中国企業との代理店契約に際しての留意点

国際取引・海外進出

 当社は中国での販路を有していないため、中国の販売代理店に販売を委ねようと考えています。中国企業との代理店契約においてはどのような点に注意が必要でしょうか。また、販売代理店の販売成績が芳しくない場合にどのような対応手段があるでしょうか。

 国土が広く、地域により商慣習も異なる中国において、外国企業(メーカー)が販路開拓にあたり中国の販売代理店を起用する必要性は高く、昔も今も変わらず一般的な販売モデルと考えられています。

 中国では代理店保護法などの販売代理店に関する特別な法令・規制は存在しませんが、2007年以降「独占禁止法」などの競争法整備・執行の強化が進んでおり、販売代理店契約で一般的にみかける販売地域分割などの制限条項が競争法に抵触すると判断されるリスクに注意する必要性が高まっています。

 販売代理店の販売成績が芳しくない場合には、契約終了条項(自動更新の拒絶、事前通知による解除権、違約の場合の解除権など)に従って契約を終了させることはできます。継続的契約の解消の場面において、予告期間、補償金の支払などを要求する明確な法令やルールは存在しませんが、契約終了に際し合理的な予告期間を与えていない場合に、販売代理店が義務履行として費やした広告宣伝費などについてメーカーの販売代理店への損害賠償責任を認めた中国の裁判例はいくつか存在します。そのため、販売代理店との契約を終了させる場合には、販売代理店に対して個別事案に見合った十分な予告期間などを与えるなどの対応も検討する必要があります。

解説

中国企業を販売代理店とする販売方式の必要性、関連する法規制の状況

販売代理店を通じた販売の必要性

 国土が広く、地域により商慣習も異なる中国において外国企業(メーカー)が販路を構築しようとする場合、中国の販売代理店を起用し、彼らの販売網(人的関係)を通じて販売を行う必要性は高いと考えられます。
 外国企業にとっては投資リスクを抑えつつ中国という巨大マーケットにアクセスできる効率的な方法として、改革開放後の昔から現在まで存在する一般的な販売モデルといえます。

 この点、中国で卸売・小売業における外資規制の緩和が進んだのは2004年以降のことであり、それ以前は外国製品の輸入・販売は、「対外貿易権」を有する中国資本の販売代理店を通じて行うしか手段がなかったという経緯もあります。現在では一部の製品を除き、外国企業が100%出資する販売子会社の設立まで認められましたが、それでも中国で外資企業だけで販売網をカバーするのは容易ではなく、販売代理店を起用するニーズは今なお高いといえます。

中国における販売代理店に関する法規制の状況

(1)販売代理店契約を終了させる場合の法規制と裁判例

 中国においては、代理店保護法のような販売代理店に関する特別な法令・規制は存在しません。また、長期間にわたり多数回更新されてきた販売代理店契約(継続的契約)を終了させる場合に、正当理由、予告期間、補償金の支払を法的条件とするような特別な法律や裁判所の解釈なども存在しません
 しかし、個別の事情により、信義則違反などを根拠としてメーカーの販売代理店への損害賠償責任を認めた中国の裁判例はいくつか存在しますので、実際の対応には留意が必要です。

(2)競争法規制の整備・執行の強化

 また、社会主義市場経済の中国でも2008年8月から「独占禁止法」が施行され、資本主義国家と同様(あるいはそれ以上に)、競争法規制の整備・執行の強化が急ピッチで進められており、販売代理店契約で一般的にみかける制限条項、取引条件の設定には、これまで以上に競争法からのリスク分析が必要となっています。

中国市場の変化に伴うビジネス的視点からの販売代理店の活用の必要性

 昨今では中国市場の巨大化とともに、価格競争激化、消費者ニーズの多様化、ECモールなどを通じた電子商取引の急増などの変化が目まぐるしく進んでおり、外国企業がいかに積極的に販売代理店を「活用」して中国市場の変化に迅速・適切に対応できるかもビジネス上大きなポイントとなっています。そのため、以前に締結され、更新されている販売代理店契約についても、上記のような視点から項目の追加・補充などの見直しを行なっておくことも考えられます。

