株主代表訴訟とはどのような制度か

コーポレート・M&A
松下 知輝弁護士

 当社は、建築事業を営んでいる株式会社です。今まで積極的な買収を行ってきましたが、各買収先の収益性は想定を下回っており、昨年には減損処理の結果、大幅な損失を計上してしまいました。この損失に関し、株主の方から当社監査役宛てで、担当取締役らの責任を追及する訴えの提起を求める通知が届きました。また、もし当社が各取締役の責任を追及しない場合は、株主代表訴訟を提起するとの内容も記載されています。株主代表訴訟とはどのような制度か教えてください。

 株主代表訴訟とは、一定の要件を満たす株主が、所定の手続を経たうえで、会社の代わりに役員その他一定の者の責任を追及する訴訟です。会社は、株主が問題としている内容を精査したうえで、対応方針を決め、必要に応じて訴訟提起、訴訟参加を検討することになります。

解説

株主代表訴訟の概要

 役員等が適正な業務を行わなかった場合には、当該役員等は任務懈怠責任(会社法423条1項)を負います。このような任務懈怠責任等の他、役員等は会社に対して取引債務その他様々な責任を負うことがあります。本来であれば、会社と役員等との間で委任関係があるので、会社が役員等に対して当該責任を追及することが原則です。しかし、責任を追及するべき会社側の役員等と責任を負う役員等の間には、同僚意識や上下関係があることも多く、会社が役員等の責任を追及することは事実上期待できないことが多いです。

 そこで、会社法では、会社が役員その他一定の者の責任を追及しようとしない場合に、株主が会社に代って責任追及をする株主による責任追及等の訴え」(会社法847条)が認められており、一般的にこの訴えは「株主代表訴訟」と呼ばれています(会社法847条1項)。

株主代表訴訟の概要

提訴要件

「株主」の範囲

 株主代表訴訟を提起できるのは、原則として6か月前(定款で下回る期間を定める場合には、その期間)から引き続き株式を有する株主に限られます(会社法847条1項)。ただし、非公開会社1 では6か月前からの保有要件は不要で、株主でありさえすれば株主代表訴訟を提起できます(同条2項)。

 また、株式数に関しては制限がなく、1株以上保有している者であれば株主代表訴訟を提訴することが可能です。なお、単元株制度が用いられている会社では、単元未満株主が株主代表訴訟を提訴できないことを定款で定めることができます(会社法847条1項)。

提訴請求

 株主は、株主代表訴訟を提起するに先立って、まず会社に役員等の責任を追及する訴えを提起するよう請求する必要があります(会社法847条1項および3項)。
 提訴請求の日から原則60日以内に会社が訴えを提起しない場合に、株主は株主代表訴訟を提起することができます(会社法847条3項)。

 このような提訴請求に関する要件は、会社に訴え提起を検討する機会を与える趣旨で設けられています。会社は、提訴請求書面を検討し、事実関係や法適用の調査を進めたうえで、訴えを提訴するかどうかを決定することになります。また、その決定は、株主代表訴訟を避けるためにも、提訴請求から60日以内に行うことが望ましいと考えられます。

 なお、60日間の検討期間が経過すると会社に回復することができない損害が生ずるおそれがある場合には、株主は提訴請求をせずに、ただちに株主代表訴訟を提起することができます(会社法847条5項)。

責任の範囲

 一般的に株主代表訴訟において追及されるのは、役員等の任務懈怠に関する責任(会社法423条1項)が多いですが、対象となる責任の範囲は、会社法上の責任に限られません。売買契約等により生じる役員等の会社に対する取引債務も含まれるとされており、株主代表訴訟の対象となる責任の範囲は広範です。一方、判例上、所有権に基づく登記移転義務に関しては代表訴訟を提起できないとされており(最高裁平成21年3月10日判決・民集63巻3号361頁)、すべての債務が株主代表訴訟の対象になるわけではありません。

 株主から提訴請求があったときには、その内容を法的に分析し、株主代表訴訟の対象になる責任かどうか検討しておく必要があります。

会社の訴訟関与

 会社が提訴請求に応じず、株主が株主代表訴訟を提起した場合、訴訟の原告は株主、被告は役員等になります。会社は判決の効力を受けるものの(民事訴訟法115条1項2号)、訴訟手続そのものには関与しないことになります。
 しかし、会社の意思決定に関連して株主代表訴訟が提起されている場合に、被告側(役員等)に加勢して、意思決定の正当性を訴訟の場で明らかにすることを会社が望む場合もしばしばあります。このような場合、会社は被告側(役員等)に補助参加することができます(会社法849条1項)。ただし、取締役、執行役等の側に補助参加する場合には、監査役等の同意が必要となる点に注意が必要です(同条3項)。

 また、会社が株主側に与して役員等の責任を追及したいという場合も想定できないわけではありません(ただし、会社が提訴請求に応じていないことからすればこのようなケースは多くないと思われます)。この場合でも会社は、共同訴訟参加または補助参加という形で原告側(株主)に与して訴訟に関与することができます(会社法849条1項)。
 会社としては、株主代表訴訟の内容等を検討したうえで、訴訟への関与の是非および関与方法を決定することになります。


  1. 非公開会社とは、その発行する株式全部に関し、譲渡制限を設けている会社を指します。 ↩︎

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