譲渡制限株式の譲渡承認請求等の撤回可能な時期

コーポレート・M&A

 当社は、株式譲渡制限会社であるA社の株式(以下「本件株式」といいます)を保有していますが、資金需要があったため、この株式を第三者に対して売却することとしました。そこで、当社は、A社に対して本件株式の譲渡承認を求める請求を行い、不承認とする場合は、A社またはA社の指定する者が、本件株式を買い取ることを請求したところ、A社から、本件株式の譲渡を不承認とする旨の通知が来ました。現在のところ、A社からは、この通知しか来ていませんが、当社が、本件株式を保有し続けることに方針転換した場合、いつまでであれば、株式の買取りの請求を撤回できるでしょうか。

 A社またはA社から指定された指定買取人が、A社株式の「1株当たりの純資産額」(会社法施行規則25条)に本件株式の数を乗じた額を供託のうえ、当該供託を証する書面を貴社に対して交付し、本件株式を買い取る旨と買い取る株式数が記載された通知を貴社に対して行うまでの間は、貴社は、本件株式の買取りの請求を撤回することができます。

解説

譲渡制限株式の譲渡等承認の手続

 買取りの請求の撤回の期限を解説する前提として、譲渡制限株式の譲渡等承認の手続について簡単に確認しておきます。

  1. 譲渡制限株式を譲渡しようとする場合の譲渡人またはすでに譲渡を受けた譲受人(以下「譲渡等承認請求者」といいます)は、対象会社に対して、譲渡等承認請求を行います会社法136条137条)。譲渡等承認請求を行う場合、譲受人の氏名または名称、譲渡対象となる株式数のほか、譲渡を不承認とする場合には対象会社または対象会社が指定する指定買取人による買取りを求める旨(以下「株式買取請求」といいます)を明らかにして行います(会社法138条)。

  2. 譲渡等承認請求を受けた対象会社は、譲渡等承認請求の日から2週間以内(定款による短縮可)に、まず、株式譲渡を承認するか否かの通知を譲渡等承認請求者に対して行う必要があり、期間内にこの通知をしなかった場合には、株式譲渡を承認したものとみなされます(会社法139条2項、145条1号)。

  3. そのうえで、不承認の通知(以下「不承認通知」といいます)をした場合で、株式買取請求がなされている場合は、①対象会社が株式を買い取る場合は、不承認通知の日から40日以内(定款による短縮可)に、②指定買取人が株式を買い取る場合は、不承認通知の日から10日以内(定款による短縮可)に、それぞれ対象会社または指定買取人から株式を買い取る旨の通知(以下「株式買取通知」といいます)を譲渡等承認請求者に対して行う必要があり、期間内にこの通知をしなかった場合には、株式譲渡を承認したものとみなされます(会社法141条1項、142条1項、145条2号)。

  4. そして、対象会社または指定買取人が株式買取通知をするに際しては、1株あたりの純資産額会社法施行規則25条に株式数を乗じた額を供託したうえで、当該供託を証する書面を譲渡等承認請求者に対して交付する必要があり、当該書面の交付が株式買取通知の期間内になされなかった場合も、株式譲渡は承認したものとみなされます(会社法141条2項、142条2項、145条3号)。

  5. 供託を証する書面の交付を受けた譲渡等承認請求者は、対象会社が株券発行会社である場合は、書面の交付を受けた日から1週間以内に株券を供託したうえで、その旨を、対象会社または指定買取人に通知する必要があり、期間内にこの通知をしなかった場合には、対象会社または指定買取人は、株式の売買契約を解除することができます(会社法141条3項、4項、142条3項、4項)。

  6. 譲渡等承認請求者と対象会社または指定買取人は、株式の売買代金について協議を行い、協議が調わない場合は、株式買取通知の日から20日以内に、裁判所に対して、売買価格の決定の申立てを行うことになり(会社法144条2項)、期間内に申立てが行われない場合は、供託金額である1株あたりの純資産額をもって1株あたりの売買代金とされることになります(会社法144条5項)。

譲渡制限株式の譲渡等承認の手続

譲渡等承認請求の撤回可能な時期

 株式の譲渡等承認請求を行う場合、上記のような流れで手続が進んでいくことになりますが、譲渡等承認請求者と対象会社または指定買取人との間の株式売買契約が成立する時期は、上記3の株式買取通知がなされた時とされています(最高裁平成15年2月27日決定・民集57巻2号202頁、山下友信編「会社法コンメンタール3-株式(1)」(商事法務、2013)404頁〔山本〕)。
 そこで、株式買取通知がなされた後は、すでに売買契約が成立していることから、譲渡承認請求を撤回することができないとされており(会社法139条1項、2項)、その反対解釈として、株式買取通知がなされるまでは、譲渡承認請求を撤回することができるとされています。
 なお、上記4の供託を証する書面の交付が株式買取通知の期間内になされなかった場合、株式買取通知は効力が認められません(前掲・山下編405頁、410頁)。
 そこで、株式買取通知のほか、供託を証する書面が交付されるまでの間は、譲渡等承認請求を撤回することができることになります。

結論

 以上から、ご質問の場合、A社またはA社から指定された指定買取人が、A社株式の「1株当たりの純資産額」(会社法施行規則25条)に本件株式の数を乗じた額を供託のうえ、当該供託を証する書面を貴社に対して交付し、本件株式を買い取る旨と買い取る株式数が記載された通知を貴社に対して行うまでの間は、貴社は、本件株式の買取りの請求を撤回することができます。

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