MBOとは何か

コーポレート・M&A
村松 頼信弁護士

 MBOとはどのようなものなのでしょうか。

 MBOとは、上場会社において、経営者等が投資ファンドや金融機関から資金を得て、その会社の支配権を公開買付け(TOB)等の方法で取得してその会社を非上場化することを指します。

 MBOの手法としては、第一段階として、ファンド等から資金を得た受皿会社がTOB等の方法で対象会社の株式を取得します。その第一段階で取得しきれなかった残りの株式を、第二段階として、①全部取得条項付種類株式を利用する手法、②株式併合を利用する手法、または、③特別支配株主の株式等売渡請求の制度を利用する手法により強制的に取得します。

解説

MBOの意義

 「MBO」とは、「management buyout」 の略称であり、上場会社において、経営者等がプライベート・エクイティ・ファンド等の投資ファンドや金融機関から資金を得て、その会社の支配権をTOB等の方法で取得してその会社を非上場化することを指します。非上場後、数年の間に、企業価値を高めて再上場を図ることが予定されているケースもあり、その場合、投資ファンド等は、会社が再上場した際に資金の回収を図ることになります。

MBO

MBOの目的

 MBOが実施された企業は、その発行する株式の上場を廃止し、非上場企業となります。

 上場企業には、機関投資家、取引金融機関、経営者、従業員、取引先、顧客、そのほかの一般投資家など様々な株主が存在し、企業に対して多様な要求を行います。そのため、上場企業の経営者は、株主と株主以外のステークホルダーとの間で利害を調整しつつ、経営方針を決定し、事業を遂行していくことが迫られます。これに対し、MBO後の非上場企業の株主構成は、原則的に、経営者と経営者の経営方針を支持する投資ファンドなどに限られます。このように、MBOによって、コーポレートガバナンス(企業統治)の担い手が多数の不特定多数の株主から、経営者およびファンドなどの特定の株主に変わることにより、経営の自由度が高まり、それを活かして抜本的に経営改革を実施することが可能となります。そのため、MBOは、経営方針や経営体制の転換を図ることを目的として活用されるケースが多いといえます。

 そのほかに、MBOのメリットとしては、株主総会に関する手続を簡略化することによる意思決定の迅速化を図ることができることのほか、株主管理コストの削減を進められることも挙げられます。こうしたメリットと、上場によるメリット(資本市場からの資金調達、企業知名度の向上など)との比較考量も、MBO実施の判断における重要な要素となるといえます。

MBOの手法

 MBOを実施する企業は、通常、第一段階として、ファンド等から資金を得た受皿会社がTOB等の方法で対象会社の株式の取得を試みます。その第一段階で取得しきれなかった残りの株式を、第二段階として、①全部取得条項付種類株式、②株式併合、または、③特別支配株主の株式等売渡請求の制度を利用していわば強制的に取得します。

公開買付けの公正性担保措置

 MBOでは、一部の経営者が株主となるところ、取締役の善管注意義務・忠実義務の一環として株主共同の利益を図ることが期待される一方、株式の買主としての立場も有し、他の株主からの取得価格を低く抑える動機も有しており、利益相反関係が存在します。そのため、公開買付けの公正性を担保するための措置の実施が求められています。

 こうした公正性担保措置としては、実務上、以下の事項が実施されることが多くあります。

  • 公開買付けの対象会社における特別委員会(受皿会社・対象会社から独立した社外役員・外部の有識者等から構成される委員会)を設置し、その検討結果を踏まえて公開買付けに関する意見表明を行う。
  • MBOについて利害関係を有する役員を対象会社サイドでの検討プロセスに関与させない。
  • 独立した法律事務所からの助言を得る。
  • 対象会社における独立した第三者算定機関から、対象会社株式に係る株価算定書等を取得する。
  • 公開買付期間を比較的長期にすること等により、対抗的公開買付けの機会を確保するなど、公正性を担保する客観的状況を確保する。
  • MBOについて利害関係を有する役員以外の株主が保有する株式の過半数を上回る買付予定数の下限を設定する。

全部取得条項付種類株式を利用する手法 (①)