【見直し項目の一例】
  • 市場調査の実施、マーケティング・ブランド戦略の策定、中国市場に合わせた製品ラインナップ
  • 販売チャンネルに応じた具体的対応
  • 模倣品に関する積極的取締り対応

中国企業との販売代理店契約を作成する場合の注意点

販売代理店契約の法的性格

 一般的に、販売代理店契約には、①Agency Agreement(販売委託方式型。中国語で代理業者は「代理商」、代理店契約は「代理商契約」とよばれます)と、②Distributorship Agreement販売店が客先との売買当事者となるいわゆる「販売店方式型」。中国語で販売店は「経銷商」、販売店契約は「経銷契約」とよばれます)が存在します。

 中国においても、販売代理店契約といえば、②の販売店契約を指すことが圧倒的に多いため、設例も②の販売店契約を前提としています。なお、中国でも販売代理店契約について①②の法的性格の違いが強く意識されていないことも多く、契約名と契約内容が法的に一致していないことも実際によくみかけます。契約内容が明確であれば大きな問題になることはないと思いますが、そうでない場合、将来的な紛争につながる可能性も高まりますので留意が必要です。

競争法上注意すべき事項

 上述のとおり、中国においては、主に「独占禁止法」、「不正競争防止法」(以下、「競争法」といいます)に違反すると認定されるリスクに注意しながら販売代理店契約を検討する必要性が高まっています。ただし、中国では日本の「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」のような詳細なガイドラインは現時点で公表されておらず、代表的な処罰例の集積もないため、下記の「要注意事項」について白黒つけることが困難な場合が多く、契約で規定したとしても、実際の管理をどこまで厳格にするかは個別的にリスクの程度を見極めながら行っているのが一般的と思われます。

(1)地域分割(割当地域外での販売を禁じる)

根拠条文 問題となりうる点 行政処分の内容 一般的なリスク評価と現実的対応
「支配的地位の濫用行為」の該当性
(「独占禁止法」
17条1項5号)
「市場支配的地位を有する者」が「正当な理由がなく・・」「・・その他不合理な取引条件を付加する行為」とみなされ行政処分を受けるリスク。

・「不合理な取引条件」の判断基準の詳細なガイドラインは未公表。
・違法所得没収、併せて前年度販売額の1%以上10%以下の過料 ・地域分割に関し独禁法違反などで処罰されている事例はある。特に関連市場においてシェアが高いケースにおいては注意が必要。
・一方、地域分割は中国では実務的にも一般的。関連市場においてシェアが低いのであればリスクとしては一般的には低いといえる。

(2)ECモール等のインターネットでの販売制限(特定ECモールでの販売禁止等)

根拠条文 問題となりうる点 行政処分の内容 一般的なリスク評価と現実的対応
「支配的地位の濫用行為」の該当性(「独占禁止法」
17条1項5号)
上記同様に「不合理な取引条件」の該当性が問題となる。

・中国ではB to CのECモールでの販売が拡大しており、かかる販売により安売り販売されやすい状況がある。B to CのECモールは、京東商城(JD.com)、アリババが運営する天猫(T-mall)の2大プラットフォームで8割のシェアを占める。JD.comは、先行するT-mallに対抗するため、特に家電製品などについては日常的に価格攻勢をかけているといわれる。
・最近では天猫国際(T-mall global)などの「越境EC」サイトにおいて、外国企業が直接中国のエンドユーザーに販売できるチャンネルも整備されつつある。
・違法所得没収、併せて前年度販売額の1%以上10%以下の過料 ・ECサイトでの販売を制限することに合理的な理由(たとえば消費者の安全・健康など観点からインターネット販売が適さないなど)があれば、「不合理な取引条件」と評価されない可能性は高い。一方で、インターネット販売を禁止することの唯一の目的が価格維持にある場合、後述の再販売価格維持と同様、独占禁止法違反と認定されるリスクは高いと思われる。特定のECモールでの販売を禁じることは、避けることが望ましい。

(3)再販売価格の維持(再販売価格を固定する、再販最低価格を設定する等)

