株主総会における株主の発言が動議か否かが不明な場合の対応

コーポレート・M&A

 当社は、今年度の株主総会において、1株あたり10円の配当を行う内容の剰余金配当議案を上程しています。株主総会の質疑応答中、ある株主が、「当社の配当性向が極端に低すぎる。1株あたり70円か80円程度にすべきだ。他の株主の意見も聞いて欲しい。」と発言しました。議長は、これを配当議案に対する修正動議として取り上げる必要があるでしょうか。

 質問の内容の発言であれば、「動議」とは述べておらず、修正提案も具体的ではありませんので、議案に対する反対意見または会社に対する要望と整理して差し支えないでしょう。したがって、議案に関する修正動議として取り上げる必要はないと考えます。株主の発言が動議か否かが不明な場合には、株主に対して発言の趣旨を確認するとよいでしょう。

解説

動議とは

 株主総会において、議案の修正を求めて株主が動議を提出する場合があります。これを修正動議(実質的動議)といい、修正動議の提出は、会社法の明文上、株主に認められた権利です(会社法304条)。

 株主から適法な修正動議が提出された場合、議長はこれを必ず議場に諮らなければならないと解されています。適法な修正動議が提出されたにもかかわらず、これを無視して議事を進めた場合、決議方法に法令違反があるか、著しく不公正であるとされ、決議取消が認められてしまうおそれがありますチッソ株主総会決議取消請求事件最高裁昭和58年6月7日判決・民集37巻5号517頁、決議取消の点については大阪地裁昭和49年3月28日判決・民集37巻5号575頁)。

現実の株主の発言について

 議長は、株主から動議が提出された場合には、それが適法なものであるか、議場に諮ることを要するかを冷静に判断していかなければなりません(参考:「取締役選任議案に関する修正動議への対応方法」)。

 株主が最初から修正動議を提出する意図をもって発言しているような場合は、議長としても容易に判断できますが、現実には、必ずしも株主総会に出席している株主が動議に関する知識を持っているわけではなく、その効果を意図せずに様々な発言が行われることになります。

 たとえば、株主が明確に「動議」とは述べていないものの、その発言の内容はまさしく議案を修正する旨の提案を議場に諮るよう求めるものであり、修正動議と理解すべき場合があります。逆に、株主が「動議」らしき発言はしているものの、その内実は、会社に対する不平不満を述べるものに過ぎず、動議の体になっていない場合もあります。

株主に対して発言の趣旨の説明を求めること

 動議らしき株主の発言があったものの、その趣旨からすると、動議か否かが不明であり、議長としても判断が付かない場合には、議長は、当該株主に対して、その発言の趣旨の説明を求めることができます。このような説明を求めることも、議長の議事整理権に基づくものであり、正当な対応です。このような確認の結果として、株主としても動議として提出するまでの意図はないと述べることもあります。

【議長の定型フレーズ】

 株主様、ただいまのご発言は、動議でしょうか。それとも議案に対するご意見と理解すればよろしいでしょうか。

 ただし、基本的な考え方としては、適法な修正動議を議場に諮らない場合に手続きの瑕疵の問題が発生しますから、動議は「できるだけ取り上げる」という姿勢が無難だろうと思われます。

動議として取り上げない場合

 株主が「動議」と発言していても、内容が不明確なものについては、適法な修正動議の提出ではありませんから、議長はこれを取り上げないこととするか、あるいは単なる反対意見として取り扱っても問題ありません。現実論としては、「動議!」と叫べば、議長が無視できずに指名して発言の機会がもらえると思っている株主も少なくなく、指名しても、単なる質問で終わる場合もあります。また、何が適法な修正動議かを十分に理解しておらず、とにかく自分の提案らしきものを言えば議長が議場に諮ってもらえると思っている株主もいます。したがって、動議はできるだけ取り上げるという基本姿勢ではありつつも、一般論としては、適法な修正動議がきちんと提出されること自体は少ないと考えておいてもよいでしょう。

 ある株主が、設問のように「当社の配当性向が極端に低すぎる。1株あたり70円か80円程度にすべきだ。他の株主の意見も聞いて欲しい。」と発言しているような場合、単に会社の配当方針に関する意見を主張しているに過ぎないと考えられます。また、そもそも修正動議とするためには具体的な配当金額を提案する必要がありますので、適法な修正動議の提出にもなっていません。したがって、この程度の発言であれば、単なる反対意見または会社に対する要望と取り扱って差し支えないと考えます。

【議長の定型フレーズ】

 ただいま、株主様より「動議」のご発言がございましたが、その内容が具体的ではありませんので、適法な動議の提出とは認められません。したがいまして、このまま議事を続けさせていただきます。

判断に迷った場合には事務局と相談すること

 一つの考え方として、株主が「動議!」と発言しているか否かを議場に諮るかどうかの基準とすることはあり得ます。動議という用語を知っている株主は、会社法上の権利を意識している可能性があるからです。

 議長としても、瞬時の判断が難しい場合ももちろんありますから、適宜、事務局と相談をする時間をとっても構いませんので、落ち着いて冷静に対応することを心がけることが大切です。

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