 上記①の全部取得条項付種類株式を利用する手法は、典型的には、TOB等の後に定款を変更して全ての普通株式を全部取得条項付種類株式とし、次に対象会社が新規に発行する株式を対価として全部取得条項付種類株式を取得し、その際に一般株主には端数株(1株未満の株式)が対価として交付されるように設計して、現金化し交付するというものです。

 たとえば、対象会社BにおいてMBOを行う際に、B会社の発行済株式総数100株のうち、受皿会社AがTOB等により70株を取得したものの、依然として20株を有する株主Xと10株の株式を有する株主Yが存在する場合、受皿会社AはB会社の定款を変更して、発行済みの普通株式(a株式)全部を全部取得条項付種類株式に変更するとともに、a株式の取得対価として別の種類株式(b株式)を発行できるようにします。

 そのうえで、B会社の株主総会決議により、a株式の全部を取得し、その対価としてb株式を交付することを決定します。定款変更およびa株式の全部取得のための株主総会は、それぞれ特別決議(過半数の議決権を有する株主が出席し、その3分の2以上の議決権を持って可決される決議)が必要となりますが(会社法309条2項3号、11号)、受皿会社Aは3分の2以上の株式を有しているため、いずれの決議も可能です。

 b株式をa株式の対価として交付する際には、受皿会社Aにのみb株式1株以上が交付され、株主B・CにはB株式1株未満が交付されるように設計します。たとえば、a株式50株に対してb株式1株を交付する割合とすれば、受皿会社Aにはb株式1.4株が交付される(70株÷50株=1.4株)のに対し、B株主には0.4株(20株÷50株=0.4株)、C株主には0.2株(10株÷50株=0.2株)が交付されます。B会社は受皿会社A、株主B・Cの有する1株未満のb株式(端数株)を一定の金額を支払って買い取り(会社法234条4項)、これによりB会社の株主はb株式1株を有する受皿会社Aのみとなります。

株式併合を利用する手法 (②)

 ②の株式併合を利用する手法は、典型的には、TOB等の後に、少数株主の保有する株式が1株未満の端数となるような比率により株式併合を行い、次に、少数株主に現金を支払ってその保有する1株未満の端数株を買い取るというものです。

 たとえば、上記3-2の例と同じく、対象会社BにおいてMBOを行う際に、B会社の発行済株式総数100株のうち、受皿会社AがTOB等により70株を取得したものの、依然として20株を有する株主Xと10株の株式を有する株主Yが存在する場合において、B会社の株主総会特別決議により(会社法180条2項、309条2項4号)、70株を1株にする株式併合を行い、その結果、株主Xは0.285株を、株主Yは0.142株をそれぞれ保有することになり、B会社はそれらの端数株を一定の金額を支払って買い取り(会社法234条4項)、これによりB会社の株主は株式1株を有する受皿会社Aのみとなります。

特別支配株主の株式等売渡請求の制度を利用する手法(③)

 ③の特別支配株主の株式等売渡請求の制度とは、B会社の特別支配株主A(総株主の議決権の10分の9以上を有する株主)は、B会社のほかの株主全員に対して、その有するB会社株式の全部を自分に売り渡すよう請求することができ、一定の手続を履践することにより、特別支配株主Aが一定の日にほかの株主の株式全部を強制的に取得することができるというものです(会社法179条~179条の10)。

各手法の留意点

 ③の手法を用いるには、MBOの対象となる会社の株式の10分の9を受皿会社が取得している必要があるため、TOBなどによって10分の9以上の株式を取得できるかどうかが、③とそれ以外の手法(①・②)のいずれを用いるかの分水嶺となります。

 また、①・②の手法を用いるにも、少なくとも、株主総会の特別決議を行うことができるだけの議決権数(3分の2以上)を受皿会社が確保することが必要になります。

 さらに、①・②の場合は、普通株式を全部取得条項付種類株式とする定款変更を行うこと(①の場合)または株式併合を行うこと(②の場合)について反対する株主は対象会社に対して株式の買取請求を行うことができます(会社法116条1項2号、182条の4)。また、③の場合は、受皿会社以外の株主が受皿会社に強制的に株式を取得されることになります。そのいずれの場合も、株式の売買価格について対象会社または受皿会社との交渉が成立しないときは、株主が売買価格の決定を申し立てることができ、申立てがあったときは対象会社または受皿会社は裁判所の決定する価格を株主に支払うことになります。

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