株主代表訴訟中の株式交換等により、原告が株主でなくなった場合の原告適格

コーポレート・M&A

 当社の株主が株主代表訴訟により当社の取締役に対して損害賠償を請求している最中に、当社が株式交換を行うことになりました。当社は、株式交換によってA社の完全子会社(100%子会社)になるため、株主代表訴訟の原告は当社の株主ではなくなり、A社の株主となります。係属中の株主代表訴訟はどのように取り扱われるでしょうか。

 株主代表訴訟の係属中に貴社が株式交換を行ったとしても、原告が貴社の完全親会社の株式を取得したときは、引き続きその株主代表訴訟の原告の地位に留まることができます。
 したがって、その場合には、株主代表訴訟の帰趨に影響を与えることはありません。

株主代表訴訟中の株式交換等により、原告が株主でなくなった場合の原告適格

解説

株主代表訴訟の増加と株式交換等の導入による問題の顕在化

 平成5年の商法改正により、株主代表訴訟の申立手数料が、請求額にかかわらず、一律13,000円であることが明確化されてから株主代表訴訟が急増するに至り、現在も株主に認められた重要な権利として活用されています。
 また、平成11年の商法改正により株式交換・株式移転の制度が導入されましたが、それ以降、株主代表訴訟中に原告が株主でなくなった場合の訴訟の取扱いの問題が顕在化するようになりました。

株主代表訴訟の原告となるために必要な株式の保有

 株主代表訴訟の原告となるためには、まず、会社に対して提訴請求を行う必要があります。この提訴請求時に、公開会社の場合、6か月前から引き続き株式を有する株主である必要があり会社法847条1項、公開会社でない会社についても提訴請求時に株主である必要があります)、また、訴訟の継続中は株式を保有し続ける必要があります
 したがって、株主代表訴訟の提起時には株式を保有していたものの、訴訟の係属中に原告が株式を譲渡するなどして株主でなくなった場合には、その者が原告として訴訟を追行する理由がなくなりますので、その訴訟は却下されることになります。

株主代表訴訟中の株式交換等により原告が株主でなくなった場合の訴訟の継続

 会社が株式交換、株式移転または吸収合併(以下「株式交換等」といいます)を行うことによって、原告が株式を失った場合、その者は株式譲渡のように自らの意思で株式を失ったわけではありません。また、仮に株式交換等を行うことによって、株主代表訴訟が却下されることになるのであれば、被告として訴訟を提起されていた取締役等は、株式交換等を行うことによって、自らの責任を回避することを企図する可能性もあります。
 そこで、平成18年5月1日に施行された会社法では、責任追及等の訴え(①取締役、監査役、執行役、会計監査人、会計参与等の責任を追及する訴え、②株主の権利行使に関し供与された利益の返還を求める訴え〔会社法120条3項〕、③不公正な払込金額で株式または新株予約権を引き受けた者等に対する差額等の支払いを求める訴え〔会社法212条1項、285条1項〕等の会社法会社法847条1項に列挙された訴え)を提起した株主、または共同訴訟人として当該責任追及等の訴えに係る訴訟に参加した株主会社法849条1項)は、訴訟係属中に株主でなくなった場合であっても、次の場合には、原告適格を失わないことが定められています会社法851条1項)。

  1. その者が当該株式会社の株式交換または株式移転により当該株式会社の完全親会社の株式を取得したとき
  2. その者が当該株式会社が合併により消滅する会社となる合併により、合併により設立する株式会社(新設合併の場合)または合併後存続する株式会社(吸収合併の場合)もしくはその完全親会社(三角合併の場合)の株式を取得したとき

 また、上記1および2の後にさらに株式交換等が行われた場合にも再び同様の取扱いとなります(会社法851条2項・3項)。

おわりに

 以上のとおり、株主代表訴訟の係属中に会社が株式交換等を行ったとしても、原告が完全親会社の株式を取得したときは、引き続き原告の地位に留まることとなりますので、その場合には、株主代表訴訟の帰趨に影響を与えることはありません。
 したがって、株主代表訴訟の係属中に株式交換等を行うことを検討する場合には、その株主代表訴訟が継続することを念頭に置いておく必要があります。

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