完全子会社化の方法

コーポレート・M&A

 当社(株式会社・非公開会社)には、当社が議決権の70%を保有している子会社X社(株式会社・非公開会社)が存在します。意思決定の迅速化のために、X社に対する議決権保有比率を100%にしたいのですが、どうすれば実現できるのでしょうか。

 実務的には、①貴社以外のX社の株主から株式を任意に買い取ること、②X社株式について貴社以外のX社の株主の保有株式数が1株未満の端数となるような割合での株式併合を行い、株式併合により生じた端数を裁判所の許可を得て売却し、X社もしくは貴社が買い取ること、または③貴社を完全親会社、X社を完全子会社とする株式交換を行い、株式交換の対価を金銭とすることのいずれかの方法により、貴社のX社に対する議決権保有比率を100%にすることになると思われます。

解説

完全子会社化の類型

 ある会社の発行済株式の100%を保有して当該会社を完全子会社化(100%子会社化)する方法としては、大きく分けて、①株主からの任意の株式買取りと②スクイーズ・アウト(キャッシュ・アウト)の2つの方法があります。スクイーズ・アウト(キャッシュ・アウト)とは、会社の支配株主が、他の少数株主の有する株式の全部を、その少数株主の個別の承諾を得ることなく、現金を対価として強制的に取得し、少数株主を会社から締め出すことをいいます。

株式の任意買取り

 完全子会社化を実現する方法として、理論的には、他の株主からその保有株式を任意に買い取る方法が考えられます。
 しかしながら、他の全株主と交渉をして、保有するすべての株式を買い取った場合に初めて完全子会社化が実現することになりますので、買取価格や買取株式数について交渉がまとまらなければ、全株式を買い取ることはできず、完全子会社化は実現できないことになります。

スクイーズ・アウト

スクイーズ・アウトの手法

 完全子会社化を実現するもう1つの方法として、少数株主の個別の承諾を得ることなくその保有株式を強制的に取得するスクイーズ・アウトがあります。
 平成26年の会社法改正(施行は平成27年5月1日)後のスクイーズ・アウトの手法としては、実務上は、基本的に「特別支配株主の株式等売渡請求」および「株式併合」が利用されています。もっとも、平成29年度税制改正を受けて、今後は、「現金対価株式交換」も選択肢の1つになるものと考えられます。

特別支配株主の株式等売渡請求

 「特別支配株主の株式等売渡請求」は、平成26年の会社法改正により新たに導入された制度で、自ら単独でまたは自らの100%子会社等と併せて対象会社の総株主の議決権の90%以上を有する株主(特別支配株主)が対象会社の承認を得ることにより対象会社の他の株主全員に対し保有株式全部の売渡しを請求できるという制度です。

 この制度の最大の特徴は、対象会社の承認手続として株主総会決議が不要であるという点にあります。対象会社の承認は、取締役会設置会社の場合には取締役会決議、取締役会非設置会社の場合には取締役の過半数による決定で足りるため、短期間(最短20日間程度)でのスクイーズ・アウトが可能となります。支配株主(その100%子会社等を含む)の議決権割合が90%以上の場合には、スクイーズ・アウトの手法として、通常は「特別支配株主の株式等売渡請求」を選択することになります。

 特別支配株主の株式等売渡請求の具体的な手順については、「中小企業の事業承継・M&Aにおけるスクイーズ・アウトの最新動向」をご参照ください。

【図1:特別支配株主の株式等売渡請求の手順】

特別支配株主の株式等売渡請求の手順

株式併合

 「株式併合」を用いるスクイーズ・アウトの手法は、株式併合後の少数株主の保有株式数が1株未満となるような併合割合での株式併合を用いて少数株主の保有株式を強制取得する(結果的に少数株主は現金を受け取って保有株式を失う)というスキームです。

 この「株式併合」スキームは、前述の「特別支配株主の株式等売渡請求」とは異なり、株式併合に際して株主総会の特別決議が必要となります。支配株主(その100%子会社等を含む)の議決権割合は90%未満だが、支配株主(その100%子会社等を含む)と支配株主に同調する株主を合わせた議決権割合が2/3以上の場合には、スクイーズ・アウトの手法として、通常は「株式併合」を選択することになります。

 株式併合の具体的な手順については、「中小企業の事業承継・M&Aにおけるスクイーズ・アウトの最新動向」をご参照ください。

【図2:株式併合スキームの手順(下記の図は4株を1株とする株式併合の例)

株式併合スキームの手順

全部取得条項付種類株式

 平成26年会社法改正前においては、スクイーズ・アウトの手法として「全部取得条項付種類株式」スキームが広く用いられていました。このスキームは、対象会社の発行済株式を全部取得条項付種類株式に変更し、株主総会決議により当該全部取得条項付種類株式のすべてを対象会社が取得し、取得対価として各株主に他の種類の株式を交付する際に、少数株主に交付される株式が1株未満の端数となるような交付割合とする手法です。このスキームの実行にあたっては、株主総会および種類株主総会の特別決議が必要となります。

 平成26年会社法改正後も「全部取得条項付種類株式」スキームは引き続き利用可能ですが、通常の株主総会のほか種類株主総会の決議も必要となるなど手続が複雑で技巧的なスキームであり、現実に利用されるケースはかなり限られると考えられます。

現金対価株式交換

 上記3-2から3-4以外のスクイーズ・アウトの手法として、株式交換の場合に完全子会社となる会社の株主に交付する交換対価を金銭とする方法(現金対価株式交換)があります。株式交換に際して株主総会の特別決議が必要となります。

 この「現金対価株式交換」は、従来は、課税繰延べの認められる税制適格組織再編成の要件を満たさず、完全子会社となる会社の一定の資産について時価評価課税が発生するため、実務上はほとんど利用されていない状況でした。しかしながら、平成29年度税制改正により適格要件の見直し等が行われたことから、今後は、選択肢の1つになり得るものと考えられます。

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