新株予約権の募集事項の決定を取締役会に委任する場合

コーポレート・M&A

 当社は、株式の譲渡による取得には取締役会の承認が必要な非公開会社です。この度、従業員向けに新株予約権の発行を計画していますが、株主総会で募集事項すべてを決議せず、一部分の決定を取締役会に委任することも可能と聞きました。取締役会に委任する場合の留意事項を教えてください。

 非公開会社においては、株主総会決議で新株予約権の募集事項を決定することが原則です。ただし、例外として、①新株予約権の内容および数の上限、②金銭の払込みを要しないとする場合(無償発行する場合)にはその旨、③無償発行以外の場合には、払込金額の下限を株主総会決議で定めることで、割当日がその株主総会決議日から1年以内の日であれば、取締役会に募集事項の決定を委任することが可能です。

 以下、留意事項の詳細を解説します。

解説

新株予約権発行の決定機関

公開会社の場合

 公開会社においては、新株予約権の有利発行である場合(会社法238条3項各号に掲げる場合)を除いて、取締役会決議で新株予約権の募集事項を決定すること(新株予約権を発行すること)が可能です(会社法240条1項)。

非公開会社の場合

 一方、非公開会社では、新株予約権の募集事項の決定は株主総会の決議によらなければならないとされており(会社法240条2項)、新株予約権の発行には株主総会特別決議が必要になります(会社法240条2項、309条2項6号。なお、株主割当による新株予約権発行の場合、定款の定め次第では取締役会限りで発行することも可能ですが、詳細は割愛します)。新株予約権が発行された場合、潜在的であっても既存株主の持株比率に影響が及びますので、株主の持株比率がより重視され保護される非公開会社では、株主総会特別決議が必要とされています。

 もっとも、非公開会社においても、株主総会で募集事項のすべてを決議する必要はなく、募集事項の決定を取締役(取締役会設置会社の場合は、取締役会)に委任することが可能です(会社法239条1項)。以下、取締役会に委任する場合を前提に記載します。

株主総会で定めなければならない事項

 非公開会社において募集事項の決定を取締役会に委任する場合、株主総会では、以下に掲げる事項を定める必要があります(会社法239条1項)。

委任に基づいて募集事項の決定をすることができる新株予約権の内容
新株予約権の数の上限
新株予約権の割当てに際し金銭の払込みを要しないこととする場合には、その旨
③に規定する以外の場合は、新株予約権の払込金額の下限

 ここで留意すべき事項として、①新株予約権の内容(会社法236条1項)については株主総会で確定的に定める必要があり、取締役会に決定を委任できないと指摘されている点があげられます(相澤哲編著「Q&A会社法の実務論点20講」24頁(金融財政事情研究会、2009)、松井信憲著「商業登記ハンドブック」第3版325頁(商事法務、2015)参照)。

 この見解に従えば、たとえば、株主総会において、「権利行使期間は、平成29年6月1日から平成39年5月31日までの間で、取締役会で定めた期間とする」と、新株予約権の内容の一部である権利行使期間の決定を取締役会に委任することはできません。また、新株予約権の行使条件(会社法911条3項12号ハ)も新株予約権の内容をなすと解されており、この決定も取締役会には委任できないことに合わせて留意が必要です。

割当日の制限

 募集事項の決定を取締役会に委任する株主総会決議は、割当日が当該決議の日から1年以内の日である新株予約権の募集についてのみ効力を有します(会社法239条3項)。

 よって、割当日は、株主総会決議日から1年以内に設定する必要があります。一回の株主総会決議を利用して、1年超の期間にわたって新株予約権を発行することができない点に留意が必要です。

複数回の発行

 割当日が株主総会決議日から1年以内であれば、取締役会に委任する一回の株主総会決議を利用して、複数回の新株予約権発行が可能です(株主総会で決議された新株予約権の数の上限、払込金額の下限を満たしていることが条件ですが、各回で払込金額を異なるものとすることもできると解されます)。なお、この場合、株主総会で決議する権利行使期間を「割当日の翌日から2年間」等と定めることにより、それぞれの割当日に応じた行使期間とすることも考えられます。

  • facebook
  • Twitter
コンテンツの更新情報、法改正、重要判例をもう見逃さない!メールマガジン配信中!無料会員登録はこちらから

関連する実務Q&A

関連する特集

コーポレート・M&Aの人気実務Q&A

  1. 少数株主による度重なる株主総会招集請求への対応
  2. 種類株主総会はどのように運営すればよいか
  3. トラッキング・ストックの概要および発行時の留意事項
  4. 株式買取請求権を行使できる場合、できない場合