株式交換における完全子会社の株主の議決権

コーポレート・M&A

 当社は、定款において、毎年3月31日の最終の株主名簿に記載された株主がその事業年度に関する定時株主総会(6月下旬頃に開催予定)において権利を行使できる旨の基準日制度を定めています。

 このたび、当社はA社との間で、当社を完全親会社、A社を完全子会社、4月1日を効力発生日とする株式交換を実施します。A社の既存株主は4月1日に当社の株主になりますが、6月下旬に開催予定の当社定時株主総会において議決権の行使を認めることはできるでしょうか。

 貴社の判断により、4月1日に貴社株主となったA社の既存株主に対し、定時株主総会における議決権行使を認めることができます。

株式交換における完全子会社の株主の議決権

解説

基準日制度とは

 基準日制度とは、一定の日に株主名簿に記載または記録された株主について、株主総会での議決権行使や配当の受領等、株主としての特定の権利を行使できる者と定めることができる制度です(会社法124条)。

 特に上場会社のように株主数が多く、株式を市場で取引できるような場合には、株主は日々変動しますが、この基準日制度により、権利行使を認める株主について、一定の日を基準として確定することができます。

株式交換における完全子会社の株主の議決権と基準日制度の関係

 設例のようなケースの場合、4月1日に完全親会社の株主となった完全子会社の既存株主は、3月31日に完全親会社の株主名簿に記載または記録されていないことから、6月下旬に開催される株主総会において議決権を行使できないことが原則です。

【原則】

株式交換における完全子会社の株主の議決権と基準日制度の関係

 このようなケースにおいて基準日後株主に議決権行使を認めてよいか、認める場合に実施すべき手続について、旧商法下においては明文の規定がなく解釈が分かれていました。

 この点、会社法制定時に、「基準日株主が行使することができる権利が株主総会又は種類株主総会における議決権である場合には、株式会社は、当該基準日後に株式を取得した者の全部又は一部を当該権利を行使することができる者と定めることができる。ただし、当該株式の基準日株主の権利を害することができない。」という会社法124条4項の規定が設けられました。

設例のケース

 設例のケースでは、会社法124条4項に基づき、完全親会社の判断により、基準日である3月31日の翌日において株式交換により完全親会社の株主となった完全子会社の既存株主に対して、議決権行使を認めることが可能です。

 なお、基準日制度の趣旨からして、設例のケースで議決権行使を認めないことも許容されると考えます。しかし、その場合には、わずか1日の差で、完全子会社となる会社の既存株主は、株式交換後はじめて開催される完全親会社の定時株主総会において議決権を行使できないことになるため、実務上、同様のケースでは会社法124条4項の規定に基づき議決権を付与する例も少なからず見受けられます。

 もっとも、上場会社の場合には招集通知の発送準備に1~2か月程度かかるため、設例のケースで株主交換の効力発生日が4月1日ではなく、6月1日となるような場合には、会社法124条4項の規定に基づき議決権を付与することは実務上困難であると考えられます。

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