株券不発行制度の採用と会社の対応

コーポレート・M&A
赤木 貴哉弁護士

 当社(非上場会社)は、株券を発行する旨を定款に定めている株券発行会社ですが、株券不発行会社に移行したいと考えています。株券不発行会社に移行するために必要な手続を教えてください。

 株券不発行会社に移行するためには、株主総会の特別決議により株券を発行する旨の定款の定めを廃止することと、株主や登録株式質権者に対し一定事項を周知することが必要となります。

解説

はじめに

 株券発行会社は、株券発行費用その他のコスト負担が生じないようにすること等を目的として自ら、株券不発行会社に移行することを望む場合がありますが、自社を売却する際の買収会社から、買収前に株券不発行会社への移行手続を完了させるよう求められる場合もあります。
 株券発行会社が株券不発行会社に移行するために必要となる手続は以下のとおりです。

定款変更手続

 株券発行会社が株券不発行会社に移行するためには、株主総会の特別決議により株券を発行する旨の定款の定めを廃止することが必要となります(会社法218条1項柱書、466条309条2項11号)。
 この際、株券を発行する旨の定款の定め(会社法214条)の他に、株券発行会社であることを前提とした規定(たとえば、単元未満株式に係る株券を発行しない旨の規定(会社法189条3項)等)がある場合には、実務上、併せて変更することになります。

周知手続

 株券発行会社は、株券を発行する旨の定款の定めを廃止する定款の変更をしようとするときは、定款変更の効力発生日の2週間前までに、下記①~③の事項を公告し、かつ、株主および登録株式質権者(以下「株主等」といいます)に対し各別に通知する必要があります(会社法218条1項)。
 なお、株式の全部について株券を発行していない株券発行会社の場合は、定款変更の効力発生日の2週間前までに、下記①および②の事項を公告すること、または、株主等に対し通知することのいずれか一方を行えば足ります(会社法218条3項・4項)。

  1. その株式(種類株式発行会社にあっては、全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨の定款の定めを廃止する旨
  2. 定款変更の効力発生日
  3. ②の日(定款変更の効力発生日)において株券が無効となる旨

 上記のとおり、株主等に対する通知・公告は、定款変更の効力発生日の2週間前までに行う必要があるため、その通知・公告と効力発生日の間には「2週間+数日(通知の到着に要する日数)」を確保する必要がありますが、この周知手続は、定款変更の株主総会決議の前に行うことも可能ですので、他に必要となる手続をすべて履践している場合には、株主総会決議によりただちに株券廃止の効力を生じさせることもできます

 なお、株券を発行する旨の定款の定めを廃止する定款変更の効力発生日をもって株券は無効となり(会社法218条2項)、会社法上、株券提出手続(会社法219条)を行うことは求められていませんが、株券不発行会社への移行を知らない者が株券発行会社と誤認して無効な株券を有効と誤信して取引するトラブル等を回避すべく、上記通知の際に、任意に株券の提出を求めることもあります(江頭憲治郎=中村直人編『論点体系 会社法2 株式会社Ⅱ』185頁(第一法規、2012)参照)。

その他

 株券を発行する旨の定款の定めを廃止した場合、定款変更により登記事項に変更が生じますので、定款変更の効力発生日から2週間以内に変更の登記を行う必要があります(会社法915条1項、911条3項10号)。
 また、株券を発行する旨の定款の定めを廃止した場合、会社は、その定款変更をした日の翌日から起算して1年を経過するまでは、株券喪失登録簿の作成・備置を行う必要があります(会社法221条231条1項)。

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