株主名簿管理人の役割と設置・変更・廃止の方法

コーポレート・M&A
榎木 智浩弁護士

 株主名簿管理人とは、どのような人のことをいうのでしょうか。また、設置する手続、役割、変更や廃止の方法について教えてください。

 株式会社に代わって株主名簿の作成および備置きその他の株主名簿に関する事務を行う者のことをいいます。定款の定めに基づいて取締役会で選任の決定をし、株主名簿管理人となる者との間で委任契約を締結することによって株主名簿管理人を設置し、委託する業務の内容は契約によって定まります。委任契約を解除して株主名簿管理人を変更・廃止する場合は、取締役会で決定する必要があります。

解説

株主名簿管理人の意義

 株主名簿管理人とは、株式会社に代わって株主名簿の作成および備置きその他の株主名簿に関する事務を行う者のことをいいます(会社法123条)。
 上場会社のように、株主の数が多数で、かつ、株主が日々変動する場合、株主名簿の作成や備置きをはじめとする事務が多量にあり、株式の発行会社自らがこれらの事務を行うことは、煩雑でコストがかかるため経済的な合理性を欠く場合があります。そこで、このような場合、会社運営の合理化や、コストの削減を目的として株主名簿管理人を設置します。

株主名簿管理人の設置の手続

 株主名簿管理人を設置するには、定款に、株主名簿管理人を設置する旨を定める必要があります(会社法123条)。そのため、定款で株主名簿管理人を設置する旨の定めがない場合には、まず、株主総会の特別決議によって定款を変更する必要があります(会社法466条309条2項11号)。そして、取締役会設置会社の場合には取締役会の決議により、取締役会非設置会社の場合には取締役の過半数の決定によって株主名簿管理人を決定します(会社法362条2項1号、348条2項)。そのうえで、発行会社と、株主名簿管理人となる者との間で委任契約を締結します。

 会社法上は、会社は、株主名簿管理人を設置するか否かを自由に選択することができます。もっとも、証券取引所が、上場審査基準で株主名簿管理人の設置を義務付けています(東京証券取引所有価証券上場規程205条8号等)。そのため、上場会社においては、株主名簿管理人を設置する必要があります。

 また、会社法上は、株主名簿管理人の資格制限は特段ありません。しかしながら、証券取引所は、株主名簿代理人となる者を、証券取引所が承認する株式事務代行機関である信託銀行、東京証券代行株式会社、日本証券代行株式会社または株式会社アイ・アールジャパンにするよう指定していますので(東京証券取引所有価証券上場規程205条8号、601条1項13号、東京証券取引所有価証券上場規程施行規則212条8項)、上場会社は、金融商品取引所規則に従って株主名簿管理人を決定する必要があります。

 設置する株主名簿管理人を決定した場合、株主名簿管理人の氏名または名称および住所ならびに営業所(実務上の事務取扱場所)は登記事項ですので(会社法911条3項11号)、2週間以内にその旨を登記する必要があります(会社法915条1項)。

 全国株懇連合会(全株懇)の定款モデルでは、株主名簿管理人の定めについて、「株主名簿管理人およびその事務取扱場所は、取締役会の決議によって定め、これを公告する」と定められています。そのため、この定款にならって同旨の定款を定めた会社においては、株主名簿管理人を定めた後に、公告する必要があります。

株主名簿管理人の設置の手続

株主名簿管理人の役割

 株主名簿管理人に委託する業務の内容は、会社と株主名簿管理人との間の委託契約で定まります
 会社法上は、株主名簿管理人は、株式会社に代わって株主名簿の作成および備置きその他の株主名簿に関する事務を行うとされ(会社法123条)、この株主名簿の作成には、株主名簿の名義書換が含まれると解されています。また、株券発行会社では、株主名簿に加えて株券喪失登録簿に関する事務が(会社法222条)、新株予約権発行会社では、新株予約権原簿に関する事務が含まれています(会社法251条)。

 実務的には、発行会社は、上記の法定業務だけでなく、種々の業務を株主名簿管理人に委託しており、たとえば、株主総会の招集通知の発送(会社法299条)等の株主総会に関する事務、新株発行に関する事務、剰余金の配当の計算および支払(会社法457条)、単元未満株式の買取請求(会社法192条)、単元未満株式の売渡請求(会社法194条)などが委託されることが多いです。

株主名簿管理人の変更または廃止の手続

 株主名簿管理人を変更する場合、発行会社から委任契約を解除するには、取締役会設置会社の場合には取締役会の決議により、取締役会非設置会社の場合には取締役の過半数をもって決定する必要があります(会社法362条2項1号、348条2項)。そのうえで、新たな株主名簿管理人を決定し、委任契約を締結して株主名簿管理人を変更した後は、変更した日から2週間以内にその旨を登記する必要があります(会社法915条1項、911条3項11号)。

 株主名簿管理人を廃止する場合には、変更の場合と同様に、発行会社から委任契約を解除する場合には、取締役会設置会社の場合には取締役会の決議により、取締役会非設置会社の場合には取締役の過半数をもって決定する必要があります(会社法362条2項1号、348条2項)。

 なお、上場会社の場合には、株式事務代行機関への株式事務の委託の取止めを決定した場合には、ただちにその内容を開示する必要があります(東京証券取引所有価証券上場規程402条1号al)。

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