根拠条文 問題となりうる点 行政処分の内容 一般的なリスク評価と現実的対応
取引相手との独占合意の該当性
(「独占禁止法」
14条1号)
独占合意とみなされた場合に行政処分を受けるリスク ・違法所得没収、併せて前年度販売額の1%以上10%以下の過料 ・再販売価格の維持に関する合意はそれだけで独占禁止法違反とみなされる可能性が高いので避けるべき。

(4)競合製品の取扱い制限

根拠条文 問題となりうる点 行政処分の内容 一般的なリスク評価と現実的対応
「支配的地位の濫用行為」の該当性(「独占禁止法」17条1項5号) 上記同様に「不合理な取引条件」の該当性が問題となる。 ・違法所得没収、併せて前年度販売額の1%以上10%以下の過料 ・基本的に、上記の地域分割と同様に考えられる。
・一般的に独占的販売権を付与する場合は、「不合理な取引条件」とみなされるリスクは低い。

販売代理店契約においてその他注意すべき事項

【販売代理店契約においてその他注意すべき事項】

注意事項 補足説明
独占的販売権を付与する場合 外国企業自身の販売も想定されうる場合(越境ECモールなどを通じた販売もあり得る場合)、当該外国企業自身による販売権は認められることは明記しておく。
インセンティブプラン導入 契約において明確なインセンティブプランを定めることもある。中国では、民間企業・国有企業問わず、売買取引において商業上の利益を得る目的で行われる贈収賄は「商業賄賂」として禁止され、行政処罰・刑事処罰の対象にもなり得る。
たとえば、販売代理店の担当者へのキックバックはわかりやすい例だが、それ以外にも販売代理店に売上割戻し、奨励金、協賛金名目の支払等を行う場合でも、「商業賄賂」とみなされる場合がある点に留意が必要である。
外国企業自身が中国で処罰を受けた例は聞かないが、中国の販売子会社を通じて販売代理店と契約しているケースでは、中国販売子会社が処罰されたケースは多く存在する。
模倣品対策への協力 模倣品対策としては、現地での証拠保全、行政機関などの協力が不可欠となるため、販売代理店に積極的な取り組みを求める必要性が高く、契約上も販売代理店に当該協力義務を課するべきである。また、過去に模倣品対策の経験・実績のある販売代理店を起用することが望ましい。

販売成績の芳しくない販売代理店に対する対応手段

契約終了条項に従って契約を終了する場合の留意点

 販売成績の芳しくない販売代理店に対して、販売代理店契約の契約終了条項(自動更新の拒絶、事前通知による解除権、違約の場合の解除権など)に従って契約を終了させることはできます。日本のように、継続的契約の解消の場面において、正当理由、予告期間、補償金の支払などを要求する判例法理、法令や明確なルールは存在しません。
 しかしながら、このことは複数回更新がなされた販売代理店契約(継続的契約)の解消において、契約どおり処理していればメーカーが一切法的責任を負わされないということではありませんので留意が必要です。

 たとえば、販売代理店が契約に定める義務履行の一環として広告などの販促活動などを行うことが考えられますが、販売代理店は当該履行により多額の費用が発生したことを理由として、契約法などを根拠に、当該費用に関する損害賠償の請求をしてくることもあり、現にそのような請求を認める中国の裁判例もいくつか存在します。

契約終了の際の実務的な対応手段

 そのため、継続的契約を更新拒絶により終了させる場合、契約でまず合理的な長さの告知期間を設定しておく必要があります。また、個別ケースによっては、契約上の告知期間では十分でないと判断される可能性もありますので、販売代理店に対し前倒しで告知することや、それが不可能である場合は相応の補償金を支払うという対応が必要になる場合もありうると考えます。
 販売代理店との最初の契約であれば、メーカーがなるべくリスクを負わずに契約を終了させることができるように、契約期間は1年程度に短めとしておき、自動更新条項も設定しないことをおすすめします。

 以上とは別の観点から、契約規定の有無にかかわらず、実務では販売代理店の引継作業への協力などが必要となる事情がある場合、スムーズな引継作業を行なわせるために協力金名目で一定の金銭を引継作業終了時点において任意で支払うことはあります。

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