スリランカへ進出する時に知っておきたい、外資規制と会社法

国際取引・海外進出
戸塚 悠里弁護士

投資先としての魅力に溢れたスリランカという国

 スリランカという国をご存知でしょうか。名前を聞いたことがないという方は少ないでしょう。かつての名称セイロンはむしろ紅茶の種類としてよく知られていると思います。また、社会科の授業で習う首都の名前(スリジャヤワルダナプラコッテ)があまりに長いことで、覚えておられる方もいらっしゃるかもしれません。ちなみに、スリジャヤ・ワルダナ・プラコッテという区切り方と思われている方も多いのですが、スリ・ジャヤワルダナプラ・コッテと区切ります。興味を持たれた方は、なぜそのような区切り方になるのか是非調べてみてください。

 スリランカの正式名称はスリランカ民主社会主義共和国(Democratic Socialist Republic of Sri Lanka)です。インドのそばに浮かぶ、北海道よりは小さい島国であり、人口は2000万人を超えています。人口規模からすると台湾に近く、また、スリランカの方がインドより先に発展しており、大国インドの近くに所在する島という関係が中国と台湾の関係に似ているため、インドとスリランカを中国と台湾になぞらえて説明する方もいます。

 スリランカの多数派宗教は仏教です。ヒンドゥ教が多数派であるインドとは異なります。民族は、シンハラ族、タミル族が多く、シンハラ語、タミル語が公用語となっています。英語は連結語(link language)として位置づけられています(スリランカ憲法18条)。スリランカ投資委員会(Board of Investment of Sri Lanka。以下、「BOI」と言います)が発行する投資ガイドでも、「英語は、政府機関、民間企業・金融機関における一般的なビジネス言語」とされています。新興国において英語でビジネスが進められるのは大きな魅力と言えるでしょう。

 スリランカは、古くから貿易などで栄えていたものの、長年の内戦で経済は停滞していました。2009年の内戦終結以降、経済成長への道に復帰しています。近年は急速に成長する大国インドの陰に隠れがちですが、IMF(International Monetary Fund)調査の2015年の一人あたりGDPは、スリランカが約3,573米ドルであるのに対し、インドは約1,603米ドルであり、スリランカはインドの倍程度です。識字率も比較的高いと言われており、スリランカは、南アジアでは相当の実力を持った国と言えます。

 本稿では、スリランカに進出する際に知っておくべき法的知識として、出資に関する外資規制と会社法を簡単に紹介します。

外資規制(出資規制)

 外国企業がスリランカの企業に出資する場合には、以下のような規制に留意する必要があります。

為替管理法(Exchange Control Act)

 外国投資については、為替管理法に基づき、政府通達(2002年4月19日付け通達 No. 1232/14、2002年8月8日付け通達 No. 1248/19および2010年12月21日付け通達No. 1685/2)により、外国法人に対してもスリランカの会社への出資が原則として100%まで認められています
 もっとも、一定の事業分野に関しては、外国人や外国法人に対するスリランカの会社の株式の発行・譲渡が禁止され、あるいは制限や条件を付されたうえで認められています。

禁止事業

 以下の事業を実施または予定する会社の株式には、外資が出資することはできません。

① 貸金業
② 質屋業
③ 資本金100万米ドル未満の小売業
④ 沿岸漁業
⑤ 警備サービス業(個人・民間企業に対する管理、評価およびコンサルティングを含む。)

制限・条件付きで認められている事業

外国人や外国法人による出資につき発行済み資本の40%を限度とすることが原則とされている事業

 以下の事業については、発行済み資本の40%を限度として外国人や外国法人による出資が認められています。これらの事業分野において、40%を超える出資については、BOIの承認が必要とされています。

① スリランカの輸出が、国際的に定められた割当制限の対象となる商品の製造
② 茶、ゴム、ココナッツ、ココア、米、砂糖および香辛料の栽培および一次加工
③ 再生不可能な資源の採掘および一次加工
④ スリランカの木材を使用する林業
⑤ 漁業(遠洋漁業)
⑥ マスコミ
⑦ 教育産業
⑧ 貨物輸送
⑨ 旅行代理店
⑩ 海運代理業
所管する政府当局が承認する発行済み資本の割合が上限とされる業種

 以下の事業を実施・予定する会社の株式への外国人や外国法人による出資は、当該事業への外国投資を所管する政府当局が承認する発行済み資本の割合が上限とされます。

① 航空運送業
② 沿岸海運業
③ 産業促進法(Industrial Promotion Act)の第2表に定める事業:

-武器・弾薬・爆発物・軍用車両・軍用設備・軍用機・その他軍用ハードウエアを製造する事業
-毒物・麻薬・アルコール類・危険薬物・ 危険毒物・有害物質・発癌性物質を製造する事業
-貨幣・硬貨・証券証書類を作成する事業

④ 大規模な機械化された宝石採掘業
⑤ 宝くじ事業

その他

 上記2-1のとおり一定の出資が認められている事業分野においても、個別の産業に関する法令でさらに追加の要件(株主構成や取締役の国籍要件等)が定められていることもあります。また、上記2-1の為替管理法およびその通達に基づく外資規制の他にも、個別の産業に関する法令や運用において外資規制が設けられていることもあります。スリランカにおける出資に関する外資規制は不明確な部分も多いため、出資の判断に際しては専門家に相談をすべきでしょう。

