社外取締役に関する規律と期待される役割

コーポレート・M&A
金井 俊樹弁護士

 社外取締役に関して、主にどのような規律があるのでしょうか。また、社外取締役に期待されている役割についても教えてください。

 主に会社法や証券取引所の上場規程、コーポレートガバナンス・コードにおいて社外取締役に関する規律の整備が進められています。そして、近年重要視されているコーポレートガバナンスの強化との関係において、社外取締役には、中長期的な企業価値の向上や株主の利益保護のために、会社から独立した客観的な立場から経営に対する監督を行うこと等が期待されています。

解説

コーポレートガバナンスの強化と社外取締役

 以前の日本企業では、株式の持合いと終身雇用制度の下、取締役の多くが、会社に長年勤めた年功のある者の中(社内)から実質的に代表取締役によって選ばれており、今までの付き合いや関係から生じる馴れ合い等のために、本来、取締役に期待される他の取締役(特に代表取締役)の職務執行に対する監督がほとんど機能していませんでした。

 しかし、バブル経済が崩壊した後、次第に企業の不祥事が明るみになっていくにつれ、海外機関投資家を中心に、株主利益の確保等の観点から取締役の職務執行に対する監視機能を強化すべきとの声が強くなっていきました。

 こうした声を受けて、日本においても、コーポレートガバナンスの強化の重要性が徐々に認識され、今日に至るまで様々な取組みが行われてきました。そして、社外取締役は外部の目から経営を監視する者として、コーポレートガバナンスを強化する重要な担い手の一人であり、現在、会社法、証券取引所の上場規程、コーポレートガバナンス・コード等で社外取締役に関する規律が整備されるに至っています。

社外取締役に関連する主な規律

会社法

(1)社外取締役の要件

 平成26年改正前の会社法では、社外取締役の要件は、現在または過去において当該会社または子会社の業務執行取締役もしくは執行役または支配人その他の使用人(以下「業務執行取締役等」といいます)ではないこととされていましたが、このような「社外性」の観点からのみの規定では、親会社の関係者や兄弟会社の関係者、経営者の近親者等も社外取締役の要件を充たすことになり、取締役に対する監視機能が十分に期待できないとの指摘がありました。

 そこで、平成26年の改正後会社法では、社外取締役の「独立性」を確保しガバナンスを強化する観点から、先行して整備が進んでいた東京証券取引所の上場規程を参考に、社外取締役の要件として以下の①~③の要件が新たに設けられました。なお、以下の①~③は「現在」においてこれらを充足していれば足り、過去においてもこれらを充たすことは求められていません

  1. 親会社等の取締役、使用人等ではないこと(会社法2条15号ハ)
  2. 兄弟会社の業務執行取締役等ではないこと(会社法2条15号ニ)
  3. 当該会社の取締役、重要な使用人等の配偶者または2親等内の親族ではないこと(会社法2条15号ホ)

 以上のように、独立性の強化の観点から社外取締役の要件が厳格になりましたが、他方で要件を厳格にし過ぎると人材確保が困難になるという声もありました。

 そこで、平成26年改正会社法では、「過去に」当該会社または子会社の業務執行取締役等ではないことという従前の要件を「就任の前10年間」に限定し、要件を緩和しました(会社法2条15号イ)。

 ただし、就任前10年間に、当該会社または子会社の非業務執行取締役、会計参与または監査役(非業務執行者)の地位であったことがある者は、さらにそれらの地位に就く前10年間に当該会社または子会社の業務執行取締役等であったことがないことという要件も充たす必要があります(会社法2条15号ロ)。

(2)社外取締役を置くことが相当ではない理由の開示

 平成26年改正会社法では、社外取締役の選任の義務化は見送られましたが、公開会社かつ大会社である監査役設置会社であって有価証券報告書提出会社である株式会社が社外取締役を置かない場合には、「社外取締役を置くことが相当でない理由」を、①定時株主総会で説明し(会社法327条の2)、②事業報告に記載しなければならず(会社法施行規則124条2項)、株主総会において社外取締役の候補者を含まない取締役選任議案を株主総会で提出する場合には、「社外取締役を置くことが相当でない理由」を株主総会参考書類に記載しなればならないものとされました(会社法施行規則74条の2第1項)。

