差し止められることになります。そこで、どのような場合に株主総会決議が必要となり、どのような場合に差止めの対象となるかを理解しておく必要があります。

解説

募集株式の発行等の原則

 定款上、株式の譲渡制限が付されていない会社(上場会社に限りません)においては、募集株式の発行または処分(以下「株式発行等」といいます)は、有利発行に該当する場合を除き、取締役会決議により行うことができるのが原則です(会社法199条2項、201条1項)。

 しかし、大規模な株式発行等を行う場合、以下の制約に留意する必要があります。

  1. 著しく不公正な方法により行われる場合」は、差止めの対象となる(会社法210条2号)。
  2. 支配権の異動を伴う株式発行で、総議決権の10分の1以上の議決権を有する株主が反対通知を行った場合には、原則として、株主総会決議が必要となる(会社法206条の2第1項、4項)。
  3. 上場会社の場合、希釈化率が25%以上となるとき、または、支配株主が異動することになるときは、原則として、<独立社外者の意見または株主総会決議が必要>となる(東京証券取引所有価証券上場規程432条)。

「著しく不公正な方法により行われる場合」とは

 株式発行等が「著しく不公正な方法により行われる場合」、不公正発行として差止めの対象となります(会社法210条2号)。
 どのような場合に、不公正発行に該当するかについては、裁判例上、「主要目的ルール」と呼ばれる基準により判断されています。
 株式発行等は、資金調達の目的や業務提携の目的などの正当な目的のほか、取締役が自派の株主の議決権比率を上げて自己保身を行う目的でなされる等、種々の目的で行われる場合がありますが、「主要目的ルール」は、このような種々の目的のうち、「不当な目的が他の目的に優越する主要な目的であるときに株式発行等の差止めを認める」というルールです。
 したがって、質問の事例において、不公正発行として株式発行等を差し止められないためには、B社への株式発行の主要な目的が、取締役の自己保身などの不当な目的であると裁判所に認定されないよう留意する必要があります。

不公正発行として株式発行等を差し止められないためには

支配権の異動を伴う株式発行で、総議決権の10分の1以上の議決権を有する株主が反対通知を行った場合

 平成26年の会社法改正によって、総議決権の過半数を有する株式が出現する株式発行等を行う場合、株主総会決議が必要となる場合があることとされました。株主から経営を任されている取締役が、新株発行によって過半数を超える株式を有する株主を新たに作り出すことによって会社の支配を変えるということが無制限で認められるべきではなく、一定の場合は会社の所有者である株主の同意が要求されるべきという考えに基づき、設けられたものです。

 具体的には、株式発行等の引受人がその子会社等と合算して総議決権の過半数を有することとなる場合に、株式発行前の総議決権の10分の1以上の議決権を有する株主が反対通知を行った場合には、「財産の状況が著しく悪化している場合において、…事業の継続のため緊急の必要があるとき」を除き、株主総会決議が必要となることとされました(会社法206条の2第1項、第4項)。
 したがって、質問の事例では、今回の株式発行によってB社が子会社と合算して過半数の議決権を有することとなる場合に、A社を含む10%以上の株主が反対した場合には、緊急の資金調達の必要性がある場合を除き、株主総会決議が必要になります。

支配権の異動を伴う株式発行で、総議決権の10分の1以上の議決権を有する株主が反対通知を行った場合

上場会社で希釈化率が25%以上となるとき、または、支配株主が異動することになるとき

 上場会社の場合、希釈化率が25%以上となる(新たに発行済株式の25%以上の株式を発行する)とき、または支配株主が異動することになるときは、資金繰りが急速に悪化している場合など「緊急性が極めて高い」ときを除き、独立社外者による割当ての必要性および相当性に関する意見書の入手、または株主総会決議が、金融商品取引所の有価証券上場規程に基づき必要となります(東京証券取引所有価証券上場規程432条、東京証券取引所有価証券上場規定施行規則435条の2)。

 したがって、B社に対して発行済株式の25%以上を割り当てる場合(つまり、発行後のB社の保有比率が20%以上となる場合)、または、B社が既存の保有株式と合算して新たに支配株主となる場合やA社が支配株主でなくなる場合等には、緊急の資金調達の必要性がある場合を除き、独立社外者による意見または株主総会決議が必要になります。

上場会社で希釈化率が25%以上となるとき、または、支配株主が異動することになるとき

まとめ

 以上のとおり大規模な株式発行等は、株主総会決議が必要となる場合がありますので、現状の株主構成では否決される可能性があるのであれば、株主総会決議が必要のない形で株式発行等を行う必要があるので、要件の詳細な確認が必要となります。
 また、株主総会決議が必要ない場合であっても、主要目的ルールに照らして、支配権維持目的などの不当な目的が主要な目的であると裁判所に認定されると株式発行が差し止められることになります。
 正当な目的による株式発行等であれば、事前にきちんとした準備、検討がなされているはずであり、逆に、このような準備、検討がなされていない場合、裁判所が、正当な目的による株式発行等ではないのではないかと疑念を抱くおそれもありますので、そのような認定をされないよう、事前の準備、検討の過程を書面化しておくことが望ましいといえます。

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