資本金等を減少するための手続

コーポレート・M&A
松下 知輝弁護士

 当社は、製造業を営む取締役会設置会社です。当社は、ここ数年間赤字を出しており、剰余金の配当等における分配可能額がマイナスの状態となっているため、配当を実施できていません。取締役会では、事業を立て直すために増資等を検討しているのですが、その前提として資本金および準備金(以下、併せて「資本金等」といいます)の額を減らして配当できる状態にしたいと考えています。資本金等を減少するための手続を教えてください。

 資本金等を減少するためには、原則として株主総会の決議および債権者異議手続を実施する必要があります。しかし、減少の対象や減少の程度によって必要な手続は異なります。資本金等の減少の計画と条件に照らして必要な手続を慎重に確認することが必要です。

解説

資本金等の額の減少を行う目的とデメリット

分配可能額の増加

 株主に対して無制限に配当等が実施されると、会社財産が不当に流出してしまい債権者の利益は害されます。そのため、会社法では、剰余金の配当等における分配可能額が定められており、会社はその範囲でのみ配当等を行うことができます(分配可能額は、剰余金を基礎とし、各費目を加減して計算されます。計算過程の詳細は会社法461条2項をご参照ください)。

 赤字が続くと分配可能額がマイナスになることがあり、このような状態を欠損と呼びます(会社計算規則151条参照)。欠損が生じると、資金調達や取引が難しくなる危険性があります。

 資本金等の額を減少すると減少分は剰余金となり分配可能額が増加するため、欠損の解消や配当の復活および増加を図ることができます。このように分配可能額の増加を目的として資本金等を減少するケースがしばしばあります。

税務メリット

 資本金が一定の額以下である場合、税率で優遇される(法人税法66条2項)等の税務メリットを享受することができます。このような税務メリットを目的として資本金を減少する場合もあります。

信用の低下

 資本金等の減少は、必ずしも財務状況が悪化している場合にのみ行われるものではありません。しかし、財務諸表が公開されていない未上場企業の場合、資本金により会社の規模および信用を判断されるケースも多く、資本金の減少が信用の低下に繋がることがしばしばあります。

資本金の額を減少する手続

株主総会の決議

(1)原則

 資本金の額を減少する場合、①減少する資本金の額、②減少額の全部または一部を準備金(資本準備金)の額とするときはその旨および額、③減少の効力発生日を定める必要があります(会社法447条1項)。

 ①~③は株主総会の特別決議によって定める必要があります(会社法309条2項9号)。特別決議が必要とされているのは、資本金の額を減少して分配可能な剰余金(その他資本剰余金)に変えることは、会社を部分的に清算するのに等しい重要な行為であると考えられているからです1

(2)例外

 ①定時株主総会決議により、②定時株主総会の日における欠損の額を超えない資本金の額を減少する場合、株主総会の決議は普通決議で足ります(会社法309条2項9号イおよびロ)。分配可能額がマイナスからゼロの間で変動する資本金の額の減少は、株主への配当等を伴う余地がなく、部分的な清算の側面が乏しいため、特別決議までは不要とされています。

 さらに、資本金の額の減少と同時に株式を発行し、資本金の減少の効力発生日後の資本金額が、効力発生日前の資本金額を下回らないときには、取締役の決定(取締役会が設置されている場合には取締役会の決議)によって資本金の額を減少することができます(会社法447条3項)。資本金の額の減少と株式の発行を合わせて考慮したときに、実質的に資本金の額が低下しないため、簡易な手続で足りると考えられているからです。

債権者異議手続

 資本金の額を減少すると、剰余金の配当等における分配可能額が増えます。分配可能額の増加は、債権者にとっては会社財産が流出する可能性が高まることを意味します。したがって、会社法は、資本金の額を減少する場合には、債権者を保護するために以下の手続を定めています(会社法449条1項)。

(1)公告および催告

減少の内容や一定の期間内(最低1か月)に異議を述べることができる旨等の一定の事項を官報で公告し、②知れている債権者に各別に催告する必要があります(会社法449条2項)。ただし、官報以外に、定款に定められた日刊新聞または電子公告により公告をするときは、②の各別の催告は必要ありません(会社法449条3項)。

(2)債権者への対応

 債権者が異議を述べなかった場合には、資本金の額の減少を承認したものとみなされます(会社法449条4項)。債権者から異議があったときは、当該債権者へ弁済や担保の提供等をする必要があります。もっとも、債権者を害するおそれがないときは弁済や担保提供等をする必要はありません(会社法449条5項)。債権者を害するおそれがない場合としては、たとえば、すでに十分な担保が設定されている場合等が考えられます。

準備金の額を減少する手続

株主総会の決議

(1)原則

 準備金の額を減少する際にも、減少する額等を株主総会の普通決議で定める必要があります(会社法448条1項)。準備金は、資本金と比べてある程度柔軟に減少できるよう設計されており、原則として特別決議が必要となる資本金の額の減少と比べると、準備金の額の減少は、この点で手続が緩和されています。

(2)例外

 ①会計監査人設置会社であり、②(監査等委員以外の)取締役の任期が1年を超えず、③監査役会設置会社、監査等委員会設置会社または指名委員会設置会社である会社は、取締役会に対する統制を期待できるため、定款により、取締役会が決定できる事項を拡張することができます(会社法459条1項)。また、当該定款の定めは、会計監査報告に無限定適正意見が含まれていることや監査役会等から会計監査人の監査の方法等が相当でないと認める意見がないことを満たす場合に、効力が認められます(会社法459条2項、会社計算規則155条)。

 上記の各要件を満たす場合には、準備金の額の減少に係る決定も、会社法459条1項に基づき、定款により取締役会の決議事項とすることができます(会社法459条1項2号)。

 また、準備金の減少と同時に株式を発行し、効力発生日前後で準備金の額が下がらない場合には、取締役の決定(取締役会が設置されている場合には取締役会の決議)によって準備金を減少することができます(会社法448条3項)。実質的に準備金の金額が低下しない場合には、簡易な手続で足りると考えられているからです。

債権者異議手続

(1)原則

 準備金の額を減少する場合も、資本金の額の減少と同様に剰余金の配当等における分配可能額が増えるため、債権者異議手続が必要になります(会社法449条1項)。

(2)例外

 ①定時株主総会決議により(会社法459条に基づく定款がある場合には取締役会決議によることも可能(会社法459条3項))、②定時株主総会の日等における欠損の額を超えない準備金の額を減少する場合、債権者異議手続は不要です(会社法449条1項ただし書き)。資本金の減少と同様に、この場合は部分的な清算の要素が乏しいと考えられているからです。

 また、減少する準備金の額の全部を資本金とする場合も、債権者異議手続は不要です(会社法449条1項柱書)。準備金から資本金へ変更しても、剰余金の分配可能額は変わらず、むしろ資本金に変更されることで減少の手続が加重されるため、債権者にとって有利であると考えられるからです。

おわりに

 資本金の減少か、準備金の減少か、剰余金の分配可能額を発生させる場合とそうでない場合か等によって、それぞれ手続が異なるので、慎重に確認することが必要です。


  1. 江頭憲治郎「株式会社法(第7版)」(有斐閣、2017)695頁 ↩︎

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