外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)とはどのような制度か

国際取引・海外進出
大牟田 啓弁護士

 小売業を営む当社は、法人税率が15%であるX国に子会社を設立してX国における小売業を行うことを検討していますが、タックスヘイブン対策税制という税制が問題になることがあると聞きました。
 タックスヘイブン対策税制とは、どのような税制でしょうか。また、タックスヘイブン対策税制が適用されない場合もあるのでしょうか。

 タックスヘイブン対策税制とは、法人税がゼロまたは税負担率が20%未満である、外国の子会社等の所得を日本の親会社等の所得に合算して課税される税制です。
 X国の法人税率は15%ですから、子会社の実際の税負担率が20%未満となる場合には、タックスヘイブン対策税制の対象となり、貴社の税負担が増加することがあり得ます。
 なお、タックスヘイブン対策税制には適用除外の制度があります。X国に子会社の店舗等が存在し、事業の管理運営を自ら行っている等の要件を満たす場合には、タックスヘイブン対策税制の適用除外となることが考えられます。

解説

注:本Q&Aでは、日本国における外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)に限定して解説しています。実際の取引では、日本国と子会社等の所在国との間で締結された租税条約、租税に関する協定等の定めにも留意しつつ、課税関係の検討を行う必要があることにご注意ください。

外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)の概要

 外国子会社合算税制タックスヘイブン対策税制)とは、租税回避地(タックスヘイブン)に設立した子会社等を利用した租税回避行為を防止するために1978年度改正租税特別措置法で導入された税制です。
 具体的には、外国関係会社のうち、税負担が著しく軽いとされるもの(これを「特定外国子会社等」といい、詳しくは2-3で説明します)について、後述する一定の適用除外の場合を除いて、親会社等である内国法人が保有する株式等に対応するものとして計算された金額をその内国法人の所得の額とみなして、内国法人の所得に合算して課税されます。
 以下、この税制のことをタックスヘイブン対策税制と呼んで詳しく説明していきます。

適用対象となる内国法人および特定外国子会社等の判定

適用対象となる内国法人の判定

 タックスヘイブン対策税制の適用を受ける内国法人は、直接および間接に保有する外国法人の株式等の数または出資の合計額の割合が10%以上であるものです(租税特別措置法66条の6第2項第1号柱書)。
 この判定においては、内国法人が支配関係等のある同族株主グループ(例えば、①親族関係等のある個人または②親子会社等の支配関係のある法人)を形成している場合には、そのグループ全体の保有株式数等の割合により判定します。

外国関係会社の判定

 「外国関係会社」とは、外国法人のうち、内国法人が直接および間接に保有する株式等の数または出資の合計額の割合が50%を超えるものをいいます(租税特別措置法66条の6第2項第1号柱書)。
 なお、外国法人が議決権または配当等に関して内容の異なる種類株式等を発行している場合には、所定の方法で計算した割合によって判定します(租税特別措置法66条の6第2項第1号柱書カッコ書、同号イないしハ)。

特定外国子会社等の判定

 特定外国子会社等とは、外国関係会社のうち、以下のいずれかに該当するものをいいます(租税特別措置法施行令39条の14第1項各号)。

  1. 法人の所得に対して課される税が存在しない国又は地域に本店または主たる事務所を有する外国関係会社
  2. その事業年度の所得に対して課される租税の額が、当該所得の20%未満である外国関係会社

 ②の判定においては、子会社等の所在国または地域の法定税率によってタックスヘイブン対策税制が適用されるか否かが自動的に定まるわけではなく、当該子会社の事業年度ごとに実際に負担する法人税の割合によって、特定外国子会社等に該当するか否かが異なることに留意が必要です。

 なお、②の判定における計算にあたっては、分母となる所得の金額に所在地国の法令による非課税所得の一部を加算するなど、一定の調整が必要となります(租税特別措置法施行令39条の14第2項各号)。

特定外国子会社等の所得の合算

 内国法人および特定外国子会社等については、後述する適用除外の場合を除いて、下の図のように、一定の方法により計算された金額が内国法人の所得金額に加算して課税されます(租税特別措置法66条の4第4項)。

特定外国子会社等の所得の合算

 数字を用いた計算過程としては、下の図のようなものとなります(なお、数字はあくまでも一例です)。

特定外国子会社等の所得の合算の計算過程

適用除外

 特定外国子会社が以下の適用除外要件の全てを満たす場合には、前記の課税は適用されません(租税特別措置法66条の4第3項)。

  1. 事業基準
    主たる事業が株式等の保有等の一定の事業でないこと
  2. 実体基準
    本店所在地国に主たる事業に必要な事務所、店舗、工場等の固定施設を有すること
  3. 管理支配基準
    本店所在地国において事業の管理、支配および運営を自ら行っていること
  4. 非関連者基準又は所在地国基準

    ア 非関連者基準(卸売業、銀行業、信託業、証券業、保険業、水運業または航空運送業の場合)
    非関連者との取引割合が50%以上であること

    イ 所在地国基準(ア以外の業種の場合)
    事業を主として本店所在地国において行っていること

 ③の管理支配基準の判定は、(ア)特定外国子会社等の株主総会及び取締役会等の開催、(イ)役員としての職務執行、(ウ)会計帳簿の作成及び保管等が行われている場所並びにその他の状況を勘案の上行うものとされています(租税特別措置法通達66の6-16)。

 設例の場合、X国の子会社は小売業を営む予定なので、①の要件は満たすものと考えられ、また、④の要件については所在地国基準が適用されるものと考えられます。
 したがって、子会社が、②X国に店舗等を有し、③事業の管理、支配及び運営を自ら行い、④事業を主としてX国で行っている場合には、タックスヘイブン対策税制の適用除外となることが考えられます。

まとめ

  1. タックスヘイブン対策税制とは、租税回避地を利用した国際的な租税回避行為を防止するために設けられている税制です。税負担の軽い特定外国子会社の所得として一定の方法により計算した金額を、特定外国子会社の株式等を保有する内国法人の所得に加算して課税するものです。

  2. タックスヘイブン対策税制の適用対象法人となるかどうかは、内国法人と外国法人との間の株式等の保有関係及び外国法人の実際の税負担率によって決まります。

  3. 適用除外の制度があり、子会社等が本店所在地国に固定施設を有し、自ら事業を管理運営しているなど、子会社等が本店所在地国において事業を行っている実体があるものと認められるための全ての適用除外要件を満たす場合には、タックスヘイブン対策税制は適用されません。
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