訴状が送られてきた場合どのように対応すればよいか

訴訟・争訟

 私は、小規模な商社で総務部に勤務しているのですが、先日、当社宛てに、裁判所から突然、損害賠償請求訴訟の訴状なるものが送られてきました。当社には法務部がなく、法律的な事項は総務部が所管することに一応なっておりますので、私の方でざっと訴状を読んでみましたところ、原告は当社の取引先であり、当社が販売した商品についてクレームをつけ、半年ほど前から当社支店と損害賠償に関する折衝をしていたようなのですが、総務部ではこれまで、この紛争についての認識はありませんでした。

 当社は過去に訴訟の当事者となったことはほとんどなく、私も訴訟管理を担当した経験などないものですから、どこから手を付ければよいかわからない状態なのですが、まずはどのように対処すればよいのでしょうか。

 訴訟の被告とされた者は、第1回口頭弁論期日の1週間程度前に指定される答弁書提出期限までに、訴状記載の事実の認否や原告主張に対する反論を記載した答弁書を裁判所に提出しなければなりません。企業担当者としては、答弁書作成の準備のため、第1回口頭弁論期日および答弁書提出期限を確認のうえ、早急に、社内で紛争の実態をよく知る部署に事実経緯の確認を依頼し、かつ、訴訟代理人を委任する弁護士を選定する必要があります。

解説

訴状送達時の企業担当者の対応

 訴訟の被告とされた者に対しては、訴状の副本が送達されます(民事訴訟法138条1項、民事訴訟規則58条1項)。企業(法人)が被告となる場合、訴状副本は、本店宛てに送達されることが多いと思われ、その場合はまず郵便物を管理する部署にてこれを受け取り、総務部門や法務部門など訴訟を所管する部署に回付することになるでしょう。もっとも、送達場所として支店や営業所が指定されることもあり、この場合、訴状副本が本店の訴訟所管部署に届くまでに時間がかかってしまうこともある点には注意が必要です。
 訴状副本を受領した訴訟所管部署の担当者において、早急に対応すべき事項としては、たとえば以下があげられます。

第1回口頭弁論期日および答弁書提出期限の確認

 一般的に、訴状副本の送達の際には、第1回口頭弁論期日の呼び出し(民事訴訟法139条)も同時に行われます。具体的には、訴状副本に付帯して、裁判所作成の「第1回口頭弁論期日呼出状および答弁書催告状」というような表題の書面が送付され、同書面には、第1回口頭弁論期日の開催日時、場所(裁判所所在地、法廷番号等)が記載されるとともに、答弁書の提出期限(第1回口頭弁論期日の1週間前とされるのが通常です)が記載されます。

 仮に被告が、第1回口頭弁論期日に出頭せず、かつ、請求棄却を求める内容の答弁書を提出しなかった場合には、原告の主張する事実がすべて真実であると認めたものとみなされることから(民事訴訟法159条3項本文)、裁判所は、ただちに弁論を終結し、原告の請求を全部認容する判決(いわゆる欠席判決)を出すことが可能になってしまいます。そのため、企業担当者としては、上記呼出状により第1回口頭弁論期日および答弁書提出期限(なお、仮にこの期限を徒過したとしても、第1回口頭弁論期日までに答弁書を提出できれば、上記の欠席判決という事態には至りませんが、この期限は裁判所が指定するものですので、できるだけ遵守すべきです)を確認し、万が一にも期日出頭・答弁書提出の失念がないようにすることが何より重要です。

関係他部署への情報展開

 訴えが提起されるからには、原告・被告間で従前から何らかの紛争が存在するのが通常であるところ、企業が被告となる場合、従前の紛争に直接関係していたのは、訴訟所管部署ではなく、他の部署(ないしは支店等)であることが多いでしょう。従前の紛争の実態を最もよく知るのはその関係他部署ですので、そこへの情報展開も当然必要となります。
 特に、後記2で述べるとおり、答弁書では訴状記載の事実の認否を行う必要があることから、事実経緯を確認してもらうためにも、関係他部署への情報展開はできるだけ早急に行わなければなりません

弁護士への委任の準備

 企業が訴えを提起されたときは、通常は、弁護士に訴訟追行を依頼することになると思われますので、その選定も行わなければなりません。顧問弁護士など従来から付き合いのある弁護士がいれば、まずはその弁護士が候補となるでしょうが、顧問弁護士などが複数いる場合には、訴訟経験が豊富であるとか、訴えの対象となっている紛争が特殊な分野におけるものであるときなどは、その分野に精通しているといった判断基準に照らして、訴訟代理人を委任する弁護士を選定することになります。

