株式併合の価格決定申立を行う場合の手続

コーポレート・M&A

 私は、X社(発行済株式総数1,000株)の株式150株を保有する株主ですが、このたび、X社が300株を1株とする割合の株式併合を行う旨の株主総会招集通知が届きました。この招集通知には、株式併合により保有株式が1株未満の端数となる株主には株式併合前の保有株式1株につき5,000円を交付する予定である旨が記載されています。

 私は、X社の財産状況や今後の収益見通し等を考慮すると、X社の株式1株あたりの価値は5,000円よりも多額であると考えていますが、株主総会で株式併合が承認されてしまえば、何も言うことはできず、1株につき5,000円での売却に応じるしかないのでしょうか。

 株主総会に先立って株式併合に反対する旨をX社に通知し、かつ、株主総会において株式併合議案に反対した場合には、株式併合の効力発生日の20日前から効力発生日の前日までの間に限り、X社に対し、あなたが保有するX社の株式を公正な価格で買い取ることを請求することができ、株式併合の効力発生日から30日以内にX社との間で株式の価格について合意できた場合には、当該合意価格での買取りを受けることができます。

 一方、株式併合の効力発生日から30日以内にX社との間で株式の価格について合意が成立しなかった場合には、あなたは、効力発生日から60日以内に限り、裁判所に対し、株式の価格決定の申立てをすることができます。この場合には、裁判所の非訟手続において株式の価格が決定され、最終的には裁判所の決定した価格(会社法の定める利息も加算されます)での買取りがなされることになります。

 また、X社の提示した1株あたり5,000円という価格が公正な価格より著しく低い場合には、株式併合を承認した株主総会決議の取消の訴えを提起できる余地があります。

解説

反対株主の株式買取請求権

 株式併合により1株未満の端数が生じる場合には、会社法上、「反対株主」に株式買取請求権が与えられています。

 具体的には、反対株主(=株主総会に先立って株式併合に反対する旨を会社に通知し、かつ、株主総会で反対した株主)は、会社に対し、株式併合の効力発生日の20日前の日から効力発生日の前日までの間に限り、株式を公正な価格で買い取ることを請求することができます(会社法182条の4第1項・第2項)。

 かかる株式買取請求により株式併合の効力発生日から30日以内に株主・会社間で株式の価格について協議が調った場合には、会社は、効力発生日から60日以内に支払をしなければなりません(会社法182条の5第1項)。

価格決定申立権

 上記の株式買取請求後、株式併合の効力発生日から30日以内に株主・会社間で株式の価格について協議が調わない場合には、株主または会社は、効力発生日から30日間経過後、効力発生日から60日以内までの間に、裁判所に対し価格決定の申立てをすることができます(会社法182条の5第2項)。

 この場合には、裁判所の非訟手続において株式の価格が決定され、会社は、最終的には、①当該決定された価格および②効力発生日から60日経過後から支払済みまでの年6%の割合による利息の合計額を支払わなければなりません(会社法182条の5第4項)。ただし、会社は、裁判所による価格の決定に先立って会社が公正な価格と認める額を支払うことができるため(会社法182条の5第5項)、このような価格決定前の支払制度による支払を行った場合には、当該支払額に対する支払後の利息は発生しません。

価格に不服がある場合のその他の対抗手段はあるか

株主総会決議取消の訴えについて

 株主総会について、①招集手続・決議方法の法令・定款違反または著しい不公正、②決議内容の定款違反、③特別利害関係人の議決権行使による著しく不当な決議がある場合には、株主は、株主総会決議の日から3か月以内に限り、当該株主総会決議取消の訴えを提起することができます(会社法831条1項)。

 株主に交付される対価が著しく不当な場合は、上記③に該当し得ると解されています。

株式併合の差止請求について

 株式併合が法令または定款に違反し、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、株式併合の効力が生じるまでの間に限り、株式併合の差止請求をすることができます(会社法182条の3)。

 ただし、上記の「法令または定款の違反」について、立法担当者は、株主に交付される対価が不当である場合に、取締役の善管注意義務・忠実義務違反の問題が生じ得るとしても、会社を名宛人とする法令または定款の違反となることはないと解しています。かかる見解を前提とするならば、株式併合後に1株未満の端数の処理として株主に交付される対価が不当であることは、差止事由には当たらないと考えられます。

【各対抗手段の行使可能期間】

各対抗手段の行使可能期間

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