自己株式の取得とは

コーポレート・M&A
高田 翔行弁護士

 自己株式の取得とは、どのようなことを意味するのでしょうか。また、自己株式の取得については、どのような理由から、どのような法的規制が課せられているのでしょうか。

 自己株式の取得とは、株式会社がその株主から自社の株式を有償または無償で取得することを意味します。自己株式の取得が無制限に行われる場合には、資本維持、株主間の平等、会社支配の公正および株式取引の公正が害されてしまうおそれがあるため、会社法は、自己株式の取得について、①取得事由、②取得手続、③取得の財源規制に関する定めを置いています。

解説

自己株式の取得とは

 自己株式の取得とは、株式会社がその株主から自社の株式を取得することを意味します。株主に対して対価を支払って買い取る場合のほか、株主から無償で譲り受ける場合もあります。厳密には、株主から自社の株式を取得することによって、その株式が「自己株式」になるわけですが、便宜的に、株主から自社の株式を取得すること自体が「自己株式の取得」と呼ばれることが一般的です。そのため、以下の説明においても、「自己株式の取得」という表現を用います。

【自己株式の取得】

自己株式の取得

自己株式の取得に対する法的規制

 このような自己株式の取得については、長年にわたって、厳しい規制が加えられていました。そして、現在でも、自己株式の取得を自由に行うことはできず、自己株式を取得するためには、会社法の定めるルールに従う必要があります。

 以下、自己株式の取得に対して規制が課せられている理由について解説します。具体的な規制の内容については、「自己株式を取得する際の留意点」を参照してください。

自己株式の取得の規制理由

 自己株式の取得は、以下のような理由から規制されています。

資本維持の必要性

 1つ目の理由は、資本維持の必要性です。自己株式の取得に際して、株主に対価が支払われる場合、これが無制限に行われると、会社の経済的基盤が失われ、結果として会社に対する債権者が、債権を満足に回収することができないという不利益を被ってしまう可能性が生じます。これは、剰余金の配当が規制されている理由と同じです。

株主間の平等を確保する必要性

 2つ目の理由は、株主間の平等を確保する必要性です。自らの保有する株式を会社に買い取ってもらい、会社に対する投資を回収したいと考えている株主が多数存在している場合に、会社が恣意的に選んだ一部の株主からのみ自己株式を取得すると、株主の間で、投資を回収する機会の不平等が生じます。
 また、一部の株主から高額な価格での自己株式の取得が行われた場合には、会社財産が目減りする結果、それ以外の株主が損をすることになってしまいます。

会社支配の公正を確保する必要性

 3つ目の理由は、会社支配の公正を確保する必要性です。会社は、株主から取得した自己株式について、議決権を行使することはできません。すなわち、自己株式については、議決権が認められていません。その結果、自己株式を取得して、総議決権数を減少させることにより、より少ない株式数で会社を支配することが可能になります。
 会社の取締役にとっては、これを悪用することによって、会社の資金を利用して会社の支配を維持することが可能になってしまいます。そのため、このように会社が不公正な方法によって支配されてしまう事態を防止する必要があります。

株式取引の公正を確保する必要性

 4つ目の理由は、株式取引の公正を確保する必要性です。一般に、上場会社が自己株式を取得した場合、1株あたりの株価は上昇すると言われています。そのため、1株あたりの株価を上昇させることによって、業績が良好であるかのような外見を作り出したりするために、自己株式の取得が利用されるおそれがあります。
 もし、このように実際とは異なる良好な業績の外見が作り出された場合には、誤った外見に基づいた株式取引が行われる結果、株式取引の公正が失われてしまいます。

規制の概要

 以上の理由から、会社法は、自己株式の取得について、①取得事由(どのような場合に取得することができるか)②取得手続(どのような手続を経ることにより取得することができるか)③取得の財源規制(どの程度の金額を対価とする限りにおいて取得することができるか)に関する定めを置いています。
 具体的な内容については、「自己株式を取得する際の留意点」を参照してください。

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