100パーセント減資とは

コーポレート・M&A

 既存株主の持分をゼロにしてしまう、「100パーセント減資」という手続があると聞いたのですが、これはどのような場合に実施されるものなのでしょうか。また、どのような手続によって行われますか。

 会社更生手続や民事再生手続においては、債務超過の会社の再建のために、既存株主の保有する株式をすべていったんゼロにして、新しいスポンサーに株式を割り当て、出資してもらうという手法がとられることがあります。これを、「100パーセント減資」と呼ぶことがあります。

 会社法においては、全部取得条項付種類株式を利用すれば、株主総会の特別決議により、これと同様の効果を達成することができます。

解説

会社再建手法としての「100パーセント減資」

 会社法制定前においては、債務超過の会社の再建のために、「100パーセント減資」と呼ばれる手法がとられることがありました。具体的には、会社更生法に基づく更生計画や民事再生法に基づく再生計画に基づき、既存株主が保有する株式をすべて強制的に無償で消却したうえで(つまり資本を減少させたうえで)、新しいスポンサーに新たに更生会社・再生債務者の株式を割り当てることが行われていました。

 債務超過の責任をとって旧株主には退出をしてもらい、新たに資金拠出を行う新株主の下で会社を再建するという手法です。この手法は、減資と増資を同時に行いますが、いったん、すべての株式を消却することにより資本減少を行うため、「100パーセント減資」と呼ばれていました。

 かつては、更生計画による「100パーセント減資」は適法かが争われたこともありましたが、裁判例はこのような更生計画の定めを適法であると認め東京高裁昭和54年8月24日決定・判時947号113頁東京高裁昭和37年10月25日決定・下民集13巻10号2132頁)、更生計画または再生計画による「100パーセント減資」の手法は一般的なものとなりました。

商法時代の学説

 しかしながら、会社更生手続や民事再生手続の外で、つまり裁判所の関与しない状況において、商法に基づいて「100パーセント減資」ができるかについては、依然として学説に争いがありました。

 特別決議(商法375条1項)によりすべての株式の強制消却ができてしまうとすると、「100パーセント減資」に反対する少数株主の権利(または、将来において会社が平常の状態に戻り配当等を受けられるかも知れないという期待感)を奪うため相当ではなく、株主全員の同意がない限り「100パーセント減資」は認められない、とする考え方がありました(稲葉威雄ほか編『実務相談株式会社法(新訂版)』5巻128頁(商事法務研究会,1992))。

 これに対し、総株主に同意を要求しては迅速な会社の任意整理は不可能なので、株主総会の特別決議により「100パーセント減資」は可能であり、ただ会社が債務超過でないのに「100パーセント減資」を行うことは実体的に違法なので、株主は、その点を資本減少無効の訴えにより争い得ると解すべきであるとの考え方もありました(江頭憲治郎『株式会社・有限会社法〔第4版〕』681頁(有斐閣,2005))。

会社法による改正

 会社法の立法過程においては、「100パーセント減資」を株主の多数決で行えるようにしたいという経済界の要望も取り上げられました。そして、立法過程で、試案には存在していた、会社が破産原因である債務超過の場合に限りこれが行える、という要件がなくなり、さらに種類株式発行会社の制度とする等の変更が加えられたため、もともとの「100パーセント減資」というコンセプトとはかなり異なる制度が出来上がりました(江頭憲治郎「会社法制の現代化に関する要綱案の解説〔Ⅳ〕」商事法務1724号8頁(2005))。

 会社法においては、「100パーセント減資」を行うためには、まず、以下の手続をとる必要があります。

(1)何らかの種類株式を定める定款の変更のための株主総会の決議(会社法108条2項)
(2)当該普通株式に全部取得条項を付する定款の変更(会社法108条2項7号)
(3)全部取得条項付種類株式の取得および対価の決定のための株主総会の決議(会社法171条
(4)募集株式の引受人の募集手続(会社法201条

 上記の(1)から(3)までの決議は、同一の株主総会で行うことができます。

 これにより、既存株主は、有償または無償で株式を失うことになり、新たに募集株式を割り当てられた引受人が、新しい株主になります

会社法においては、減資にこだわらなくても株主の交代が可能

 しかしながら、商法と会社法では、資本減少の方法が異なることに注意しなければなりません。

 商法においては、資本減少の手段の一つとして、消却が定められていました。つまり、株式の消却により資本を減少する、という株主総会決議がなされた場合、ただちに、消却と資本の減少という効果が生じていました。換言すると、既存株主の株式を失わせるためには、資本減少の手続を経る必要がありました。

 しかし、会社法では、上記3(3)の全部取得条項付種類株式の取得の株主総会決議が行われても、全部取得条項付種類株式という株式を会社が取得するだけであり、別途、株式の消却手続(会社法178条)および資本金の額の減少手続(会社法447条1項)をとらない限り、資本金の額の減少という効果は生じません。

 そして、資本金の額を減少せずに、上記3(3)によって取得した全部取得条項付株式を上記3(4)の引受人に交付し、その全部取得条項を廃止する旨の定款変更手続を行うことにより、登録免許税を節約しながら、「100パーセント減資」と同様の目的を達成することができると解されています(相澤哲ほか編著『論点解説 新・会社法』90頁(商事法務,2006))。

 つまり、株主を全面的に交代させるにあたり、減資を行う必要は必ずしもないのです。欠損(累積赤字)の填補のために資本金の額の減少手続をとることもありますが、会社更生手続や民事再生手続においては、負債がカットされることにより多額の免除益を生じるため、資本金の額の減少を行うかどうかは、ケースバイケースです。

 以上を踏まえると、「100パーセント減資」という言葉自体、会社法が制定された現在においては古いものだと言えますが、株主の全面入れ替えというイメージを伝えるには便利であるため、今でも用いられることが多いようです。

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