株主が所在不明、連絡が取れない場合の対応は

コーポレート・M&A
江口 真理恵弁護士

 ある株主に対し、株主名簿記載の住所に宛てて株主総会の招集通知を発送しましたが、宛先不明で会社に返送されてしまいました。その後も、その株主とは連絡が取れず、所在不明の状態が続いています。今後、その株主に対する通知・催告はどのように行えばよいでしょうか。また、所在不明の株主を管理し続けるのもコストがかさむので、株主の地位を失わせる方法がないか教えてください。

 所在不明の株主に対する通知・催告は、実際には到達しなくとも、株主名簿に記載されている住所に宛てて発送すれば足ります。さらに、株主に対する通知・催告が5年以上継続して不到達となった場合(定時株主総会の招集通知を基準にすると、6回連続して返送された場合)は、当該株主に対する通知・催告を省略できます。
 また、会社は、一定の要件を満たす所在不明の株主の株式について、競売または一定の方法による売却を行い、株主の地位を失わせることができます。

解説

所在不明株主に対する通知・催告の宛先

 会社が株主に対してする通知・催告は、株主名簿に記載もしくは記録されている株主の住所または株主が通知した場所もしくは連絡先に宛てて発すれば足り会社法126条1項)、その通知・催告は、通常到達すべきであった時に株主に到達したものとみなされます会社法126条2項)。
 そのため、株主総会の招集通知等の法定の通知・催告であっても、会社が株主名簿の記載または株主の通知に従って発送しているかぎり、実際には株主のもとに届かず、宛先不明で会社に返送されたとしても、有効に通知・催告が行われたものとして扱われます大審院大正8年11月18日判決・民録25輯2165頁)。これは、会社があらかじめ宛先不明で返送されると分かっていながら株主名簿記載の住所に宛てて通知・催告を発送した場合であっても同様です。
 したがって、今後の所在不明株主に対する通知・催告は、株主名簿に記載されている住所に宛てて発送すれば足り、これにより、法定の通知・催告も有効に行うことができます。

所在不明株主に対する通知・催告の省略

 もっとも、宛先不明で返送される蓋然性の高い住所に宛てて通知・催告を送り続けるのは無用な手間と費用がかかりますので、会社が株主に対してする通知・催告が5年以上継続して到達しない場合会社は、その株主に対する通知・催告を省略することができます会社法196条1項)。
 しかし、逆にいえば、不到達期間が5年未満の場合、会社は、宛先不明で返送されることがあらかじめ明らかであっても株主に対する通知・催告を省略できません。したがって、この場合に、所在不明の株主に対する法定の通知・催告に瑕疵を生じさせないためには、結果的には会社に返送されることになるとしても、株主名簿の記載または株主の通知に従って通知・催告を発送する必要があることに留意が必要です。
 不到達期間は、実際に発送された通知・催告が到達しなかった時から起算されると解されるため(山下友信編『会社法コンメンタール4-株式(2)』235頁〔山本爲三郎〕(商事法務、2009))、毎年1回送付する定時株主総会の招集通知を基準にすると、6回連続して到達しなかった場合に、それ以降、当該株主に対する通知・催告の省略が認められます。

所在不明株主の株式の競売等

 会社が会社法196条1項に基づき、所在不明の株主に対する通知・催告を省略できる場合であっても、会社が勝手にその株主を株主名簿から抹消することができないのはもちろん、その株主に対する剰余金の配当等の義務も免除されないため、会社には、所在不明の株主を管理するための費用が生じます。
 そこで、会社は、①会社法196条1項の規定により株主に対する通知・催告を要しない株式であって、かつ、②その株式の株主が継続して5年間剰余金の配当を受領しなかったものについて、株主の承諾を得ることなく、競売または一定の方法による売却を行うことが認められています会社法197条198条)。
 会社が所在不明株主の株式の競売・売却を行うにあたっては、所定事項の公告と当該株式の株主およびその登録株式質権者に対して各別の催告を行うことが必要であり、株主その他の利害関係人が異議を述べないままに3か月以上の異議申述期間が経過した場合にかぎって、当該株式を競売・売却することができます(会社法198条1項)。

 そして、競売ではない売却による場合、その方法は市場価格のある株式か否かによって異なります。具体的には、市場価格のある株式のときは、市場価格として会社法施行規則38条で定める方法により算定される額をもって(会社法197条2項第一文前段)、市場価格のない株式のときは、裁判所の許可を得て競売以外の方法により(会社法197条2項第一文後段)、当該株式を売却することができます。この場合、会社は売却する株式の全部または一部を自ら買い取ることも可能です(会社法197条3項)。なお、市場価格のない株式について、会社が所在不明株主の株式売却許可の申立てを行うためには、取締役全員の同意が必要です(会社法197条2項第二文)。
 会社は、株式を競売・売却した場合、その代金を株主に交付する必要がありますが(会社法197条1項)、株主は所在不明であるため、当該代金を供託することによりその債務を免れることもできます(民法494条)。

おわりに

 以上のとおり、所在不明の株主がいる場合、当該株主に対する通知・催告は、結果的に会社に返送されるとしても、株主名簿に記載された住所に宛てて行うのが原則といえます。
 そのうえで、通知・催告が到達しない期間が継続して5年以上に及ぶときは、所在不明の株主に対する通知・催告の省略や、さらには当該株主の株式の競売等の対応を検討することになります。しかし、これらの対応を実際に行う場合には、後日、株主との間で通知・催告の有無をめぐって紛争が生じる可能性があることから、会社としては、通知・催告の不到達期間が5年以上であることを証明できるよう、会社に返送されてきた返戻封筒を保管する等の措置をとっておくことが望ましいと考えられます。

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