東京証券取引所の上場規程

 社外取締役の独立性を強化した上記の会社法改正に先立ち、東京証券取引所(以下「東証」といいます)は、一般株主(投資家)の保護のため、役員の独立性に関する規律を整備し、上場会社に対して、1名以上の「独立役員」(一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役または社外監査役)の確保を義務付けました(東京証券取引所有価証券上場規程436条の2第1項)。
 ここでいう社外取締役は、会社法2条15号に規定する社外取締役であって、会社法施行規則2条3項5号の社外役員に該当する者をいいます。

 さらに、東証は、上記の会社法改正に係る「会社法制の見直しに関する要綱」での附帯決議を受けて、「(監査役ではなく)取締役である独立役員」を少なくとも1名以上確保するよう努めなければならないとする上場規程の改正を行いました(平成26年2月10日施行。東京証券取引所有価証券上場規程445条の4)。

 なお、上場会社には、取引所への「独立役員届出書」の提出(東京証券取引所有価証券上場規程施行規則436条の2第1項1号)や「コーポレートガバナンス報告書」での独立役員の確保状況の開示が要求されています(東京証券取引所有価証券上場規程204条12項1号、東京証券取引所有価証券上場規程施行規則211条4項6号)。

コーポレートガバナンス・コード

 金融庁と東京証券取引所を共同事務局とする有識者会議が取りまとめた「コーポレートガバナンス・コード」(以下「CGコード」といいます)の上場会社への適用が平成27年6月1日から開始されましたが、その原則4-8では企業の行動規範として「上場会社は独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきである」と規定されています。

社外取締役に期待されている役割

 CGコードの原則4-7では、独立社外取締役の役割と責務について、以下のように規定されています。

  1. 経営の方針や経営改善について、自らの知見に基づき、会社の持続的な成長を促し中長期的な企業価値の向上を図る、との観点からの助言を行うこと
  2. 経営陣幹部の選解任その他の取締役会の重要な意思決定を通じ、経営の監督を行うこと
  3. 会社と経営陣・支配株主等との間の利益相反を監督すること
  4. 経営陣・支配株主から独立した立場で、少数株主をはじめとするステークホルダーの意見を取締役会に適切に反映させること

 以上のように、独立社外取締役には、一般株主の利益保護の観点から、取締役会等を通じて、企業価値の向上のための必要な助言を行い、経営陣や支配株主から独立した立場を生かして取締役の職務執行を監視するとともに、ステークホルダーの意見を経営に反映させるという役割が期待されています。

 また、CGコード補充原則2-5①では経営陣から独立した内部通報窓口の設置に関して「社外取締役」の活用が言及されており、CGコード補充原則5-1①では株主との対話の当事者として社外取締役があげられています。これらの規定も、社外取締役に、経営に対する監督や一般株主の意見の反映という役割を期待していることの表れといえます。

 CGコード基本原則4では株主に対する説明責任や中長期的な企業価値の向上のため、取締役会に対し、独立した客観的な立場から、経営陣・取締役に対する実効性の高い監督を行うことを要求しています。独立社外取締役はこの規定との関係で定められたものであり、取締役会改革における重要なキーパーソンといえるでしょう。

 なお、CGコード自体は上場会社を対象としていますが、非上場会社の社外取締役に期待される役割も上場会社の場合と異ならないものと思われます。

おわりに

 社外取締役はコーポレートガバナンスの強化において重要な役割を担っており、社外取締役を選任する企業は増えています。東証が公表したデータ1によれば、東証全上場会社における平成28年の社外取締役の選任率は95.8%(独立社外取締役の選任率は88.9%)となっています。


  1. 「東証上場会社における独立社外取締役の選任状況<確報>」(2016年7月27日) ↩︎

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