買収防衛策の概要と導入状況は

コーポレート・M&A

 当社は、上場会社です。これまでオーナーが50%以上の株式を保有していましたが、オーナーが引退し、徐々に持株比率を下げていくことになりました。今後は、敵対的買収のおそれも生じることから、買収防衛策を導入することを検討しています。買収防衛策の概要と他社の導入状況について教えて下さい。

 現在、多くの会社が導入している買収防衛策は、会社が事前にその会社を買収する際のルールを開示し、当該ルールに従わない買収者には、対抗措置を講じるという「事前警告型」と呼ばれるタイプに収斂しています。平成28年7月末までの1年間で新規に買収防衛策を導入した企業は6社あり、同月末において455社が導入しています。

解説

買収防衛策とは?

 買収防衛策に関しては、平成17年5月27日に経済産業省と法務省が「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」(以下「買収防衛指針」といいます)を公表しています。その中で、買収防衛策は、「株式会社が資金調達などの事業目的を主要な目的とせずに新株又は新株予約権の発行を行うこと等により自己に対する買収の実現を困難にする方策のうち、経営者にとって好ましくない者による買収が開始される前に導入されるものをいう」と定義されています。

買収防衛策が遵守すべき原則

 買収防衛指針は、買収防衛策が従うべき3つの原則を以下のとおり定めています。

(1)企業価値・株主共同の利益の確保・向上の原則

 これは、「買収防衛策の導入、発動及び廃止は、企業価値、ひいては、株主共同の利益を確保し、又は向上させる目的をもって行うべきである」とするものです。

(2)事前開示・株主意思の原則

 これは、「買収防衛策は、その導入に際して、目的、内容等が具体的に開示され、かつ、株主の合理的な意思に依拠すべきである」とするものです。

(3)必要性・相当性確保の原則

 これは、「買収防衛策は、買収を防止するために、必要かつ相当なものとすべきである」とするものです。

一般的な買収防衛策の内容

 この3つの原則に従った具体的な買収防衛策として、当初は、信託型と事前警告型という2つのタイプの買収防衛策が導入されましたが、現在は、コスト面などから事前警告型のタイプに収斂しています。
 事前警告型の買収防衛策は、会社が事前にその会社を買収する際のルールを開示し、そのルールに従わない買収者には、対抗措置を講じるというものです。
 ルールの内容について、以下のとおり示します。

(1)情報の提供

 まず、一定の割合(たとえば20%以上など)以上の株式の取得(以下「大規模買付け」といいます)を希望する者(以下「大規模買付者」といいます)は、大規模買付けの目的、大規模買付け後の経営方針、資金の出所など対象会社が求める情報の提供が求められます。

(2)取締役会の検討、第三者委員会での諮問

 そして、情報の提供を受けた対象会社の取締役会は、大規模買付者による大規模買付けが、対象会社の企業価値を毀損するものでなく、大規模買付けを許可できるか等を検討します。この際、取締役会だけでなく、別途、独立社外者により構成される第三者委員会にも諮問が行われる場合が多くなっています。

(3)株主総会

 さらに、株主総会を開催し、大規模買付けの是非について株主の信を問うタイプのものも多く見られます。

 このような手続を経て、対象会社が大規模買付者による大規模買付けが対象会社の企業価値を毀損するものではないと判断できた場合に初めて大規模買付けが可能になります。

(4)対抗措置

 逆に、対象会社の企業価値を毀損するおそれがある等として大規模買付けを不可と判断されたにもかかわらず、大規模買付けを開始した場合、対抗措置が講じられることになります。
 対抗措置の内容としては、大規模買付者だけが行使できない新株予約権を全株主に交付することで、大規模買付者が保有する株式の議決権割合を希薄化するというのが一般的です。

 以下は、買収防衛策のフローの一例です。

買収防衛策のフロー

買収防衛策の導入状況

 買収防衛策の導入、継続は、昨今、外国人投資家が株主総会で反対するケースが多いため、外国人株主の比率が多い会社などで廃止される傾向にあります。
 買収防衛策を導入している企業数は、平成21年7月末において567社でしたが、やや減少傾向にあり、平成28年7月末においては455社が導入しています。
 平成27年7月末までの1年間で新規に買収防衛策を導入した会社は6社あります(茂木美樹=谷野耕司「敵対的買収防衛策の導入状況―2016年6月総会を踏まえて―」(旬刊商事法務、2120号)12頁)。

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