全株式譲渡制限会社における、属人的な権利の配分について

コーポレート・M&A

 取引先と合弁会社を立ち上げることになり、当社は人材などの経営資源を投下し、取引先は出資金の大半を負担することになりました。この場合、実際に合弁会社の経営を担うのは当社のため、持株比率とは関係なく、剰余金の配当や、株主総会での議決権については両社平等としたいのですが、そのような方法はあるでしょうか。

 合弁会社が全株式譲渡制限会社であれば、定款に株主ごとに異なる取扱いを行う旨の属人的定めを置くことで、貴社と取引先とが、剰余金の配当や、株主総会での議決権の行使について、持株比率とは関係なく、平等に取扱いを受けることは可能です。

解説

属人的定めとは何か

 株式会社では、株主が保有する株式の内容および数に応じて、平等に取り扱わなければなりません(会社法109条1項、株主平等の原則)。そして、株主は、その持ち株数に応じて、議決権を行使し(会社法308条1項)、配当を受け取り(会社法454条3項)、会社が解散するときには残余財産の分配を受ける(会社法504条3項)のが原則です。

 しかし、閉鎖型のタイプの会社においては、株主の持株数の増減にかかわらない属人的な権利の配分を行うニーズがあり得るため、全株式譲渡制限会社に限っては、株主平等原則の例外が認められています(江頭憲治郎『株式会社法第6版』133頁(有斐閣、2015))。

 種類株式制度と比較すると、以下のとおりです。

種類株式制度
会社法107条108条
全株式譲渡制限会社における属人的定め
会社法109条2項)
着目点 株式の内容 株主
内容 会社法107条108条に定められた9種類の内容の異なる種類株式を発行する ①剰余金の配当を受ける権利
②残余財産の分配を受ける権利
③株主総会における議決権
について、株主ごとに異なる取扱いを定款で定める(会社法109条2項)。

また、上記の法定事項以外にも定めることは可能だが、具体的な強行法規もしくは株式会社の本質に反し、または公序に反するものであってはならず、かつ、株主の基本的な権利を奪うものであってはならない(前掲・江頭134頁)。
登記 必要 不要

 参照:「種類株式を活用して創業メンバーの会社支配権を守る方法

属人的定めの具体例

 属人的な定めとして、具体的には以下のような定めが可能です(前掲・江頭168頁参照)。

①剰余金の配当について
  • 持株数にかかわらず、全員同額にする。
  • 原始株主など、特定の株主を持株数以上に優遇する。
  • 一株主が受ける剰余金の配当額に上限を設ける。
  • 特定の株主には配当を行わない。
②残余財産の分配について
  • 特定の資産について、特定の株主に分配する。
③株主総会における議決権について
  • 持株数にかかわらず、全株主の議決権数を同じにする(頭数議決権)。
  • 一定数以上の持株につき、議決権の上限制・逓減制を設ける。
  • 特定の株主の所有株式について、一株複数議決権を認める。
  • 未成年者の株主の議決権を認めない。
④その他について
  • 取締役の資格を一定数以上の株式を保有する株主に限る。

種類株式とみなす取扱い

 属人的定めがある場合、その株主が有する株式を剰余金の配当請求権、残余財産分配請求権、議決権に関する事項について、内容の異なる種類の株式とみなして、種類株主総会など第2編(株式会社)・会社法第5編(組織変更、合併、会社分割、株式交換及び株式移転)の規定が適用されます(会社法109条3項)。

 参照:
・「種類株式はどのような場面で活用できるか
・「種類株主総会はどのように運営すればよいか

属人的定めの導入、変更、廃止の手続

 全株式譲渡制限会社で、定款を変更して属人的定めを導入、変更、廃止する場合、それぞれ以下の手続が必要になります。

導入 株主総会で以下の特殊決議による定款変更(会社法309条4項)(※)

 ①総会で議決権を行使することができる株主の半数以上
→頭数ベースで半数以上

 ②総会で議決権を行使することができる株主の議決権の4分の3以上
→議決権ベースで4分の3以上

変更

(1)株主総会で以下の特殊決議による定款変更(会社法309条4項)(※)

①総会で議決権を行使することができる株主の半数以上
 →頭数ベースで半数以上

②総会で議決権を行使することができる株主の議決権の4分の3以上
 →議決権ベースで4分の3以上


(2)定款変更が、ある種類の株主に「損害を及ぼすおそれ」がある場合には、種類株主総会での決議が必要になります(会社法322条1項1号)。
属人的定めの変更についても、上記3のとおり、この規定が適用されますので(会社法109条3項)、属人的定めの変更が、当該属人的定めをされた株主に「損害を及ぼすおそれ」がある場合には、当該株主による種類株主総会の特別決議が必要となります(会社法324条2項4号)。なお、属人的定めをされた株主が一人のときは、一人で株主総会を構成します。

廃止

(1)属人的定めの廃止については、導入時や変更時の特殊決議は不要で、通常の定款変更と同じ特別決議で足ります(会社法309条4項)。


(2)属人的定めの変更が、当該属人的定めをされた株主に「損害を及ぼすおそれ」がある場合には、変更の(2)と同じ種類株主総会の決議が必要になります。

(※)これらを上回る割合を定款で定めた場合には、その割合になります。

おわりに

 以上より、設例の場合については、合弁会社を全株式譲渡制限会社としたうえで、定款に株主ごとに異なる取扱いを行う旨の属人的定めを置くことで、貴社と取引先とが、剰余金の配当や、株主総会での議決権の行使について、持株比率とは関係なく、平等の取扱いを受けることが可能となります。

 参照:「公開会社の株式に譲渡制限を付す方法

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