株券不発行会社の株式譲渡と名義書換請求

コーポレート・M&A
江口 真理恵弁護士

 知人から、株券不発行会社の株式(振替株式ではありません)を譲り受けることになりました。この株式を譲り受ける方法と、株主名簿の名義書換請求の手続について教えてください。

 株券不発行会社の株式の譲渡は、譲渡人と譲受人の間で株式譲渡契約を締結することによって行うことができますが、その譲渡を株式会社その他の第三者に対抗するためには、株主名簿の名義書換を行う必要があります。

 株式名簿の名義書換請求は、株式の譲渡人と譲受人が共同して行うのが原則ですが、譲渡人に名義書換請求を命じる確定判決等があれば、譲受人単独でこれを行うことも可能です。

解説

はじめに(株券発行会社/株券不発行会社の区別)

 株式の譲渡方法や株主名簿の名義書換請求の手続は、譲渡の対象となる株式が①株券発行会社の株式である場合、②振替株式である場合、③株券発行会社の株式でも振替株式でもない場合、のいずれであるかによって異なります。

 今回問題となっているのは、株券発行会社の株式ではなく、かつ、振替株式ではない株式の譲渡ですので、以下では③の場合について説明します。

 なお、「株券発行会社」とは、その株式に係る株券を発行する旨の定款の定めがある株式会社をいい(会社法117条7項)、いわゆる「株券不発行会社」とは、株券発行会社以外の株式会社を意味します。もっとも、平成18年5月1日の会社法施行前に設立された株式会社については、旧商法下では株券発行が原則であったという経緯をふまえ、定款に株券を発行しない旨の定めがない場合、定款に株券を発行する旨の定めがあるものとみなされていることから(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律76条4項)、定款に株券を発行する旨または発行しない旨のいずれも定められていない場合の取扱いは、株式会社の設立時期によって異なります。

 具体的には、①定款に株券を発行する旨の定めがある場合は株券発行会社、②定款に株券を発行しない旨の定めがある場合は株券不発行会社、③定款にいずれの定めもない場合、株式会社の設立日が平成18年5月1日より前であれば株券発行会社、株式会社の設立日が平成18年5月1日以降であれば株券不発行会社にそれぞれ該当します。

 したがって、ある株式会社が株券を発行していない場合であっても、定款の内容次第で、①株券不発行会社であるケースと、②株券発行会社であるが、現実に株券を発行していないにすぎないケースのいずれもあり得るため、株券発行会社であるか、株券不発行会社であるかを判断するためには、定款の内容を確認する必要があります。

株券不発行会社における株式譲渡

(1)株式譲渡の方法

 株券発行会社の株式の譲渡は、株券を交付しなければ効力を生じないのに対して(会社法128条1項)、株券不発行会社の株式の譲渡は、振替株式を除き、当事者間の合意によって成立しますので(江頭憲治郎『株式会社法〔第6版〕』219頁(有斐閣、2015))、譲渡人と譲受人の間で株式譲渡契約を締結することにより、株式の譲渡を有効に行うことができます

(2)株式譲渡の対抗要件

 株券不発行会社において、株式の譲渡を株式会社その他の第三者に対抗するためには、その株式を取得した者の氏名または名称および住所を株主名簿に記載・記録すること、すなわち、株主名簿の名義書換を行う必要があります(会社法130条1項)。

 したがって、株主名簿の名義書換がされていない間は、株式会社は原則として、株主名簿に記載・記録されている者を株主として扱えば足り、その結果、譲受人は株主総会における議決権等の権利を行使することができません。また、株主名簿の名義書換をしていなければ、株式が二重譲渡された場合や株式が差し押さえられた場合等も、譲受人は第二譲受人や差押債権者等の第三者に対し、対抗することができません。

株券不発行会社における株主名簿の名義書換請求

 株式取得者は、株式会社に対し、株主名簿の名義書換を請求することができますが会社法133条1項)、原則として、株主名簿に記載・記録されている者またはその相続人その他の一般承継人と共同して請求しなくてはなりません会社法133条2項)。

 例外的に、①株式取得者が、名義株主またはその一般承継人に対して名義書換の請求をすべきことを命ずる確定判決を得た場合において、当該確定判決の内容を証する書面その他の資料を提供したとき、②株式取得者が①の確定判決と同一の効力を有するものの内容を証する書面その他の資料を提供したときは、株式取得者が単独で名義書換を請求することができます(会社法施行規則22条1項1号・2号)。

 ①の「確定判決の内容を証する書面その他の資料」としては、確定判決の正本のほか、謄本や確定判決の内容を証する電磁的記録等も許容され得ます(相澤哲ほか編著『論点解説 新・会社法』143頁(商事法務、2006))。また、②の「確定判決と同一の効力を有するものの内容を証する書面その他の資料」には、名義株主またはその一般承継人が株式取得者への名義書換請求の意思表示をする旨を記載した和解調書や調停調書等が該当します(弥永真生『コンメンタール会社法施行規則・電子公告規則[第2版]』139頁(商事法務、2015))。

【譲受人が単独で名義書換請求を行うことができる場合】

場合 提供する資料の例

① 株式取得者が、名義株主またはその一般承継人に対して名義書換の請求をすべきことを命ずる確定判決を得た場合において、当該確定判決の内容を証する書面その他の資料を提供したとき

確定判決の正本、謄本
確定判決の内容を証する電磁的記録等

② 株式取得者が①の確定判決と同一の効力を有するものの内容を証する書面その他の資料を提供したとき

名義株主またはその一般承継人が株式取得者への名義書換請求の意思表示をする旨を記載した和解調書や調停調書等

 したがって、譲渡人が株主名簿の名義書換請求に協力しない場合に、譲受人が単独でこれを行うためには、まず、譲渡人に対して訴訟を提起し、譲渡人に名義書換請求を命じる確定判決を得る等した上で、所定の資料を入手する必要があります

まとめ

 以上のとおり、株券不発行会社の株式の譲渡は、振替株式を除き、譲渡人と譲受人の間で株式譲渡契約を締結することによって行うことができます。しかし、譲受人が株式会社に対して株主としての権利を行使したり、第二譲受人や差押債権者等の第三者に対して株式の譲渡を対抗するためには、株主名簿の名義書換を行う必要があります。

 株式名簿の名義書換請求は、株式の譲渡人と譲受人が共同して行うのが原則ですが、譲渡人が協力しない場合、譲受人は、譲渡人に名義書換請求を命じる確定判決等があれば、単独で名義書換請求を行うことも可能です。

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