自己株式の取得手続とは

コーポレート・M&A
高田 翔行弁護士

 自己株式の取得は、どのような場合に行うことができるのでしょうか。また、自己株式の取得を行うことができる場合、どのような手続を取る必要があるのでしょうか。

 自己株式を取得することができる場合は、大きく、①株主との合意によらず取得する場合と、②株主との合意により取得する場合の2つに分かれます。株主との合意により取得する場合は、原則として株主総会決議を必要としますが、一定の例外に該当する場合には、株主総会決議を必要とせず、取締役会決議により自己株式の取得を行うことが可能です。

解説

自己株式の取得事由

 会社法は、自己株式を取得することができる場合を列挙しています(会社法155条会社法施行規則27条)。自己株式を取得することができる場合は、大きく、①株主との合意によらず取得する場合と、②株主との合意により取得する場合の2つに分かれます。

 ①株主との合意によらず取得する場合とは、具体的には、取得請求権付株式、取得条項付株式、全部取得条項付種類株式を取得する場合のほか、単元未満株式や所在不明株主の株式を買い取る場合などです。
 また、②株主との合意により取得する場合は、さらに、(a)株主を特定しないで取得する場合と、(b)株主を特定したうえで取得する場合の2つにわかれます。

 以下においては、実務上頻繁に利用され、また手続が複雑である②株主との合意により取得する場合の手続を(a)株主を特定しないで取得する場合と(b)株主を特定したうえで取得する場合に分けて説明します。

自己株式の取得事由

株主を特定しないで取得する場合

取得に関する事項の決定(株主総会の普通決議)

 株主との合意により自己株式を取得するためには、あらかじめ、株主総会の普通決議によって、①取得する株式数②取得と引換えに交付する金銭等の内容およびその総額③取得することができる期間(ただし、1年を超えることはできません)を定める必要があります(会社法156条1項)。

取得価格等の決定

 そして、この株主総会決議に基づいて実際に自己株式を取得するためには、取締役会は、その度に、①取得する株式数②1株の取得と引換えに交付する金銭等の内容および数額(またはその算定方法)③取得と引換えに交付する金銭等の総額④株式譲渡の申込期日を決定したうえで(会社法157条1項、2項)、全株主に譲渡の機会を与えるため、これらの事項を株主に通知または公告しなければなりません(会社法158条)。

譲渡の申込み

 その後、会社は、譲渡を希望する株主から株式数を明示して譲渡の申込みがなされることにより(会社法159条1項)、自己株式を取得することになります。ただし、譲渡の申込数が取締役会において定められた取得する株式数を超えた場合には、各株主が譲渡を申し込んだ株式数に応じた案分比例により、自己株式の取得が行われることになります。

 これが、株式会社が自己株式を取得するための原則的な手続ですが、上場会社は、下記4-2で述べる方法により、この手続によらず、場合によっては取締役会決議のみによって自己株式を取得することが可能です。

株主を特定したうえで取得する場合

株主総会の特別決議

 株主を特定したうえで自己株式を取得するためには、上記「2. 株主を特定しないで取得する場合」の株主総会において、自己株式の取得条件の通知を特定の株主に対してのみ行うこと(すなわち、特定の株主のみから自己株式を取得すること)をあわせて決議する必要があります(会社法160条1項)。

 なお、この株主総会決議は、株主を特定しないで取得する場合とは異なり、特別決議であることが求められ(会社法309条2項2号)、また、当該特定の株主は、この株主総会決議において議決権を行使することができません(会社法160条4項本文)。

売主追加請求権

(1)株主への通知

 このように、株主を特定したうえで取得する場合の手続は、株主を特定しないで取得する場合よりも厳格なものとなっていますが、2つの場合における手続の違いは、以下の売主追加請求権の有無にも表れます。

 すなわち、株主を特定したうえで取得する場合には、会社は、株主総会の開催に先立って、特定の株主に自己をも加えたものを株主総会の議案とすること(すなわち、自己の保有する株式も取得の対象とすること)を請求できることを株主に通知しなければならないものとされています(会社法160条3項)。

(2)売主追加請求権が認められない場合

 この売主追加請求権は、株主が保有する株式の売却の機会を平等に与えられるように配慮するためのものですが、以下の場合には、売主追加請求権は認められません。

  • 上場会社が市場価格を超えない対価で取得する場合
    他の株主は少なくとも特定の株主が得る対価を下回らない価格により市場で売却することが可能であり、不利益を被らないため、売主追加請求権は認められません(会社法161条)。
  • 相続その他一般承継により取得された非公開会社の株式であって、相続人その他一般承継人がいまだ議決権を行使していない株式を取得する場合
    会社の閉鎖性の維持が困難になることを防止するため、売主追加請求権は認められません(会社法162条)。

 さらに、売主追加請求権は、定款により排除することも可能ですが、このような定款の規定を設けるためには、株主全員の同意が必要とされています(会社法164条)。

例外的な取得手続

子会社からの取得

 親会社が子会社のみから自己株式を取得することは、上記「3. 株主を特定したうえで取得する場合」の株主を特定した上での取得に該当します。しかし、子会社は原則として親会社の株式を取得することが禁じられているところ(会社法135条1項)、親会社による自己株式の取得を通じて、子会社による親会社株式の保有の解消を実現しやすくするため、子会社からの自己株式の取得については、手続が簡易化されています。

 具体的には、親会社は、株主総会決議ではなく、取締役会決議によって子会社の有する自己株式を取得することが可能であり(会社法163条前段)、また、株主に対する通知・公告や売主追加請求権に関する規定等は適用されないこととされています(同条後段)。

市場取引・公開買付けによる取得

 上場会社が市場取引または公開買付けにより自己株式を取得する場合、すべての株主がこれに応じて自らの保有する株式を売却する機会を有するため、株主に対する通知・公告や売主追加請求権に関する規定等は適用されません会社法165条1項)。
 また、上場会社においては、定款で定めることにより、株主総会決議ではなく取締役会決議により市場取引または公開買付けにより自己株式を取得することも可能になります(同条2項、3項)。

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