会社法

 スリランカにおいて会社(日本法における株式会社に近い会社)を設立する場合の機関は、以下のとおりです1。以下で言及する会社法はすべてスリランカ会社法です。

 まず、閉鎖的な会社が想定されている非公開会社(private company)では、取締役1名のほか、秘書役、会計監査人を選任することが最低限必要です。一方、公開会社(public company)では、取締役を2名以上選任しなければならない(会社法201条)とされていますが、この点を除いて、機関の構成に関する規制は非公開会社と同様です。

株主

 株主について、非公開会社においては、2名以上50名以下(会社法4条2項、27条)、公開会社においては7名以上でなければならないとされているため、日本企業がスリランカに子会社を設立する場合には、その子会社を単独で100%子会社とすることはできません。この場合には関連会社や担当役員等に株主となってもらうことを検討する必要があります。

株主総会

 定時株主総会は、暦年ごとに少なくとも1回は招集・開催する必要があります(会社法133条)。臨時株主総会は、定款で定めるところに従い、必要に応じて招集・開催することができます。また、一定の要件を満たす株主から要求があった場合には、会社は臨時株主総会を招集しなければなりません(会社法134条1項、136条)。

 株主総会については書面決議を行うことも認められており、定款に定めるところに従い、総議決権の85%以上を保有する株主の同意があれば、株主総会を開催せずに書面での決議を行うことが可能です(会社法144条1項)。

 書面決議ではなく、実際に株主総会を開催する場合は、株主に対する招集通知が原則として必要であり2、定時株主総会または特別決議事項3を議題に含む株主総会に際しては、総会開催日の15営業日以上前に、それ以外の株主総会の場合は、非公開会社においては5営業日以上前、公開会社においては10営業日以上前に招集通知を発送する必要があります(会社法135条)。

 株主総会の定足数は、非公開会社においては2名以上、公開会社においては3名以上です(会社法136条)。

 決議要件については、普通決議の場合は過半数、特別決議の場合は総議決権の75%以上の賛成を要します(会社法143条)。行使された議決権の数の集計方法は、定款において挙手が原則とされているのが通常ですが、この場合は頭数での集計となります(会社法136条)。頭数での集計では正確な議決権保有割合を反映しないため不都合がある場合には、投票(poll)を実施することになり(会社法136条、140条、141条)、定款にはかかる投票に関する規定(投票を要求できる場合等についての規定)を置くのが通常です。

非公開会社 公開会社
機関構成 株主 2名以上50名以下 7名以上
取締役 1名以上 2名以上
秘書役 必要 必要
会計監査人 必要 必要
株主総会の運営 株主総会の定足数 2名以上 3名以上
株主総会招集通知の発送時期 定時株主総会
または特別決議事項を議題に含む株主総会
総会開催日の15営業日以上前 総会開催日の15営業日以上前
上記以外の株主総会 5営業日以上前 10営業日以上前

取締役、取締役会

 取締役株主総会における普通決議により選任または解任されます(会社法204条、206条)。取締役会における決議は、通常は過半数の賛成により行われます(会社法モデル定款28条)。議長は賛否が拮抗した際の決定権(キャスティングボート)を持っています(会社法モデル定款28条)。取締役全員の同意があれば、書面決議も可能です(会社法モデル定款30条)

秘書役

 秘書役(secretary)は、公開会社・非公開会社のいずれにおいても、設置が必要です(会社法221条)。秘書役は、会社法上要求される文書や記録の作成・保存等を行う機関であり、英国の法体系を継受している国ではその設置が要求されていることが多く見受けられます。

会計監査人

 会計監査人(auditor)は、公開会社・非公開会社のいずれにおいても、設置が必要であり、会社の会計監査を担当します(会社法154条)。スリランカ勅許会計士協会(Institute of Chartered Accounts of Sri Lanka)の会員または登録された会計士であることを要し、公開会社においては、スリランカ勅許会計士協会の会員であることが必須とされています(会社法157条)。会計監査人は、毎年の定時株主総会の決議により選任する必要があります(会社法154条)。


  1. なお、スリランカにおいて行う予定の事業分野、事業範囲、規模によっては、支店、駐在員事務所の設立なども考えられます。 ↩︎

  2. 定時株主総会については総株主の同意があれば、それ以外の株主総会については95%以上の株主の同意があれば、招集手続を省略することができます(会社法135条3項)。 ↩︎

  3. 定款変更、重要な取引の承認、合併、減資、自主清算、商号変更、会社のステータスの変更が特別決議事項とされています(会社法92条)。 ↩︎

  • facebook
  • Twitter

関連する特集

国際取引・海外進出の人気特集

  1. グローバルリスクマネジメント 第6回 ロシアへの投資を行う際に知っておきたい現状
  2. アラブ首長国連邦(UAE)進出の法務 第4回 紛争解決および強制執行のポイント
  3. ベトナム進出における法的な留意点
  4. グローバルリスクマネジメント 第5回 危機的状況下で企業をどのように防衛するべきか