外国為替・送金規制の内容と注意点

国際取引・海外進出

 日本企業であるA社は、新興国であるX国の関連法人であるB社に技術ライセンスをしており、B社がA社の技術を実施して製造した商品のX国内での販売数量に応じ、技術ライセンス契約に基づいてロイヤリティを支払うことになっています。
 しかし、B社からA社への海外送金の際に、様々な書類の提示や手続が要求され、米ドル建ての送金はできない等と言われましたが、どういうことなのでしょうか。
 また、それとは別に、A社が原料仕入先であるY国のC社に購入原料の売買代金を送金しようとしたところ、Y国への送金というだけの理由で、日本の銀行担当者に送金を拒否されました。A社としては法に触れるような取引はしていませんが、何か問題があるのでしょうか。

 X国から日本を含めた国外への送金には、X国の現地法令上、種々の規制がある可能性があります。たとえば、海外送金の際にはその根拠になる契約書や証憑その他の資料を提示することを要したり、そもそも技術ライセンスに対価を取るのであればX国で国家登記が必要であるゆえに、送金元銀行がその登記証明を確認したりする場合があります。
 そのため、これらの資料を提示できないとX国から日本への海外送金ができない場合もあります
 日本からY国への送金については、日本の外為法や米国OFAC規制に基づき、一定の国・地域や特定産業への送金のほか、犯罪組織等として指定された者への送金が禁じられ、または制限される場合があります。
 また、特に日本の大手銀行は近年これらの規制に敏感になっているため、これらの規制に直接は該当しない適法な送金であっても、送金元銀行が規制対象国への送金をスムーズに受け付けず、送金先や目的について時間をかけて厳格な審査を行う場合があります。

解説

目次

  1. 海外から日本への送金に対する規制
  2. 外国為替・送金に関する具体的な問題点
    1. 技術ライセンス契約に基づくロイヤリティの支払い
    2. 売買契約に基づく代金の支払い
  3. 日本から海外への送金
  4. 日本から海外への送金が規制される場合
    1. 外為法、米国法による規制
    2. 規制対象国への送金の留意点
  5. 犯罪による収益の移転に関する法律

海外から日本への送金に対する規制

 日本から海外への送金は、後述するような例外的な場合を除けば原則として自由であり、送金の理由や金額を問わず簡単に行うことができます。

 しかし、中国やロシアをはじめとする海外諸国では、国外への海外送金が自由に行えず、日本や欧米では要しないような種々の面倒な手続や書類を送金元銀行に要求される場合がありますので、注意が必要です。
 これは、特に新興国では自国経済を保護するため、先進国への通貨の流出を極力規制しようという考えがあるためです。

外国為替・送金に関する具体的な問題点

技術ライセンス契約に基づくロイヤリティの支払い

 上記の例のように、海外送金の理由(ロイヤリティの支払い)が技術ライセンスという無体財産の供与への対価として行われる場合には、その根拠が厳しく審査される傾向にあります。

 たとえば、A社とB社の間で締結された技術ライセンス契約のほか、これに基づく製品の販売数量を示す証憑の提示が求められ、送金額が契約に基づいて計算された金額と一致しているかも含めて審査される場合があります。
 また、送金元銀行は、海外送金の原因となった私法上の契約に加え、取引の原因となる法律関係(上記の例でいえば、技術ライセンス)が国家登記を経ないと適式に成立しないというような場合において、その国家登記を証明する文書の提出を求めることがあります。すなわち、契約上の債務は適法に履行されていても、国家登記を怠っていれば、契約に基づく海外送金ができなくなるおそれがあるということです。

売買契約に基づく代金の支払い

 海外送金をめぐる問題は、技術ライセンスに限らず、通常の売買契約に基づく代金の支払いの場合(上記の例でいえば、A社がB社に製品を販売してB社がA社にその代金を支払う場合)でも同様で、売買取引契約書のほか船積書類等が審査される場合があります。
 ここで注意が必要なのは、商流(船積書類に記載されている商品の流れ)と代金決済の流れが異なる場合に、これらの同一性を送金元銀行が確認できなかった結果、送金の根拠が明らかでないことから、手続に支障が生じる場合があるということです。
 その他、海外送金の際に用いる通貨にも注意が必要です。国によっては、送金元銀行の通貨でしか送金ができない場合や、外貨送金を行うために別途手続が必要である場合もあります。

日本から海外への送金

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