 委任する弁護士が決まれば、ただちにその弁護士に連絡をとり、第1回口頭弁論期日を伝えて、出頭の予定を確保してもらうべきです。この点、仮にその弁護士に先約があり、期日に出頭できないとしても、第1回口頭弁論期日の場合は、あらかじめ裁判所に答弁書を提出しておきさえすれば、その答弁書が期日において陳述されたものとみなされ(陳述擬制。民事訴訟法158条、訴訟進行に支障が生じることはありません。しかしながら、担当裁判官の個性を早めに把握しておくことがその後の訴訟戦略を立てるうえでは有益ですし、被告欠席の状況下で原告側が裁判官に一方的な発言をして印象操作を試みることを防ぐという観点からも、第1回口頭弁論期日には、代理人弁護士になるべく出頭してもらった方がよいといえます。

答弁書の作成

答弁書の記載事項等

 訴訟の被告は、答弁書を作成して、第1回口頭弁論期日前に裁判所に提出することになります。答弁書は代理人弁護士が作成するのが通常ですので、詳細な説明はここでは割愛しますが、答弁書の記載事項としては、以下の各事項があげられています。

  1. 被告およびその代理人の氏名(名称)および住所(民事訴訟規則2条1項1号)
  2. 請求の趣旨に対する答弁(民事訴訟規則80条1項前段)
  3. 訴状に記載された事実に対する認否(民事訴訟規則80条1項前段)
  4. 抗弁事実(民事訴訟規則80条1項前段)
  5. 重要な間接事実および証拠(民事訴訟規則80条1項前段)
  6. 被告またはその代理人の郵便番号および電話番号(ファクシミリの番号を含む)(民事訴訟規則80条3項・53条4項)
  7. 事件の表示(民事訴訟規則2条1項2号)
  8. 附属書類の表示(民事訴訟規則2条1項3号)
  9. 答弁書の作成年月日(民事訴訟規則2条1項4号)
  10. 答弁書を提出する裁判所の表示(民事訴訟規則2条1項5号)

 ここで、上記②の「請求の趣旨に対する答弁」とは、被告が裁判所に原告の請求をどうしてほしいかを述べるもの、すなわち、被告が裁判所に対して求める判決の内容の記載を意味し、原告の請求の棄却、および訴訟費用は原告の負担とすることを求める内容となるのが通常です。

 また、上記③の「訴状に記載された事実に対する認否」の方法としては、訴状記載の原告主張事実が実際に存在すると「認める」、存在しないとして「否認する」、存否不明の場合の「不知」などがあります。「認める」とした事実については、原告・被告間で争いがないということになりますので、裁判所は証拠がなくともその事実が存在することを前提としなければなりません(民事訴訟法179条。また、「否認する」場合は、その理由を記載しなければならないこととされています(民事訴訟規則79条3項)。なお、「不知」とした場合は、事実の存在を争うものと推定されます(民事訴訟法159条2項)。

 なお、答弁書には、書証(乙号証)の写しを添付し(民事訴訟規則80条2項前段)、かつ、代理人弁護士への訴訟委任状も添付します(民事訴訟規則23条1項参照)。また、訴状の場合は、原告は被告用の副本も裁判所に提出し、裁判所から被告に送達してもらうことになりますが、答弁書(およびその後に原告・被告が提出する準備書面)については、添付書類(訴訟委任状を除く)も含めて当事者間で直送することとされています(民事訴訟規則83条1項)。この直送は、ファクシミリ送信によって行うことも可能です。

答弁書作成時の企業担当者の留意点

 訴状の場合と同様、答弁書についても、基本的には代理人弁護士が作成することになるものの、訴えの対象となっている紛争に関する事実関係を把握しているのは、紛争の当事者である企業ですから、これを弁護士に十分に提供しなければ、充実した内容の答弁書を作成することは不可能です。したがって、企業担当者としては、自社に不利な事情等も含め、幅広にかつ積極的に弁護士への情報提供を行う必要があります

 なお、事実関係が複雑である、参考資料の数が膨大である等の事情により、訴状記載の事実の認否および原告主張に対する反論をすべて記載した答弁書を、証拠とともに期限内に提出することが、時間的に困難であるという場合があります。このような場合、実務上は、請求の趣旨に対する答弁を記載したうえで、認否・反論は「おって行う」とのみ記載した簡易な内容の答弁書を提出し、第1回口頭弁論期日はそれで済ますということが一般的に行われています(請求の趣旨に対する答弁の行数が通常三行になることから、俗に三行答弁書などと言われます)。この場合でも、第1回口頭弁論期日の1か月程度後に指定される次回期日においては、詳細な認否・反論を記載した答弁書と証拠を提出しなければならなくなるのが通常ですから(民事訴訟規則80条1項後段、2項後段参照)、前記1-2で述べた企業担当者における(関係他部署と協働しながらの)事実経緯の確認等は、可及的速やかに行う必要があることは言うまでもありません。

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